テラーノベル
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夏。
泡立つ波の音がザザァと騒めく。
今年もまた、暑い夏がやってきた。
輝く砂浜は太陽に晒されて
私の素足を熱する。
去年も同じことをした気がする。
けれど気持ちは打って変わって
ワクワクしている。
不思議な感覚。
「来年の夏も、この海に来てください」
一枚の紙切れに記された一文。
私はその約束を守るために
今日ここにきた。
ここに来ることができた。
一年前の夏の夜に、
この砂浜でボトルメールを拾った。
知らない人からの手紙。
私はこの手紙で救われた。
今日まで、生きることができた。
太陽に照らされた手紙は
眩し過ぎて、よく見えない。
私はその手紙を
新しいビンに詰め替えて
砂浜にポイと投げ捨てた。
また、私みたいな人が
この手紙で救われると良いなって
一縷の希望を添えて。
TELLER文芸部 『手紙』
裸足・白を表現
案 ベロニカさん
コメント
3件
あえて手紙の文面を書かないことで読者に最善の文面を想像させる手法が素晴らしいです。 知らず知らずのうちに支え合っているから生きていける、と感じさせるストーリーでした。
人との繋がり、それは自死を防ぐ一番の薬なんでしょうね… 手紙が次の苦しい人に届く事を祈るばかりです。
次に受け取った人にも、温かい気持ちが届くといいですね✨