そこは天界とも人間界とも異なる、不気味なほど静寂な空間だった。
重力がやや不安定で、建物の一部が宙に浮かんでいる。
有希
空間構造が不安定です。こちらの法則が通用しない可能性があります。

碧斗
なんだこの空…嫌な感じだな。

珊瑚
姫奈は…この世界のどこかにいるの…?

空がビリビリと割れるような音とともに、頭上から何かが降ってきた。
碧斗
なんだ!? 奇襲か!?

有希
……いえ、敵性反応はありません。これは……

煙の中から、ボサボサの黄色の髪と、ダルそうな目をした少女が這い出てくる。
???
……また、失敗した。
着地の計算、ズレた
最悪。

珊瑚
え、誰……?

???
霧月ルア。未来の戦闘員ってことで。よろしく。

碧斗
未来? どういうことだ。

霜月ルア
このリバースワールドっての、ヤバいことになるから止めに来たの。
でも着地失敗したし、眠いし、説明めんどいし……要は、協力するよ。たぶん。

有希
“たぶん”とは、あまりにも不安要素が多いのですが……

珊瑚
未来から来たって本当? それって、姫奈のことも何か知ってるの?

霜月ルア
……まだ話すタイミングじゃない。話すと、全部崩れる。

碧斗
おい、何を隠して…

霜月ルア
ねえ、そういうの面倒だからやめよ? いまは、とりあえず動こ。
この先、もう“敵”が動いてる。

珊瑚
…分かった。案内してくれる?

霜月ルア
ま、私なりにね。

碧斗
未来? どういうことだ。
