テラーノベル
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放課後の帰り道、たまたま入った猫カフェで、俺は見てはいけないものを見てしまった。
もふもふの猫たちが歩き回るその店の奥の席に、ひときわ目立つ女子がいた。
いや、目立っていたのは髪色でもなく、その態度でもない。
スプーンを持つ手が震えるほど嬉しそうに、苺のミルフィーユを頬張る、その表情だった。
緑 。
その顔、どこかで見た気がする。
いや、"どこか"じゃない。毎日見てる。
しかも、なるべく関わらないようにしている、クラスの不良女子_橙だった。
嘘だろ、と思った。
クラスでは常に無表情で、教師にまでタメ口をきく。
男子に絡まれても、眉ひとつ動かさず、「うざい」と一言。
噂では中学時代に男子3人を病院送りにしたとか……とにかく近づかない方がいい存在だ。
そんな彼女が__
スイーツと猫に囲まれて、にこにこしてる?
緑 。
気づいたら声が漏れてた。
その瞬間だった。 彼女がこっちを向いた。
_目が合った。
終わった。 俺は、死んだ。
次の日、学校に来ることはできないかもしれない。
橙 。
ゆっくりと立ち上がり、こちらに向かってくる。
制服のままなのに、やたら迫力があるのはなんでだ。
いや、迫力しかない。
緑 。
橙 。
俺は必死に首を縦に振った。
命をかけて、絶対に誰にも言わないと誓う。
橙はため息をついて、元の席に戻った。
そして__
橙 。
え?今、なんて?
橙 。
橙 。
そんな言い訳をしながら、彼女はミルフィーユの一部を俺の皿に乗せた。
この日からだった。
"怖い不良女子"のはずの彼女が、少しずつ気になり始めていたのは。
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「この恋は、期限付き。」と、同時進行でやっていきます!