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瀬名 陽葵
放課後、夕陽がオレンジ色に染める部室棟の裏。
高校1年生の瀬名 陽葵(せな ひまり)は、壊れそうなくらい大きな声で叫んだ。
目の前に立つのは、サッカー部の絶対的エース、黒鉄 蓮(くろがね れん)。
学年一のモテ男でありながら、浮いた噂一つなく、鋭い眼光でゴールだけを見据える彼は、周囲から「氷のエース」と呼ばれていた。
黒鉄は、首にかけたタオルで汗を拭いながら、無機質な視線を陽葵に向けた。
黒鉄 蓮
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
黒鉄 蓮
黒鉄は一瞥もくれず、スパイクを鳴らしてグラウンドへと戻っていく。
普通なら心が折れるような冷たさ。だが、陽葵はめげない。
瀬名 陽葵
太陽のような笑顔で背中に声をかけ、陽葵もまた、全力で校門へと走っていった。
陽葵は、自分で言うのもなんだが、考えるより先に心が出てしまうタイプだ。
嘘がつけず、感情がすべて顔に出る。
そんな彼が黒鉄に一目惚れしたのは、入学直後の部活紹介だった。
一切の妥協なくボールを追う黒鉄の、凛とした佇まいに心臓を撃ち抜かれたのだ。
翌日から、陽葵の猛アタックが始まった。
ある日は、朝練終わりの黒鉄を待ち伏せして。
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
ある日は、屋上で。
瀬名 陽葵
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
ある日は、雨の日の昇降口で。
瀬名 陽葵
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
黒鉄の態度は、いつだって「無」だ。
怒るわけでもなく、ただ淡々と、陽葵の好意を切り捨てていく。
周りの生徒たちは「あんなに冷たくされて、よく平気だよね」と噂していた。
だが、陽葵に言わせれば、それは少し違う。
瀬名 陽葵
瀬名 陽葵
親友にそう報告すると、親友は盛大な溜息をついた。
親友
陽葵の瞳には、一切の曇りも、打算もなかった。
ただただ、黒鉄 蓮という人間が好き。その一点だけで、彼は動いていた。
季節は秋。全校生徒が熱狂する「球技大会」の時期がやってきた。
サッカー部員は当然サッカーに出場するが、黒鉄はクラスの代表としてだけでなく、学校中の注目の的だった。
陽葵のアタックは、ついに30回を超えていた。
その日の練習後、黒鉄は珍しく一人でグラウンドのベンチに座り、スパイクの手入れをしていた。
陽葵は勇気を出して、少し離れた隣に座る。
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
黒鉄の声は、いつもより少しだけ低かった。
連日のハードな練習で疲れているのかもしれない。
陽葵はバッグから、丁寧にラッピングされたものを取り出した。
瀬名 陽葵
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
黒鉄は無言でそれを受け取った。いつもなら「いらない」と突き返すはずなのに。
陽葵は驚いて、目を丸くした。
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
黒鉄 蓮
瀬名 陽葵
陽葵が走り去った後、黒鉄は手元に残された青いリストバンドを見つめた。
不格好だが、一編みずつ丁寧に編まれている。
黒鉄 蓮
黒鉄は小さく呟いた。
胸の奥が、ほんの少しだけ、熱を持ったような気がした。
球技大会当日。グラウンドは異様な熱気に包まれていた。
黒鉄のクラスは順調に勝ち進み、ついに決勝戦。
陽葵は自分の試合(卓球)が終わるやいなや、喉が枯れるほどの声で応援した。
瀬名 陽葵
試合は白熱し、残り1分。黒鉄が鮮やかなドリブルで相手を抜き去り、弾丸のようなシュートを叩き込んだ。
劇的な逆転優勝。グラウンドが歓声で揺れる。
その時、陽葵は見た。
勝利の瞬間に駆け寄るチームメイトとハイタッチする黒鉄の腕に、あの青いリストバンドが巻かれているのを。
瀬名 陽葵
試合後、表彰式を終えて静まり返った夕暮れの校舎裏。
陽葵は、片付けを終えて戻ってきた黒鉄を待ち伏せした。
瀬名 陽葵
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
相変わらずの素っ気ない態度。だが、黒鉄は目を合わせようとしない。
陽葵は一歩前に踏み出し、今日、35回目の告白をした。
瀬名 陽葵
瀬名 陽葵
静寂が二人を包む。
黒鉄はゆっくりと陽葵に向き直り、一つ大きな溜息をついた。
黒鉄 蓮
瀬名 陽葵
陽葵が肩を落とした、その時。
大きな、少し熱を持った手が、陽葵の頭を乱暴に撫でた。
黒鉄 蓮
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
陽葵は、言葉の意味を理解するのに数秒かかった。
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
瀬名 陽葵
陽葵は思わず黒鉄に抱きつこうとして、寸前で止まった。
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
黒鉄はそう言って、自分から陽葵を軽く引き寄せた。
黒鉄の体温は、サッカーの試合後よりもずっと熱い気がした。
瀬名 陽葵
黒鉄 蓮
瀬名 陽葵
真っ直ぐで、純粋すぎる太陽が、ついに孤高のエースを溶かした瞬間だった。