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昼下がり、 結局我慢できなくなって 僕は家に帰ってきていた。
誰もいないはずだと思っていたら ガレージに母親の白い車が駐めてあって、 ゲンナリしながら玄関を開ける。
スニーカーを脱いでいると リビングから母親が出てきた。
母
ホソク
母
茶髪のショートヘアに だっさいフープピアス。 僕とはあまり似ていない顔。 しっかりネイルしてるのも 癪に障る。
嫌いだ。
僕の顔がアッパに似てる方でよかった。 こんな母親に似ていたとしたら きっと僕は整形していただろう。
そのぐらい、嫌いだ。
母親を無視して 早々に自分の部屋に向かおうとしたら なぜか引き止められた。
母
ホソク
母
この人。 正気か?
まさかこの女も大麻でも吸ってるわけじゃないだろうけど、 まだ僕の方が まともな思考してるんじゃないかとさえ思う。
ただでさえイライラしてんのに 余計にイラつかせんなよ…。
ホソク
スンヒョンもクソみたいな性格してるけど やっぱりそいつと再婚するような女も 同じぐらいクソなのかも。 もちろんその息子も。
まともなのはジョングギだけ。
僕も、まともとは言えないかもしれないけど こいつらに比べたら きっとまともだ。 なんもおかしくない。
僕はお前らとは違う。
ホソク
背中を向けたままそう言って そのまま階段を上って行った。
僕は、おかしくない。
やっぱり、悪いのは全部 こいつらだ。
あの日、あの時 あの光景を見て
普通でいられる方が おかしいだろ…?
5年前の、あの日。
この時の僕は スンヒョンが僕の部屋に忍び込んで来るのが怖くて 全然寝付けなかった日々が続いてた。
毛布にくるまって 息を殺してた。 耳だけは澄まして。
でも、一階から何か物音がして 気になった僕は 足音を立てないように 階段を降りていった。
扉の隙間から漏れるリビングの灯りが 暗い廊下に細く映っている。
誰か、起きているのかな。 オンマ、かな。
もし、オンマだったら あの事…相談しても、いいよね?
そう思って 扉をそっと開けて 隙間から覗いてみたんだ。
そしたら…。
ホソク(幼少期)
気づいたら僕は 自分の部屋に戻って ずっと泣いてた。
"裏切られた" そんな気持ちだった。
暗闇の中、微かに鳴る ギシギシというベッドの軋む音。
ホソク
僕の上に乗っかっている スンヒョンの腰の動きに合わせて 僕は小さく声を漏らす。
感じてるわけでもないし 気持ち良くもない。
むしろ逆だ。 物凄く気持ち悪い。
それでも僕の体は本能からか 濡れるところは濡れて こいつのモノを受け入れている。
でももう… これも慣れてきた。
嫌がるのも、泣くのも 無駄な体力を使うだけ。
感じてるようなフリを少しだけして さっさと欲を満たして満足してもらう方が 自分の心をこれ以上壊さなくて済む …気がする。
義父
ホソク
あまりの気持ち悪さに …えずきそうだ。
胸に吸い付くスンヒョンの黒い髪を 思いっきり引きちぎりたい衝動を必死に抑え くしゃりと撫でる。
僕のこの奉仕は ちゃんと、役に立ってるみたいだ。
何よりジョングギのためだ。 この前なんか スンヒョンはジョングギにゲーム機を買ってあげたらしいし。
でも…。
開封されてない、ゲーム機の入った箱や 漫画や絵本、ノートやクレヨン…だろうか。 それらが椅子に積み重なって置いてある。
ベッド横にしゃがむと、 布団からはみ出ていた土気色の小さな手を握った。 ぴくりと細い指が動く。
グク
ホソク
手と同じ顔色をしたジョングギが ゆっくりと瞼を開ける。 掠れた声。 鼻からはチューブが通されていて 細い腕には点滴。
ホソク
グク
ホソク
ジョングギの冷たい手を 温めるようにさする。 安心したように ジョングギは再び目を閉じた。
ジョングギの目は、まだ光が宿っている。 大丈夫。 この前、輸血だってした。 治る。良くなる。 そう、信じてる…けど。
ホソク
ジョングギの症状は 日に日に悪化の一途を辿っている。
僕達の骨髄は適合しなくて それで、やっと適合するドナーが見つかったのは2年前。 骨髄移植も、したのに。
ジョングギの手を握ったままの自分の手を 神様に祈るみたいに 自分の顔に寄せた。
泣いているのを隠すみたいに 顔を俯ける。
アッパもジョングギも失ってしまったら 僕はどうすればいいんだろ。
ホソク
僕の自分勝手な独り言は 静かな病室に、いやに響いた。
いっその事
僕が、ジョングギの代わりに 病気になれば、良かったのに。
そうしたら、 ジョングギも父親と母親と兄と一緒に暮らせて幸せだし 僕も、アッパの元へ行けるのに。
産まれたばっかりの時のジョングギ 本当に小さくて、軽くて ふにゃふにゃしてて 初めて抱っこした時のあの感動は、 今でも忘れない。
よく笑う子だった。
ヒョン、ヒョンって よちよち歩きながら 僕に抱きついてきたり。
本当に、可愛いんだ。
僕の弟は…。
グク
ホソク
いつの間にか目をうっすらと開けて ジョングギが僕を見ていた。
ゴシゴシと涙を拭って ジョングギに笑いかける。
本当は 頭のどこかでは、わかっているのだろう。
でも、受け入れたくない。
ジョングギが
ジョングギが…っ。
グク
ホソク
グク
ホソク
なんで、ジョングギが そんな事…。
僕はジョングギに余計な心配掛けたくないから ナムジュンと仲が悪いだとか 嫌いだとかそんな事 言わないようにしてたのに。
ホソク
グク
ホソク
グク
起き上がることも出来ないジョングギは ベッドに寝たまま、顔だけを僕に向けて 時折咳き込みながらも 小さな声で一生懸命、そう訴えた。
明確な怒りが 沸々と湧いてくるのを感じる。
あいつ…。
なんでジョングギに、そんな事 言わせるんだよ…。
あいつが、ナムジュンが 悪いのに。 まるで、僕が悪いみたいに…。 しかも、それをジョングギに言われるなんて。
ショックだった。
ホソク
怒りを隠して笑うのは 涙を隠すよりも簡単だった。
僕を裏切ったのも 嫌われるようなことをしたのも 嘘をついたのも 全てナムジュン自身なのに。
ナム
ホソク
相変わらず僕を見て微笑む 目の前のコイツは一体 僕をどうしたいのだろう。