夕暮れの事故が妻の命を奪った。
あれから半年。
家に帰るたびに涙した夜を超え、
前を向こう。
俺と莉犬の宝物である
るぅとのためにも、
立ち直るんだ。
と思い始めた12月。
会社から書類の訂正を求められた。
俺は狼狽えて聞いた。
桃
担当者は静かに頷いた。
ボールペンを持つ指先が震える。
莉犬はプロポーズをあんなに泣いて喜んだのに。
るぅとの母親は、莉犬なのに。
俺の妻は、
莉犬なのに。
ボールペンのインクが真っ白な書類を黒に染めていく。
それを濡らすものが
涙であることに気づいた。
腕の中にいるるぅとが心配そうに俺の顔を覗き込む。
俺はただ、ただ
嗚咽を零すことしか出来なかった。
ねぇ、莉犬…
会いたいよ。
忘れることなんて
出来なかったんだ。
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