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真っ白な封筒に、青い留玉。
中身は結婚式への招待状。
一番下には、直筆で2人の 友人の名前が書いてあった。
『After the Rain まふまふ そらる 』
゚・*:.。❁
嬉しそうに顔を綻ばせた まふまふは、何時もと変わらず ゆるゆるの服を着ている。
格式ばった此奴にしては、式を 普段着でやるなんて…と聞いた 時は驚いたものだ。
俺にじゃなくて、そらるさんに 向けたであろう言葉。
いや、…ちゃんと受け答えに なってねーし。
それはそらるさんにかける 筈の言葉だ。
ばーか。
コツンと頭を叩くと、 「あぃっ!?」と抜けた声を出す。
今更ながらに実感してしまう。
まふまふの手には指輪が入っている であろう小箱が握られていた。
゚・*:.。❁
式は恙無く済んだ。
今は立食パーティーを 皆楽しんでいる。
俺はといえば、ひょこひょこと あちこちに勝手に行く 相棒の介抱だ。
も~う…。
まーしぃ、センラ助けて早く!!
何処行ったんだよお前らぁ!
そろそろ我慢の限界で、此奴は 良いやと投げ飛ばし、挨拶に 向かった。
少し微笑んだその憂いさに、 思わずドキッとする。
出会った時より表情が 豊かになった。
まふまふが豊かなのが、 移ったのだろうか。
でもそういうまふまふに、 豊かさを与えたのはそらるさんだ。
与えて与えられて。
理想の恋人像だ。
くぃ、と首を傾げる仕草に、横に 座るまふまふが頭を抱える。
あーあかわいそまふまふ。
ねぇ?と同意を求められても 俺には何も出来ない。
ちょびっと意地悪がしたくなって まふまふに見せつけるように そらるさんの手の甲に接吻を 落とした。
さらばだまふまふ。
゚・*:.。❁
そらるインフォ基ちかさん。
そらるさんとその旦那である まふまふとは交流があるの だろうが、 俺ら他歌い手とは全く 関わりを持たない彼。
会ったことがあるのも、 そらるさんの家に遊びに 行って、偶出会したぐらい。
そりゃ顔も覚えていなくて当然だ。
今暇してたんですよね、と俺が 笑うと、インフォさんも 目を細めた。
大変でしたよw
思わず苦笑を漏らした。
俺も最近、そらるさんと関わりが 結構頻繁にあった。
そしてその共に過ごした時間分、 何故そらるさんを皆が愛すのか 分かった気がした。
そう俺が言うと、インフォさんも 同意してくれた。
゚・*:.。❁
結婚式場代わりの軽井沢の別荘。
何故軽井沢かというと、 そらるさんが 「別荘と言ったら軽井沢じゃない?」 と軽く発言したからなったそうで。
それもそらるさんらしい。
皆が慌てて呼ぶと、まふまふが セルフタイマーを調節して あたふたとこっちに駆けてきた。
どうやら間に合わなそうだ。
と、そらるさんがまふまふに 手を伸ばし―…ガクッと 崩れ落ちた。
そう言って目を閉じたそらるさんは 苦しそうで。
すると俺の隣に居た坂田が、2人に 近寄った。
そらるさんの脈をとり、まふまふの 背を落ち着かせるように摩る。
そらるさんは僕に任せて、 と何時もよりも数倍 頼もしい瞳で坂田は言った。
゚・*:.。❁
そらるさんをベッドに横たわせ、 起きるまで着いているという まふまふについた俺に、 まふまふが呟いた。
そらるさんの手を握り締めながら 言っているから、俺に 言っているのか、 そらるさんに言っているのか、 よく分からない。
此奴…そらるさんもだけど、 話が何時も急なんだよな。
それでも不安なのか、 身を乗り出してそらるさんの 髪を撫でるまふまふ。
大切なのが身体中から 伝わってくる。
苦笑するように眉を下げた此奴。
無性に腹立たしくて、思いっきり 背中を引っぱたいてやった。
途端に小さく声を漏らして、 それすらもうるさいと俺は 口を塞いでやる。
そらるさんが寝てるからって 声を最小限にしたのは加点。
涙脆くて寂しがり屋で かまってちゃん。
少しの期間一緒に居た俺がこれ程 まで知っているのであれば、 まふまふはもっと多くの事を 知っているはずだ。
という事は、こう結婚して からも尚、 そらるさんを狙う輩が 居ることだって。
luzはまふまふより少しだけ、 後にそらるさんと出会った。
でもluzのそらるさんへの甘やかしは 時にまふまふを超える時がある。
その時まふまふは見苦しい程に 嫉妬心を剥き出しにするのだ。
まふまふが頬に手を伸ばすと、 病的なまでに白い手が、 そこに重なった。
それだけ呟くと、また目をつぶる。
まふまふの手に、己の手を 添えたままだ。
そのままスリスリとまふまふの 手に顔を擦り付ける。
そうボソボソと呟きながら。
その姿は宛ら幼子のように見えて。
語彙力喪失している 白色バーコード野郎と、 同じような言葉の羅列しか 出てこなかった。
゚・*:.。❁
翌日。
まふまふからそらるさんが息を 引き取ったと聞いた時は正に 晴天の霹靂だった。
何故なのか。
まふまふも分からないらしい。
そらるさんは持病なんて 持っていなかった。
ただ言わせてもらえば、最近 流行っている奇病では ないだろうか。
人には愛を受け取る時、上限が 決まっている。
それを越した、「致死量の愛」を 受け取ってしまえば、その人物は 死に至る。
それではないか。
まふまふはそれから程なくして、 自殺した。、
彼の後を追ったのだ。
誰も引き止めなかった。
今日は2人の葬式だ。
真っ黒の封筒に赤い留玉。
中身は葬儀のご案内。
1番上には印刷で2人の友人の 名前が書いてあった。
『After the Rain まふまふ そらる 』
2人の隣は絶対にあの2人だけ。
互いが互いを必要とし、愛し合う。
素晴らしい関係の2人。
それは死しても尚同じ。
2人は両親の計らいで、 同じ墓に眠った。
この世では堂々と結婚式さえ 出来なかったけど。
来世までには法政も変わっていて、 同性でも許されるような。
そんな、何にも縛られない 恋愛をして欲しい。
そういえば最期、まふまふに 言ってなかったな俺。
【致死量の愛は、感染病である】
青空に白い雲。
2人の色が目に 染みて痛くて。
目の前が霞む。
頭が持っていかれる。
俺もそっち側に行くみたいだ、 迎えに来てくれる―…?
ごめんね。
1人で逝きたく なかったんだ。
最期に呟いたその言葉が、彼奴に 届きますように。
僕には思い出す 資格さえないよ。
❦ℯꫛᎴ❧
コメント
2件
素敵なお話しありがとうございました!ブクマ失礼します
コメントある!!と思ったらわたしかよ!!!( 読み返して気づいたけど致死量の愛って菜月ちゃんのだよね、すごい