バーの奥の席に座るヴィクターは、 フェリックスとワトリーをじっと見つめた。 バーのざわめきは遠い世界の音のように感じられ、 三匹の間には緊迫した静寂が流れていた。
ヴィクター・クロウリー
フェリックス
彼女は人間の世界へ行った可能性があるんだ。
ヴィクター・クロウリー
フェリックス
人間界へ私たちを連れて行く理由が知りたい。
ヴィクター・クロウリー
面白いねぇ探偵さん。
ヴィクター・クロウリー
教えると思うか?
フェリックス
直ぐ保護しなければならない。
フェリックスは写真を取り出し、 ヴィクターに差し出した。写真には ミミちゃんの無邪気な笑顔が写っていた。
ヴィクターは座ったまま、腕を組んで フェリックスとワトリーを見下ろした。
ヴィクター・クロウリー
経営者は何を求めると思う?
ヴィクター・クロウリー
俺に何の得がある?
ワトリー
ワトリーがおずおずと尋ねると、 ヴィクターは大声で笑った
ヴィクター・クロウリー
貧乏人の小銭を狙うとでも?
フェリックスは額にしわを寄せ、 真剣なまなざしでヴィクターを見つめ返した。
フェリックス
違法行為には協力できません
ヴィクター・クロウリー
この街の警察官ジョセフ。
ワトリー
すごく感じが悪いのだ
ヴィクター・クロウリー
宝石や時計を売りさばいて儲けているらしい。
あの警察官の給料でそんな事ができると思うか?
ヴィクター・クロウリー
裏での取引をしているらしい
フェリックス
ヴィクターは冷ややかに笑い、 背もたれに深くもたれかかった。
ヴィクター・クロウリー
荒らすのは許されない行為だ。
ジョセフの実態を調査して欲しい
ヴィクター・クロウリー
引き受けてくれるよな?
フェリックスは一瞬躊躇したが、 やがて決意の表情を浮かべて ヴィクターに答えた。
フェリックス
不本意だが、やるしかなさそうですね。
ヴィクターは満足げにうなずき、 名刺を取り出した
ヴィクター・クロウリー
メスのネコがいる。協力してくれるはずだ。
フェリックスはその名刺を受け取り、 名前を口にした
フェリックス
つづく