テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

悪夢

一覧ページ

「悪夢」のメインビジュアル

悪夢

1 - 悪夢

♥

207

2019年07月21日

シェアするシェアする
報告する

今岡勉

一週間前からなんですが

今岡勉

同じ夢を見てうなされています

三枝悦子

三枝悦子

悪夢ですか

今岡勉

それが…

三枝悦子

そうじゃない?

今岡勉

夢の中で死にそうになったり

今岡勉

殺されそうになったりするわけじゃないんですが

今岡勉

どうしても目が覚めた後の気味の悪さが払拭し切れないんです

今岡勉

この場合も悪夢と言いますか?

三枝悦子

言えます

三枝悦子

起床時に今岡さんの心に不穏な気持ちが残ってしまった場合

三枝悦子

それは間違いなく悪夢です

三枝悦子

その悪夢のことを詳しく教えて下さい

占い師・三枝悦子に促され、今岡は忌々しい悪夢の詳細を話してみせた。

今岡勉

私がいる場所が何処のどんな所なのかが全く分からない

今岡勉

ホールみたいな広い場所に立っているんですが

今岡勉

周りは闇に覆われていてほとんどなにも確認出来ない状態です

今岡勉

唯一、壁にステンドグラス並みの巨大なガラスがあるんですが

今岡勉

窓の外には赤い月と海らしい光景が広がっていました

今岡勉

そして、女の姿が

三枝悦子

女の人がいるんですか?

今岡勉

そうです

今岡勉

その女なんですが

今岡勉

手に鋭いナイフのような刃物を握り締めていました

今岡勉

女はじっとガラスの外の光景を眺めたまま身動きする気配がありません

今岡勉

その光景だけでも十分不気味なんですが

今岡勉

不意に女が持っていた刃物をガラスに振りかざしたんです

今岡勉

現実ならどうなると思います?

三枝悦子

常識的に考えればガラスは粉々に砕けてしまいますね

今岡勉

ですよね?

今岡勉

私の夢では恐ろしいことが起きたんです

三枝悦子

どうなったんです?

今岡勉

今岡勉

割れるはずのガラスにナイフが食い込んで

今岡勉

刺し口からどろどろと血のようなものが流れ出てきたんです

今岡勉

女がナイフを横に引くごとに血は益々流れてきます

今岡勉

まるで本物の肉を切り裂いてるような生々しい音が不気味で恐ろしく

今岡勉

夢の中でも唖然としていたような気がします

今岡勉

今岡勉

そこで女が自分に気付いてゆっくり振り返ろうとするところで

今岡勉

いつも夢から覚めるんです

三枝悦子

なるほど…

今岡勉

先生、私が見た夢はなにを表しているんでしょうか?

三枝悦子

三枝悦子

人はどうして夢を見ると思います?

今岡勉

さ、さぁ…

今岡勉

私はそういうことは全く専門外なので

三枝悦子

夢を見る理由には様々な説が唱えられています

三枝悦子

古い記憶の再現、心に閉ざした願望の達成、幼少時代のトラウマの克服

三枝悦子

そして、未来予知

三枝悦子

精神的苦痛を伴わない夢、つまり日常的な夢の場合

三枝悦子

最初の三点が理由として挙げられますが

三枝悦子

悪夢を見る場合は未来予知を表している可能性が高いと言われています

今岡勉

でも、現実に刃物をガラスに当てれば粉々に砕けてしまいますよ

三枝悦子

それについて少し申し上げにくいのですが

三枝悦子

近い将来、あなたの身近なところで血が流れるのかもしれません

今岡勉

なんですって?!

三枝悦子

それが窓ガラスから血が流れるという非現実的な現象を引き起こし

三枝悦子

現実世界の今岡さんに危険信号を発していると考えられます

今岡は開いた口が塞がらなくなった。

実際、今岡には身の危険を感じる出来事が数日前に起こっていたからだ。

愛人の佐伯恭子との密会を妻の治美が悟っているかもしれない。

普段の治美は冷静で落ち着いた雰囲気の理想的な女性なのだが、

夫婦喧嘩になるとヒステリックに叫びながら物を破壊することが多々あった。

その治美が今岡の浮気を疑い始めてから態度が明らかに豹変していた。

今岡は三枝悦子にそのことを話した。

三枝悦子

それこそ未来予知ですよ

三枝悦子

あなたは悪夢を見たことであなた自身の命を救ったと同時に

三枝悦子

奥さまの犯罪を食い止めることが出来たのです

三枝悦子

今夜、あなたの過ちを奥さまに謝罪し

三枝悦子

じっくり話し合うといいでしょう

三枝悦子

そうすれば悲しい血は流れず、また安泰の生活に戻れますでしょう

三枝悦子の説得もあり、今岡は治美との話し合いを決意した。

その日の夜。

治美は泣きながら今岡を叩いたり蹴ったりしててんてこ舞いだったが、

今岡が素直に不倫を目論んでいたことや愛人の存在を打ち明け、

最終的に謝罪したことで治美はいつもの平静さを取り戻し、今岡を許した。

今岡は横の治美が寝たのを確認し、ゆっくりと目を閉じた。

今岡勉

(これでよかったんだ)

今岡勉

夢を見た。

暗闇の部屋、窓ガラス、赤い月と広大な海。

…そしてナイフを持った女。

今岡勉

(…イヤだな)

スッキリしたはずなのにどうしてまたこんな夢を…と、今岡はうんざりした。

女がゆっくりナイフを持った手を上げると、勢いよく窓ガラスに突き刺した。

窓ガラスから血が流れる。

今岡勉

今岡勉

(え??)

今岡が腹に違和感を覚え触れた。

切り裂かれた腹から鮮血が流れている。

今岡勉

(どうして…?!)

腹に猛烈な熱を感じながら今岡は顔を上げた。

ゆっくりと女が振り返る。

今岡勉

今岡勉

恭子…?

女は紛れもなく愛人だった佐伯恭子の顔をしていた。

窓ガラスからは絶えずどろどろと血が流れ続けている。

夢の中にいるはずの今岡の腹からも…。

佐伯恭子

よくも裏切ってくれたわね

佐伯恭子

結婚の約束までしておきながら元の女房とよりを戻すなんて

佐伯恭子

最低

今岡は声を出そうにも思うように出せない。

次第に意識が薄れていくような感覚に囚われたが、

夢の中の佐伯恭子が容赦なく窓ガラスにナイフを何度も何度も突き刺した。

何処か遠くから女の悲鳴が聞こえたような気がしたが、

今岡の意識は次第に薄れ、やがて目の前の悪夢でさえ見えなくなった。

2019.07.21 作

この作品はいかがでしたか?

207

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚