テラーノベル
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__何も見えない真っ暗闇の中で、何かが、淡い桃色の光を放っている。
その光は、ぼんやりと右に左に揺れ、遠退いたり近付いたりを繰り返していた。
切れかけの懐中電灯…… あるいは、消える寸前の花火のように、ぷつぷつと視界から離れたり、映ったり。
それ以外、何も存在していない此処では、その光だけが希望のように思える。
不意に、 存在しない筈の体に暖かい感触を覚えた。
それはまるで、 揺り籠に揺られているような……、母の胎内で、優しく撫でられているような……そんな感覚。
温かく優しい感覚に身を任せ、くたりと見えない何かに寄りかかる。
すると、ふと…… 眩い光が辺りを包み……
一瞬にして、暗闇を……… 消し去った。
小山ーOyamaー
半強制的に開かされた瞳に、 桃色の世界が飛び込んで来る。
僕の双眸に映った“其処”は…… 森だった。
小山ーOyamaー
グルグルと、 頭の中で「?」が高速で回転し出す。
まるで寝起きのように回らない頭を、何とかフル回転して考えようと、僕は辺りを見渡した。
一。 自分は、此処が何処か分からないこと。
二。 辺りでは知らない人達が何やら話していて、皆、髪にピンク色のメッシュを入れていること。
三。 自分のこれまでの記憶が、一切無いこと。
整理して思ったが、 今のこの状況は、明らかに異常であった。
小山ーOyamaー
自分が見渡す限り、 辺りはピンクで埋め尽くされている。
生い茂る、“桃色”の葉。 木に実る、謎の“桃色”の果物(らしきもの)。 世界の滅亡を表すかのように、“桃色”に染まった、何処までも続く空。
これを異常と言わなかったら、 何を異常と言うのか。
目が痛くなる程ピンクに覆い尽くされた“此処”は、自分が別の世界へ来てしまったと錯覚させる。
揺籃ーYurikagoー
小山ーOyamaー
不意に、 背後から声を掛けられた。
異様な、しかし何処か不思議と引き込まれるこの世界に魅入っていたせいで、彼の気配に気が付かず、思わず変な声が口から飛び出てしまう。
心臓はバクバクと暴れ出し、 変な冷や汗が背中を伝った。
揺籃ーYurikagoー
小山ーOyamaー
小山ーOyamaー
震える口で何とか言葉を紡ぎ、 彼へと返す。
僕の言葉を聞いて、 彼は安心したように微笑んだ。
揺籃ーYurikagoー
彼からの問いかけに、 僕は返そうと口を開……こうとする。
だが、突然 横から現れた金髪の女性に阻止された。
パフ
小山ーOyamaー
本日二回目の悲鳴に、金髪の女性は 「今の声は何?」とでも言うように頭上にハテナを浮かべる。
………恥ずかしい。
パフ
パフ
パフ
気を取り直して、 金髪の彼女は僕らに向き直った。
彼女の背中には大きな翼が生えていて、金色の髪の上では天使の輪がぴかぴかと光っている。
そして、 ホワイトブリムで気付きにくいが、左……僕達から見て右側に、ピンク色のメッシュを入れていた。
小山ーOyamaー
そんな疑問をかき消すように、 隣に居た紫色の(この人もまた、ピンクメッシュを髪に入れている)男性が口を開く。
揺籃ーYurikagoー
男性の素直な返事に満足したのか、天使のお姉さんはにこやかに微笑んだ。
そして、僕らの後ろに視線をやると、
パフ
と声を張り上げていた。
小山ーOyamaー
振り向けば、今起きたばかりなのか眠そうに目を擦っている人間の姿があった。
消愿ーSyogenー
病的なまでに肌が白く、細めに垂れた生気のない瞳が、此方をぼぉっと眺めている。
……その人もまた、 髪にピンクメッシュを入れていた。
流行りなのだろうか。世間に疎い僕には、全く理解が出来ない。
疑問を抱くが、とにかく今は、 彼女の指示に従う事が最優先だ。
揺籃ーYurikagoー
消愿ーSyogenー
小山ーOyamaー
紫髪と茶髪の二人と顔を見合わせながら、僕は静かに頷いた。
続く
コメント
22件
ついに始まった……!! 展開楽しみに超待ってます ピンクの空……まるで朝焼けみたい(???)
うおおお!!楽しみにしてましたー!!お疲れ様です!!見てて楽しい…みんな可愛い…可愛い…ここに居たら可愛い可愛いピンクの印象が悪くなりそうだぜ…世界観が好きすぎる
きた!!! 念願の第一話にココロオドル 踊り狂う ピンクの空ってそれはそれで綺麗そうね