これで一緒にいられるね。
彼女は静かに涙を流した。
4月7日
僕
初めての登校の日だ
僕
僕は昔から人と話すのが苦手だ。
僕
だから日記の中だけでも素直になろうと思って日記を書き始めた。
僕
でも毎日は大変だから半月から月に1度くらいで書いていこうと思う。
4月30日
僕
学校が始まって1ヶ月がたとうとしている。
僕
未だに友達は出来ない。
僕
それでもひとつ楽しみが出来た。
僕
それは2つ前の席の女の子をながめることだ。
僕
名前も知らないがその女の子は誰にでも笑顔で接する優しい人だった。
僕
その子を見ると不思議と胸が苦しくなる。
僕
これを恋というのかは知らないけれど学校に行きたいと思うようになった。
5月15日
僕
彼女との進展は何も無い。
僕
ただ1つ彼女の事がわかったとすれば苗字が夏目というらしい。
僕
できれば下の名前も知りたいがそういうわけにもいかない。
5月25日
僕
今日少し進展があった。
僕
夏目さんが僕に挨拶してきたのだ!
僕
何気ない事だったかも知れないけどすごく嬉しかった!
僕
今度は僕から挨拶してみようかな?
6月5日
僕
始業式から2ヶ月が経つ。
僕
未だ友達は出来ない。
僕
それでも寂しくなんかない。
僕
なぜかというと登校する時に乗る電車が夏目さんと一緒ということが分かったからだ。
僕
それから毎日電車に乗るのが楽しくてしょうがない。
僕
名前も定期を見て夏目 菜々ということが分かった。
僕
進展の多い最近である。
6月16日
僕
今日は僕の誕生日だ。
僕
誰も祝ってくれない。
僕
親もおそらく忘れているだろう。
僕
だから自分にプレゼントをしようと思った。
僕
それは1度、菜々さんの家までついて行こうと思う。
僕
ストーカーと言われればその通りだが1年に1度くらいはいいよね。
僕
学校が終わり電車に乗った。
僕
菜々さんは部活はしてないのかまっすぐに家に帰る。
僕
最初、バレないか不安だったけど簡単に家が分かった。
僕
想像以上に家は大きく高級住宅街の中にたっていた。
夏目 菜々
ただいまー
僕
遠くで菜々さんの声が聞こえる。
僕
それだけで胸が苦しくなり、そして高揚感を覚えた。
7月1日
僕
あの日だけと決めていたつもりだったのにかれこれ半月もの間犯罪まがいなことをしてしまった。
僕
しかし後ろを付けていくスリルとドキドキがたまらなく楽しくてまた繰り返してしまう。
僕
この感情を誰かに共感を求めるのは無理だろう。
僕
最近は、彼女を守るためにナイフも持ち歩いている。
僕
使わなくても良いことを願う。
7月19日
僕
そろそろ夏休みが始まる。
僕
友達のいない僕には勉強する場所が学校になるか家になるかの違いだけだ。
僕
しかし習慣にしていたストーキングをどうするかが問題だった。
僕
これを機会にやめようとも思ったが菜々さんに会えないと思うと辛くなった。
僕
何か対策を考えよう。
7月30日
僕
菜々さんの行動パータンを全て把握した。
僕
彼女は塾に通っているため、行動パターンが制限される。
僕
また、それ以外の日も近所で女子高生が遊べるところは少ない。
僕
だからパターンは限りなく少なかった。
僕
これで夏休みも大丈夫。
8月15日
僕
夏休みが始まった。1週間はパターン通りだった。
僕
しかし、5日ほど前から彼女がパターンから外れてきた。そして昨日、今日と姿を見せない。
僕
どうしたのだろう?
8月31日
僕
どうやら海外旅行に行っていたらしい。
僕
見張っていたかいがあった。
僕
しかし家族と一緒には出かけていない。
僕
誰と一緒だったのだろう。
9月15日
僕
菜々さんの家に入り込む男を見た。
僕
一瞬その場で捕まえようかと思ったがどうやら友人らしい。
僕
何もないといいが…
9月25日
僕
やはりあの男は今日も菜々の家にいる。
僕
ここ最近一緒にいる事が増えた気がする。
僕
やはり不安だ。
僕
しかし、あの男といる時菜々は誰といる時よりも楽しそうに笑う。
僕
あの男は何者なのだろう。
10月15日
僕
今日もあの男がいた。
僕
しかし数十分すると、怒ったように出ていってしまった。
僕
数分すると菜々が泣きながら出てきた。
僕
彼女を泣かせるとは許せない。
10月20日
僕
最近一緒にいなかったあの男がまた菜々につきまとい始めた。
僕
許せない。
僕
また彼女を悲しませるのなら僕は鬼になってもかまわない。
僕
僕は本気でそう思った。
10月25日
僕
あの男はまたいる。
僕
しかしその男といる菜々はとても楽しそうだ。
僕
最近、菜々が楽しいならそれでいいかなと思い始めた。
僕
僕なんかいなくても彼女は幸せだろうと考えていると楽しそうな2人の会話が聞こえてくる。
あの男
ハロウィンパーティーの時楽しみにしてくれよな!
夏目 菜々
うん!
10月31日 HELLOWEEN
僕
あれからストーキングはしていない。
僕
しかしそれでもずっと考えていることがある。
僕
それは菜々をあれほど笑顔にさせる理由である。
僕
他の人に向けるものでは無い。
僕
あの男だけの笑顔。
僕
最後に見た菜々もその笑顔だった。
僕
今からその理由を知るために、あの男を楽しみに待つ菜々の家に行こうと思う。
僕
やっとついた。
僕
玄関を見るとあの男もちょうど家に入ろうとする所だった。
僕
また菜々は笑顔だ。
僕
ずっと待っていた。
僕
彼女を笑顔にする。理由を
夏目 菜々
きゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃや!
僕
菜々の家からだ。
僕
僕はとうとうあの男が菜々を襲ったんだ。
僕
僕はいてもたっても居られず菜々の家へ乗り込んだ。
僕
幸いにも鍵はかかっていなかった。
夏目 菜々
誰?
あの男
誰だテメェ?
僕
た、助けに来た。
あの男
は?
僕
お前が彼女を襲ったんだろ。その悲鳴を聞いて助けに来たんだ。
夏目 菜々
あれはサトシくんが仮装して飛び出してきたから…
僕
ヘェ?
僕
襲ったんじゃないの?
あの男
襲うわけねぇーだろ
僕
じゃあこの男とはどういう関係なの?
夏目 菜々
彼氏だけど?何?
夏目 菜々
それより早く出てってよ!
僕
嘘だ。
夏目 菜々
え?
僕
こんなやつ彼氏じゃない。
夏目 菜々
いやだから、サトシくんと付き合っ
僕
違う!
僕
違う違う違う
僕
違う!
僕
なんでそんな事言うのさ
夏目 菜々
何が?
僕
そうだ。
僕
そうだよ。
僕
君は洗脳されてるんだ。
僕
今、助けてあげるよ。
夏目 菜々
何?
夏目 菜々
なんでナイフなんか持ってるの?
僕
君を守るためだよ。
夏目 菜々
待って!
夏目 菜々
待って待って待って!
夏目 菜々
夏目 菜々
嘘…
僕
君の為だ。
夏目 菜々
きゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!
夏目 菜々
ひ、人殺し!
夏目 菜々
なんで殺したの?何が私のためよ!
夏目 菜々
許さない。殺してやる…!
僕
なんで怒ってるの?
僕
君のためなのに。
僕
なんで君は怒ってるの?
僕
なんで僕にはこの男みたいな笑顔を見せてくれないの?
僕
なんでなんだよ!
僕
ぐぁぁぁぁぁぁぁァァァァァ!
気がつくと彼女はナイフが胸に刺さり倒れていた。
彼女はほとんど動かなくなっていた。
それでも僕は夢を叶えられる。
「これで一緒にいられるね。」
彼女は静かに涙を流した。