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あてんしょん ・irxs様の名前等をお借りした二次創作(nmmn)となっています。 ・主に赤さんと青さんでの物語進行となります。 ・家庭内暴力、自殺等の描写があります。 ・その他、不快に思われるような描写がある可能性があります。 以上の要素が苦手・嫌いな方は、この時点でのブラウザバックをお願いします。 いたずらでの通報等はお控えください。誤字脱字等、何か至らぬ点がありましたら、コメントにてご報告ください。 その他、内容に触れるコメントをして頂く際は、直接ご本人様達のお名前を出さずメンバーカラー等での表記を厳守してください。 検索避け及びnmmnのルール違反にならないよう、ご協力をお願い致します。 こちらの作品はnmmnとなっておりますので、拡散・無断転載等は禁止します。もし発見した場合、コメントでの注意喚起を致します。それでも同じ方が何度もされているようでしたら、ブロック・通報致します。
夕焼け色に染る水面に
俺は身を沈めた。
優しく俺に声をかけるお父さん。
温かいお母さんの手作りご飯。
優しい両親、優しい家。
そして、
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大好きな君。
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そりゃそうだ。
あんなに温厚なお父さんも、
家事をするお母さんも、
2人が仲良く俺を見送るなんてことも、
全部、俺には有り得ないこと。
現実味のないフィクションだ。
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俺は毎朝、5時前には自然と目が覚める。
それくらいの時間になると、ちょうど下から罵声が聞こえてくるから。
それが怖くて怖くて、毎朝その声に叩き起されて。
いつしか俺の睡眠習慣は「それ」に適応していった。
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起きたら、ひたすらに何かをして気を紛らわす。
もう6年。
お父さんが鬱になってからずっとだ。
そうでもしないと、きっと今頃俺の精神もどうにかしていると思う。
父
母
父
だめ、だめ。
聞いちゃだめ。
耳を傾けちゃだめ。
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そう言いながら、俺は英単語帳を開いた。
午前6時過ぎ。
上でほとんどの用意を済ませてから、2人が落ち着いた頃を見計らって、俺はリビングのある1階に降りる。
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お母さんはソファに堂々と寝転がってぐーすかと寝ている。
お父さんの姿はリビングにない。
でもまぁ、これもいつもの事。
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そう言いながら、俺は床に散らばっている陶器の食器の破片を拾い集める。
夫婦喧嘩になる時は大抵、物を投げ合うまでにヒートアップして、2、3個の食器類が駄目になる。
いつまで経っても俺は鈍臭いもので、もうずっと前からこうなのに、未だに破片を踏んでしまうことがある。
そのおかげで、俺の足裏は傷だらけだ。
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古紙入れから新聞紙を適当に抜き取り、集めた破片を包む。
それは家の近くのコンビニのゴミ箱に捨てに行く。
本当はだめらしいけど、お母さんはゴミ出しも面倒なようでやりたがらない。
かと言って、俺はゴミ置き場の鍵を持っていないし、どの鍵かも知らないので、仕方がない。
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そう声を上げながらこちらに手を振って走ってくる彼はいふ。あだ名はまろ。
まろは、俺の親友で、相棒で、憧れの人で、唯一の俺の理解者。
あと、これは俺だけだと思うけど…
俺の、好きな人。
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彼と一緒にいる時間だけが、俺の人生を助けてくれている。
彼に何度救われたか分からない。
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そう言って俺は家の塀に手を付き、怪我をした方の足の靴を脱ぐ。
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そう言いながら自分の通学カバンを漁るまろ。
まろのカバンから消毒液やら包帯やらがひょいひょい出てくるのを不思議に思って以前聞いてみると、「りうらはしょっちゅう怪我してくるから応急処置セットは常備してる」と言われた。
大切にされているようで、なんだか嬉しい。
それと同時に、人にそこまで気を使えるまろは凄いな、と人間としても尊敬する。
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ギュッ
まろは突然俺の手を握る。
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そう言うとまろはすっと俺から手を離す。
自分から離せと言ったのに、いざ温もりがなくなるとどこか寂しい気もする。
でもまぁ、まろに赤面顔なんて見られたら一生の恥になるから、それよりかはマシだ。
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まろとは反対の向きに顔を背け、ひっそりと隠した。
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そう言ってまろは俺の方に手を出してくれる。
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少し怖い顔をして見せると、まろはしゅんとして素直に謝る。
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まろは俺の隣に立ち頭を撫でてくる。
それもまた身長差をアピールしているようでいやらしい。
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口では嫌いと言っているけど、でもこんなにも自然体でいられるのはまろの前でだけ。
まろには、人のなかなか見せない本性を引き出す力でもあるのだろうか。
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自分だけじゃなくて周りにも気を使えて、 でも決してそれに対する見返りを求めるとかではなくて、 本人でも気づいていなかったようなその人の奥深い部分を引き出せて、
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自分のことで精一杯で、 親孝行なんて1度もできたことなくて、 まろに助けられてばっかりで。
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まろみたいに、余裕があって人を助けられる魅力のある人間になりたいな。
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叶うはずのない、無色な夢か。
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学校終わり。
まろとはいつもの通学路で別れる。
そこからは、ただ1人の帰り道。
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やっぱりちょっと、寂しいな。
まろがいないと、急に悲観的になっちゃったり。
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まろに頭上がらないほど…助けられてるんだな。
家には、相変わらず何時になっても電気はついていない。
でも、いつもはこの時間は窓から西日が入ってきて明るいのだが、今日は夜のように薄暗かった。
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不思議に思い部屋を見回すと、全てのカーテンが閉まっている。
それと同時に、俯き座っているお父さんの姿も視界に入った。
父
お父さんは俺が帰ってきたのに気づいたようで、俺の方に視線を向ける。
その目は血走っていて、俺を睨みつけていた。
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あ、ヤバい。
今日は、
だめな日だ。
自室に籠り、無駄に息をし続ける。
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父
父
父
父
父
父
父
父
父
父
父
父
そんな罵詈雑言と共に、体のあちこちを殴られ蹴られ続けた。
叩かれた場所が、今もジンジンと痛む。
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『お前がいるから!俺たちは失敗したんだよ!』
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『お前が生きてるからだよ!』
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『お前のせいで、』
『俺らは不幸にされたんだよ!!』
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もう、
自分が生きる意味なんて、
分からなくなった。
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全部悪いんだ。
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お父さんもお母さんも、幸せになれたはずなのに。
『俺らは不幸にされたんだよ!!』
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そう、そうだねお父さん。
きっと俺が、2人の幸せを壊した。
たくさんの人の幸せを壊した。
俺が死ねば、邪魔者がいなくなって、たくさんの人がきっと喜ぶ。
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『何の役にも立ってないくせに!』
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うん、そうだねお父さん。
役に立つどころか、邪魔して、迷惑かけて、そればっかりだったよね。
大丈夫、安心して。
最期くらいは、潔く死ぬから。
もう遅いかもしれないけど、2人の、みんなの役に立つから。
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今までずっとずっと、
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徒歩で何時間かかけて来たこの場所は、とても綺麗だった。
夕日が水面に反射していて美しい。
どうやら今日は夕焼けらしい。
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なんて
見もしない明日の天気を思い浮かべた。
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みんなのために。
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ボチャン
『りうら!』
『りーうーらー!』
『りうら、起きとるこれ?』
『はよー、りうらー!』
『りうらギュッ』
『りうら、』
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『りうらに出逢えてよかった』
まろ
お願いだから
俺の名前を呼ばないで
俺の存在を認めないで
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死にたくなくなっちゃうから
『りうら!』
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あぁ、ごめんね、まろ。
こんなに大切にしてくれたのに、
もう、取り消せない。
でも
願うことなら
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生きてたいよ。
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うっすら目を開けると、目の前には眩しいくらいの白色が広がっていた。
だんだんと意識がはっきりしてきてわかってくる。
どこからともなく聞こえる機械音。
たくさんの線のある機材。
矢印が書かれているボタンのあるリモコン。
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そして、
聞き慣れた、大好きな声。
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ガバッ
俺が言い終わる前に、まろに勢いよく抱きつかれる。
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初めて、まろの震えた声を聞く。
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まろはずっと、鼻をすすったり俺の肩に顔を押し当てて擦ったりしている。
その度に俺の肩が濡れる感覚がして、まろが泣いているんだとなんとなくわかった。
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自ら俺の肩から顔を離したまろの顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。
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わけも分からず、俺の目からも涙が零れ落ちる。
ギュッ
まろは静かに俺の手を握る。
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まろみたいにはなれないけど、それでも、
こんな近くに、俺を認めてくれる人がいた。
大好きな人が、俺を認めてくれた。
俺は良くても、大切な人がこんなにも悲しむなら、
死ねないや。
大好きな人だから。
大好きな人の悲しむところは、見たくない。
悲しませたくなんてないから。
あぁ、
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生きてよかった。
まろと出逢えて、
本当によかった。