テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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【完結】覚醒〜Awakening〜

第3話 - 悪い子

104

2022年02月23日

#フィギュアスケート

#スケート

#一次創作

#ウインタースポーツ

#スポーツ

その次の日

えま

…。

「自分のスケートを暗いものだけにしてしまったらだめだよ。」

えま

…私、どうしたらいいんだろう。

えま

（スケートは好き、スケートは自分を1番特別にしてくれる魔法みたいな存在）

えま

（なのに…今の私）

えま

「あんなヤツ妹と一緒に死んじゃえば良いのに。」

えま

ッチ…

えま

（私、あいつらへと復讐に、スケートを使おうとしてる…。）

えま

（私の馬鹿！なんて醜いんだろう！）

えま

（本当は楽しい気持ちで、綺麗な私で滑りたいのに…。）

えま

…やっぱり、あのときのことを全部忘れた方がいいのかな。

えま

ん？

えま

あれ？

えま

そういえば芽依ちゃん、来てないな…。

えま

約束の時間からもう5分経ってるけど…何かあったのかな？

その頃、芽依は…

芽依

ま、ま、まま…待って！

芽依

私…えまちゃんとの約束が！

雛子

うるさい。ほら、こっち！

真弓

陰キャは黙れ、とっとと行けよ！

芽依

ひゃっ！！

太一

秋風サン、久しぶり〜。

芽依

！…

芽依

（太一！最近何も言ってこないと思ってたのに…！）

太一

秋風サンさぁ、急に真面目になったよね〜。

太一

何で？調子乗ってんの？

太一

友達の俺らのことすっぽかして、ずーっとあのよく分からん転校生と一緒にいてさ？

真弓

あの転校生…鐵宮えま、だっけ？いつも女子にキャーキャー言われるの。

雛子

女子に！？やっば男じゃん！キッモ！実は男なんじゃね？

芽依

や、やや…やめて！

芽依

え、ええ、えまちゃんは…同じ部活の、と、とと…ともだち、だよ！

太一

へぇ、俺らの友情はどうしたの秋風サン？

太一

俺たちはさ、

太一

有名でもない変人底辺レベルのスケート選手にわざわざ話しかけて、

太一

いじってあげたり、からかったりしてあげたんだぜ？

太一

それがちょっと大会で賞取ったからって別の人とつるんで、

太一

俺たちに対する恩返しとかねぇのかよ、なぁ。

芽依

！…

芽依

（そんなの、私から頼んでない！余計なお世話だよ！）

芽依

や、やや…やめて！しら、しゅ、しら…しらないから！そそ、そんなの！

太一

！…

太一

はーいコイツ地獄行き。

太一

真弓と雛子、ハサミ持ってる？

太一

スケート前に散髪してあげて。

芽依

！？

雛子

はぁ〜い。

真弓

りょかーい。

ガシッ！（真弓と雛子が芽依を拘束する）

芽依

や、やや、やだ…やめて！

芽依

かかか、か、かみ、ひひ、ひっ、引っ張らないで！

芽依

いやぁぁあぁあ！！

太一

ハハハッ！バーカ！

太一

調子に乗った罰だ！お前なんか死んじまえ！

ザッ…

えま

芽依ちゃん？

芽依

！

芽依

えまちゃん！

太一

！

真弓

！

雛子

！

えま

何してるのそんなところで。

えま

早く屋上行こ。

太一

…。

太一

チッ、萎えた。

太一

お前ら、帰るぞ。

真弓

うーい。

雛子

秋風さん、またねー。

太一

あんま調子乗んなよ。秋風フィーバーさん。

スッ（太一が芽依の頭を撫でようとする）

芽依

！…

えま

…。

ガシッ！

パンッ！

えま

とか言って逃すと思ったか？下郎め。

バタッ！（太一が、えまに思い切りビンタされ尻餅をつく。）

太一

はっ…。

真弓

た、太一…！

芽依

えっ、

芽依

え、ええっ、えま…ちゃん？

雛子

お、お前！急に何暴力を…

えま

あ？そんなの芽依ちゃんをいじめてたからに決まってんでしょ。

えま

何？被害者ヅラでもするつもり？

えま

言っとくけど、もう無駄だから。

えま

芽依ちゃんをいじめた事実、こっちはさっき見て、完全に理解してるの。

えま

さらに言えば、貴方達がやってる悪行もね。

えま

これ、なーんだ？

あかりが捨てたてのタバコの吸殻を見せつける。

真弓

！

雛子

！

雛子

そ、それは…私達のタバコ！

えま

5組のお前らは知らないだろうから教えてあげる。

えま

私のいる3組はね、ホームルームの時間にこの辺のゴミ拾いをしてるんだ。

えま

貴方達が吸ったんだろうなーってことはうちのクラスで囁かれてたから、ちょっと気になってたんだけど

えま

まさか本当に吸ってたとはね〜。

えま

ここの近くで拾ってから、すぐに通報したよ。

えま

友達は今頃職員室でお前らのことをドラマチックに話してるだろうな〜。

えま

私が焦って、ショッピングチャンネルの外国人風に言いふらしたから…ふふふ。

真弓

…な、

真弓

何コイツ…

雛子

やば…ほんと、きも…マジ笑えないって。

えま

あ？

えま

気持ち悪りぃのはお前らだろ。

えま

『死んじまえ』なんて軽々しく言える男にくっついて、気持ち悪いにも程があるよ。

えま

私のことは後で好きなだけ悪口言えばいい。でもこれだけは聞け、

えま

遊びだろうがなんだろうが、死んじまえなんて言うのはやめて！

えま

お前らみたいなカビの生えた思考持ってる奴は私が死後も来世も恨み続けてやるッ！

えま

分かったかこの野郎ッ！！

雛子

ひぃい！！

真弓

逃げよ！コイツやばい！ガチで男じゃん！

太一

！？

太一

お、おい！俺を置いていくな！

ダダダダダッ！（3人がその場から逃げる）

えま

はぁっ…はぁっ！

えま

フーッ！…フーッ！

芽依

え、ええ…

えま

許さない…絶対に許さない、消してやる、見返してやる…！

芽依

ええ、え、えま…えまちゃ、

えま

死んじまえなんて言う奴は…この私が…必ず…！！

芽依

えまちゃん！

えま

ハッ！

芽依

ええ、え、えまちゃ…、だだだだだ、だいじょ、ぶ？

えま

あ、うん。

えま

ごめん、なんか変なスイッチ入ってた。

えま

私、怖かったよね。ごめんね、本当に…ビンタもしちゃったし、元はと言えば私がいるせいで…芽依ちゃんは。

芽依

い、ぃいぃぃや、いや…違う…よ！

芽依

なか、な、なな仲を断ち切れなかった…わた、私が悪い…。

芽依

しょ、

芽依

それに。

えま

？

芽依

え、え、えまちゃ…泣いて、る。

えま

えっ。

ぽろっ（あかりの目から涙が落ちる）

えま

あ…あれ？

えま

私、なんで…？

えま

なんで私泣いてるの…？

芽依

え、えま…ちゃん。

えま

…。

えま

う〜……。

えま

あ〜もう無理だ。

芽依

？

えま

芽依ちゃん、

えま

私、今日学校サボるよ。

芽依

えっ！

えま

お腹が痛いって伝えといて、

えま

明日の練習には参加するよ。

えま

私、ちょっと1人にならなきゃだめみたいだから。

えま

それじゃあね。

芽依

あっ…

芽依

ま、まま…待って！

芽依

わわ、わっ私も学校サボる！

えま

えっ！

芽依

えみゃ、え、えまちゃんと…学校サボる！

芽依

い、一緒、の方が…ぜっ、ぜぜ絶対いいよ！れれ、レッツサボろう！えまちゃん！

えま

！…

えま

…じゃ、そうしよっか。

えま

スマバ行こ。

芽依

うん！

えま

おまたせー。

えま

飲み物持ってきたよ。

えま

太っちゃうから、ウーロン茶だけど。

芽依

！

芽依

あ、ああ、ありがと…。

えま

いえいえ。

芽依

いただきます…。

芽依

えま

…。

えま

…ふっ、

えま

なんか、サボるのってこんな感じなんだね。

芽依

！

芽依

そ、そそ、そうだね…なんか、ドキドキしちゃう。

芽依

わ、わたしたち、悪い子に…なっちゃった…。

えま

いやいやいや。

えま

悪い子は私だけだよ。芽依ちゃん。

えま

芽依ちゃんは一時的なやつ。

芽依

！

芽依

あっ、いや…ちがう、え、えまちゃんも、、わるいこじゃ…な

えま

ううん。私、めっちゃ悪い子だよ。

芽依

い、いやいやいやいや…

えま

芽依ちゃん。

えま

私も、芽依ちゃんも、明日には練習しなきゃいけない。

えま

大会も近づいてるし、こんな時間はなかなか手に入らない。

えま

だから、話させてほしいんだ。

えま

私、

えま

芽依ちゃんに「私が悪い子」だってこと、教えときたいの。

芽依

？…

えま

…私ね、

えま

スケートで、ある人達に復讐にしようと思ってるんだ。

そこからえまちゃんが話したのは、前の学校で体験した悲しい話だった。

えまちゃんは前までいたスケート部の顧問の先生と馬が合わなかった。

先生はあるひとりの女の子ばかりを熱心に指導し、えまちゃんのことはほとんど放置した。

えま

綺麗にトリプルアクセルが跳べた時も、あの先生は喜んでくれなかった。

えま

本当に、わかりやすいえこひいきだったよ。

芽依

ま、まわり…は、なにか、言わなかった…の？

えま

うん。

えま

先生と一緒にずっと悪口言ってた。

えま

先生がえこひいきしてた子は、みんなのリーダー的な感じの子だったから。

えま

「リーダーだから、大切に扱われて当たり前」って思ってたんだろうね。自分たちが悪いとは思ってないと思うよ。

えまちゃんはその後、またゆっくりと話し始めた。

転校前の最後の大会。（私も望んだ全日本の予選大会。）

えまちゃんに悲しいことが起こった。

入院していた妹さんが亡くなったのだ。

そして、その妹さんがくれたお守りを誰かが隠した。

えまちゃんは天国にいる妹さんのために何としてでも良い成績を残したかった。

そして、お守りを隠した人が許せなかった。

しかし、先生は

「大会が終わったらね」の一点張りでお守りを隠した人を調べてくれなかった。

えまちゃんは怒り狂って、遅くまでひとりで練習し、大会で自己ベストを更新、部で初の優勝を飾った。

後輩達やえこひいきされていた子はみな転倒を重ね、散々な結果に終わったらしい。

すると先生は突然、えまちゃんを部から追い出した。

『後輩達に寄り添えないなら出ていきなさい』

そう言われてカバンを投げつけられたらしい。

えまちゃんは意味が分からず、何度も話しかけたが。

隣にいた、えこひいきをされていた子の発言でブチっと堪忍袋の尾が切れた。

「あんなヤツ妹と一緒に死んじゃえば良いのに、」

えまちゃんはこの一言で転校を決意した。

そして誓った。

こいつらに復讐してやると。

えま

最近、スケートをすればするほどあの人達への恨みが強くて。

えま

滑るたびにイライラして、自己嫌悪や、恨みでいっぱいになる。

えま

私…本当に悪い子だ。

えま

スケートを楽しむものじゃなくて、復讐の道具にしようとしてる。

芽依

えまちゃん…

芽依

（そんなことがあれば、そうなって当然だよ）

芽依

そ、そそ、それは…ぜんぜん…わ、わるいことじゃ、ないよ。

えま

ううん、悪いことだよ。

えま

私はみんなみたいに、芽依ちゃんみたいに楽しく滑りたい。

えま

綺麗な気持ちで、綺麗な演技がしたいの。

えま

だから今の私は、本当に最悪。

えま

自分で自分の演技が好きになれないの。

芽依

！…。

えま

話はコレで終わり

えま

私は、私利私欲のためでしか滑れないの…ガッカリしたよね。

芽依

（えまちゃん…）

芽依

（スケートをしながらずっと一人で苦しんでたんだ。）

芽依

（今のえまちゃんは、暗闇の中に立ってるみたい。）

芽依

（自己嫌悪や復讐で自分の道を照らそうとしているんだ。）

芽依

（…でも）

射手田トオル

僕は、今回金メダルを獲得した彼にとても感動しました。

射手田トオル

僕は、彼が毎日血を吐く思いで練習していたのをよく知っています。

射手田トオル

彼は誰にも負けないように、一生懸命、練習していたんです。

射手田トオル

これは、僕の個人的な考えですが

射手田トオル

一生懸命頑張ることは、とっても難しいことだと思います。

射手田トオル

怖くて、

射手田トオル

辛くて、

射手田トオル

何回も投げ出しそうになって、

射手田トオル

結果がつかなくても、前へ前へと進み続ける、とっても怖くて大変なことですよね。

射手田トオル

ですから、

射手田トオル

何かに一生懸命に取り組む人は

射手田トオル

大きな覚悟と、

射手田トオル

美しい決意を持っていると僕は考えます。

射手田トオル

私利私欲だけでは、“一生懸命頑張る”なんてできません。

芽依

！…

うつむくえまちゃんを見ていると、私の頭の中に射手田さんの言葉が蘇ってきた。

「一生懸命は、大きな覚悟と美しい決意があってできること。」

「私利私欲での一生懸命は長く続かない。」

これは、世界選手権で射手田さんが銀メダルに輝いた時、口にされた言葉だった。

当時、

射手田さんを抑えて金メダルを獲得した選手には悪い噂が出回っていたのだ。

「アイツは審査員を買収している」

「曲調が射手田の曲と似ている、きっと彼のアイデアをパクったんだ。」

「あの選手の優勝はズルだ。」

「私利私欲のために射手田を引き摺り下ろしたのに違いない。」

テレビや週刊誌は、射手田さんを悲劇のヒーローのように報道した。

そして、

それにより多くの人が金メダルの選手を中傷した。

しかし、

射手田さんはそのメディアの流れに逆らうようにして渦中の選手の努力を讃えるコメントを残した。

当時の射手田さんにとって、世界選手権は自身の2連覇がかかった特別な戦いだった。

しかし彼は、笑顔で自身の結果を受け止め、金メダルの選手を強く守った。

芽依

（…私利私欲での一生懸命は、長く続かない。）

芽依

（今のえまちゃんは、私利私欲でスケートをしているといえるのかな？）

心の中で小さな自分がそう疑問を投げつける。

すると、すぐに心の中の自分がそれを否定した。

芽依

（ううん、そんなわけがない。）

芽依

（私利私欲のためなら、対戦相手の私にトリプルアクセルを教えたりなんかしない）

芽依

（私のステップを褒めてくれたりもしない…。）

芽依

（それに…）

♫♪〜

頭の中でえまちゃんのアトム・ハーツ・クラブ曲が流れる。

バイオリンのメロディに合わせて舞う彼女はとても綺麗だった。

芽依

…。

芽依

（えまちゃんのフリーは、確かに怖かったけど…スケートが好きなんだって気持ちがあった。）

芽依

（芽依ちゃんは、私利私欲で滑ってなんかない。）

芽依

（きっと、復讐以外の感情が見えてないだけなんだ！）

今のえまちゃんは、暗闇の中を1人、復讐心を松明にして進んでいるかの見える。

何もない永遠に続くスケートの道を前の学校への復讐心を頼りにして進もうとしているのだ。

芽依

（えまちゃんは、きっと見えてないんだ。）

芽依

（心を燃やす別の松明が自分の中に沢山あるってことに。）

芽依

（あの射手田さんの言葉を…無駄にしてはいけない！）

芽依

わ、わわ…

芽依

私は…

ガタッ！（芽依が立ち上がる）

芽依

え、ええ…えまちゃんのこと、かっこいいと思う！

えま

えっ！？

えま

ちょ…芽依ちゃん？急に立ちあがってどうしたn

芽依

きききき、聞いて！

えま

！

芽依

あ、

芽依

あのね、

芽依

い、今のえまちゃん…魔王みたいだよ！めっちゃかっこいいよ！

えま

ま、魔王？

芽依

うん！お姫様って思ってたけど…ま、魔王だよ！えまちゃん！

えま

（お姫様から魔王、この評価は喜ぶべきなのかな…？）

芽依

あ、あのね。

芽依

射手田さんが言ってた。

芽依

「私利私欲で一生懸命頑張るなんてできない」って。

芽依

えまちゃんは…醜いスケーターなんかじゃないよ！

えま

！

芽依

わ

芽依

私…見てたもん！

芽依

え、え、えまちゃんが…誰よりも頑張ってるのも。

芽依

…えまちゃんがスケートが大好きな女の子ってことも！ちゃんと見てた！

芽依

わた、私の知ってるえまちゃんは…

芽依

きゅ、きゅきゅ、休憩中も、ずっとジャンプの練習をしてたし…

芽依

わわ、私に何度もトリプルアクセルのアドバイスをしてくれた。

芽依

えまちゃんには、きっと…

芽依

ふ、復讐の気持ちと同じくらい、

芽依

スケートが大好きな気持ちもあるんだと、思うよ。

芽依

じゃなきゃ、

芽依

あんなに綺麗な、感動させられるスケート、できないよ！

えま

！

えま

芽依ちゃん…。

芽依

わ、わわ…私は…一生懸命な、えまちゃんのスケート応援したい。

芽依

えまちゃんは…醜いスケーターなんかじゃなくて、

芽依

わ、わ…私を助けてくれた優しくて、強い友達だから！

芽依

だ、

芽依

だ、だっ、だかりゃ…！

芽依

じ

芽依

自分を…せ、責めないで。

芽依

絶対に、

芽依

醜くなんか、ないよ！

えま

！…。

芽依

…と。

芽依

おぉお、あお、思いまままます…。

えま

…。

芽依

あ、あの！

芽依

それと！

えま

芽依ちゃん。

芽依

？…

えま

一旦座ろっか。他の人の視線がやばい。

芽依

！？

芽依

（え、やだ！私いつの間に立ち上がって…⁉︎）

芽依

ごごっ、ごめんなさい！

ガタッ！（芽依が慌てて座る）

芽依

（うー！気がついたら立ち上がって話しちゃってた…恥ずかしい！）

えま

ふっ、

えま

あははははははっ！

芽依

ふぇっ？

えま

あはははっ！

えま

あはっ

えま

あははははははっ！

えま

はー、お腹痛いっ。

えま

今更だけどさ、

えま

芽依ちゃんって面白いね。

芽依

えっ！

えま

なんか悩んでたこと吹っ飛んだわ。

えま

すっごいスッキリした、ふふ。

芽依

ほ…ほほ、ほんとに？

えま

うん。

えま

『醜くなんかないよ』ってセリフにギュンと来た。

えま

私…このままでいいんだね。

芽依

！

えま

芽依ちゃん、ありがとう。

えま

「醜くなんかないよ」のセリフにGOE（出来栄え点）満点あげる。

芽依

えっ…やった！

芽依

そこ緊張してたから…嬉しい。

えま

ふふ、

えま

でも魔王のところはちょっとわかんなかったな基礎点下げとくね。

芽依

えぇええ！？

芽依

ま、ま…待って！そこは自信あるから説明させて！

えま

自信あるんだ？

芽依

い、いい…以上のことを踏まえて…えまちゃんはやっぱり魔王です。

それから数十分後

私とえまちゃんはいつもより早い時間に走るの電車に乗った。

えま

いやいやいや、異議大ありです。

えま

可愛くないし、その異名なんかヤダ。

芽依

えっえええ…

芽依

ぴったり、なのに…

芽依

！

芽依

じゃ、じゃあ…

芽依

ま…魔王ぴっぴとかは…かわいくない？

えま

魔王ぴっぴ…。

　お茶を飲んで、お話しして… お互いにスケートへの思いを話して帰るお昼過ぎ。

えまちゃんの表情はいつもより明るくて、彼女が笑うたび、私も自然と笑みが溢れた。

そして、同時に不思議な気持ちになった。

私とえまちゃんは出会ってからずっと一緒にいるのに、

初めて今『私達は親友だ』と深く感じた。

彼女のこれからのスケートを私は出来る限り見ていたい。

そして、私のこれからを出来る限り彼女に見てほしい。

芽依

ね、ねぇ…えまちゃん。

えま

ん？

芽依

わ…わ、私、えまちゃんと滑るの…とっても、たのしみ。

えま

！…

えま

うん、私も。

えま

今すっごいわくわくしてるよ。

芽依

お、おなじ…だね！

えま

ね。

芽依

ふふふ。

えま

ふふっ。

それからえまちゃんは、

ステップに違う表現を入れるようになった。

孤独な戦士というイメージを自分に合うようにリメイクし

「新しく覚醒する自分」をイメージして滑るようになった。

持ち味のメリハリを活かして一生懸命練習している。

汗をかきながら必死に取り組むえまちゃんは、とても楽しそうだ。

対して私はトリプルアクセルが安定しなかったので、メインをループに変更。

安定した演技と体力づくりに励んだ。

えまちゃんみたいに綺麗なジャンプは跳べないけど、何回もやるうちに姿勢が安定してきたと思う。

全日本選手権まで、あと1週間。

私達は最終調整に入っていった。

【完結】覚醒〜Awakening〜

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6件

連日更新ありがとうございます😭🙇‍♀️ 太一のシーンでは、ﾒｲﾁｬｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞﾝ…と心中ずっと叫んでいたんですが、魔王ぴっぴが来てくれて、凄いスッキリしました…！芽依ちゃんのネーミングセンス、センス抜群ですね……😃

プロフィール

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