テラーノベル
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放課後の校舎は、少し静かだった。 「えとさん」 昇降口で呼び止められる。
「これから帰る?」 ゆあんくんは、スマホを片手に立っていた。 「……はい」 「じゃあさ」
軽い口調で続く。 「自販機、付き合って」 断る理由がなかった。 校舎裏の自販機。夕焼けが空をオレンジに染める
「どれ飲む?」 「……お茶で」 「渋」 そう言いながら同じものを押す。
「真似しないでください」 「いいじゃん」 缶を差し出され、指が少し触れた。 それだけで、心臓が跳ねる。
「…距離、近いです」 「ごめん」 すぐ一歩下がる。 ちゃんと、約束を守る人
「ねぇ」 ゆあんくんが空を見ながら言う。 「俺さ、えとさんといる時楽」 「…チャラい人はみんなそう言うんじゃ」
「失礼」 笑ってから、少し真面目な声。 「でも、軽くは言ってない」
夕焼けのせいか、横顔がいつもより大人っぽい。 「俺、今まで」 「好きって言われる側ばっかだった」 缶を握る指に、力が入る。
「追うの、初めてかも」 胸が、じんとする。 「…私も」
気づいたら口が動いてた。 「ゆあんくんといると」 言葉を探す。
「落ち着かないです。」 ゆあんくんが、少し笑った。 「それ、悪い意味?」 「…わかりません」
「そっか」 それ以上、踏み込まない。 沈黙が、嫌じゃなかった。 帰り道。
「今日はここまでね」 「はい」 「また、誘っていい?」 少しだけ、迷って。
「…たまになら」 ゆあんくんは少し嬉しそうに笑った。 手を振って、別れた後。 歩きながら気づく。 (…あ)
胸のこの感じ。 どうでもいい相手に、向ける感情じゃない。 まだ名前はないけど。 それでも。
(…好き、かも…) そう思ってしまった自分を、否定できなかった。
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