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甘さに溺れる

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甘さに溺れる

1 - 金平糖

♥

561

2023年05月07日

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いふ

よし、今日の俺は
一段とカッコいい!

鏡の中にいる自分に向かって、 自己暗示をかけるためにそう言った

いふ

今日の天気は晴れ

いふ

時間も余裕がある

いふ

お金はちゃんと持ってる

もう一度、何度目かわからない デート前の確認をした

いふ

…アニキとの初デート
絶対成功させるんや!

よし、と両頬をパチンッと思い切り 叩いた。所謂気合い入れだ。

いふ

いってきまぁーす!!

母親

いってらっしゃい

俺はドアを開け、駆け出した

先週のことだ

悠佑

あ、いふ!

いふ

アニキ!言われた通りきたよ

悠佑から放課後、いつもの屋上に 集合なと言われた。

いふ

どうしたん?なんかあった?

いつもなら、何も言わなくても 自然と二人で集まっている。 だから、心配になったのだ

悠佑

……、えっと、な

途端に、アニキは俯いてしまった

悠佑

っあー、その、なんか、
あったわけやないん、
やけど

いつもとは違う様子の君だったが、 嘘は言ってないと思った。 だから、安心した

いふ

そっか、なら良かった

アニキの顔はいまだに俯いたままだ。 一体、どうしたというのかと 心配、いや不安がどこかに残っていた

いふ

じゃあ、どういう用なん?

表情のわからないアニキに、 拭えない不安を抱えて聞いた

悠佑

…、そ、れは…

悠佑

……

数秒口を閉ざした後に 覚悟を決めたようにこちらを見上げ 口を開いた

悠佑

っす、すきや、!!

…悠佑は、確かにそう言った

いふ

………へっ?

随分間抜けな声が出てしまった気が したが、その時はどうでも良かった

悠佑

〜〜〜っ!

君が顔を歪めても、 それでもこの空気を、 この砂糖のように甘い甘い空気を 変えることはできなかった

悠佑

やから、!

悠佑

俺はいふのことが!

甘い空気を吸い込み、また悠佑は 口から甘ったるい空気を吐き出した

悠佑

大好きなんや!!

「大好きなんや」

いふ

ぁ、…

ようやく、脳が追いついてくれた。

いふ

ほ、んまに…?、

それでも心が追いついてくれなくて 情けない声をあげた。

悠佑

…、し、っつこいなあ…

耳までイチゴみたいに赤くなってる 君は目を逸らした。 けれど、続けてこう言った

悠佑

、でも、今日は、
特別やから、

君は少し長い前髪を耳にかけた

悠佑

もう一回、言ったるわ

琥珀の瞳が俺を溶かすように、 熱を持って見つめて、

悠佑

淡いピンク色の唇が甘い空気を 吸って、吐いて、 そして弧を描くように微笑んだ

悠佑

いふのこと、
愛しとるよ

愛を謳った君の声が 俺の脳をドロドロに溶かして 中に侵ってくる

いふ

あ、にき……

こんなの、甘すぎて、 可笑しくなっちゃうわ

いふ

…、お、れもっ、

そう嘲笑えたら良かった… のかもしれない。

いふ

俺も、!

けれど、俺はそうは思えない。

いふ

悠佑のこと、
愛してる!!

だって、君が目の前にいるから

まあその後砂糖水に溺れてしまった かのように話せなくなったが、 なんやかんやで付き合った。

いふ

アーニキッ!

緑が生い茂る公園の橋のベンチで アニキは静かに…いやそわそわして 座っていたため声をかけた

悠佑

いふ!

ぱあっという効果音がお似合いの、 純粋な笑顔が向けられた

いふ

んん"っ

その眩さに早速やられそうになるが 今日はカッコいい彼氏をやると 決めているために、耐えた

いふ

ごめん、待った?

デートの常套句とも言える言葉を ついに使う日が来るなんて、と 幸せに入り浸っていると、 アニキが口を開いた

悠佑

何言うてんねん、
まだ集合時刻の15分前やろ?

15分よりも前に君は来ていた その事実が浮かれているのは俺だけ、 ではないことを示していた。

いふ

…ふは、そうやね!

それが、どんなに嬉しいことか!

幸せメーターを1〜10で 考えるとすると9くらいはいく。 因みに告白されたのは600はいった

いふ

それじゃあ、…で、デート
行こうか

悠佑

! …お、おう!

デートという自分で呟いた言葉に ドキドキしながら、 ちゃっかり手を繋いで歩き出した

二人で水族館にやってきた。

悠佑

…カップル料金で、
良かったんかな

アニキは不安気、 というよりも恥じらいの方が 大きそうな表情をしている

いふ

その場で手にキス
したんやで?

いふ

それが条件やったし、
アニキ以外の奴とやったら
ぜーったい嫌!!

いーっと歯を見せて拒否顔をすると、 アニキはふっと笑って、

悠佑

それもそうやな

悠佑

俺も、いふ以外やったら
ぜーったい嫌や!

同じ気持ちだと、俺に伝えてくれた。

いふ

〜〜っ!

甘い、甘すぎるよ

いふ

ぁ…、アニキ、

悠佑

…じ、ジンベエザメ!
ほら、めちゃでかくない?

変に、甘い空気になったのを 変えようと話題を出すアニキの耳は 赤く染まっていた

いふ

そ、うやね……

話題に乗っかって、一緒になって 水槽の中を泳ぐ魚を見た

悠佑

…あ、こっち来た

アニキの顔を見る 仄暗い水槽の前で、琥珀の瞳がより 輝いて見えた。

いふ

…綺麗、だね

思わず口から出た言葉に、あ、と 思いながらも言ったことの満足感も 少なからず存在した

悠佑

へ、っ、あ、あー
たしかに、綺麗やな、!

一瞬、コチラを見て戸惑ったが、 すぐに水槽の方へ向き魚のことか、と 思っていそうなアニキがいた

いふ

公共の場でこれ以上甘ったるい空気を 出すのはよそうと俺はグッと堪え、 その後も水族館デートを楽しんだ

いふ

今日、楽しかった?

デート終わりの帰り道、 俺の手を握って隣を歩くアニキに そう問いかけた

悠佑

もちろん!めっちゃ
楽しかった!!

疲れている様子は全くない、 それどころかはじけるような笑顔で こちらを向いた。

いふ

良かった、俺もめちゃ
楽しかったからさ!

ああ、愛おしい。 デートが終わることが、 人生が終わることと同じくらいに嫌だ

いふ

……、ねえ

悠佑

なんや?

いふ

次のデートは、
いつにする?

悠佑

!!

これで終わらせないために、 精一杯の気持ちで聞いた。 手がベタついてないかが、少し 気掛かりなほどには。

悠佑

そ、そうやなあ……
ばっ、バイト入っとらんし、
明日の、放課後は?

夕日に照らされているだけではないと 分かるほどには赤い君の頬で その言葉の意味がわかった。

いふ

…いい、と思う

きっとアニキも、ずっと一緒にいたい そんな風に思ってくれているのだと、 少し傲慢な考えを持って肯定した

悠佑

あ、雨…?

先ほどまでの甘い会話とは無関係の 天気の話題へと変わったのは アニキの頭に雫が落ちてきたからだ

いふ

ほんまや…!

天気予報が嘘をついた。

いふ

…アニキは傘持っとる?

けれど、これはもしかしたら チャンスかもしれないと思い、 問いかけた

悠佑

あ、ああ、一応
折り畳み傘は持っとるよ

鞄から出されたソレに俺は心底、 残念に思ってしまった。

悠佑

いふは、持っとるん?

君に、なるべく嘘はつきたくなかった だから、俺も鞄からアニキと同じソレを出した。

いふ

実は、持ってるんだよね…

鞄に入れっぱなしにしていたせいで 相合傘という全リア充の夢が なくなってしまった。

いふ

勿体無いことをしてしまった自覚は 当然ある。今も悔やんでいる。

いふ

しょうがないからさすか…

泣く泣く傘を広げると、 アニキがその傘のスペースの内側に 入ってきた

悠佑

相合傘、したいんやろ?

驚きを隠せない俺を前に、アニキは ニヤリと可愛い悪い顔をしていった

悠佑

しょうがないから、
入ったるわ!

いふ

あ、、う、ん…

小悪魔みたいに俺を惑わす。 だけどそんな君も愛している、 今、確信してしまった。

いふ

悠佑には、敵わないなあ…

悠佑

ふふ、せやろせやろ〜

カッコいい彼氏だなんて君の前では 結局、無理なんだ。 ならせめて、彼氏ではいたいと思った

いふ

…、ずっと、一緒にいてね

聞こえないように小さな声で言った。

歩いているとだんだんと雨が強くなり 傘をさす人も だいぶ増えたように感じる

いふ

アニキ、肩濡れてるよ

悠佑

ええの、これは…その
雨に当たりたい
気分やったんや!

いふ

…ふーん?

男前で優しい、完璧な彼女。 だが、濡れてほしくなんてないので 俺はアニキの肩をグイッと寄せた

いふ

彼氏の顔、ちょっとは
立たせてよ。

アニキの耳元で囁くと、 こそばかったのか、身を捩った。

いふ

ね、いいでしょ?

肩を抱いたまま、問いかける

悠佑

ぅ…、そ、そこまで、
いふが、言うなら…

しどろもどろになりながら、 望んだ返事をしてくれた。

いふ

ふふ、あんがと

ああ、このまま

いふ

時が止まって仕舞えばいいのに。

いふ

悠佑

そんなこと、言わないからさ、 代わりにこの言葉を君に送るよ

いふ

愛してる

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