コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
久保田進
友人の久保田は、野村に小さな箱を手渡した。
久保田に促され中を開けると横に寝かされた状態の砂時計があった。
野村猛
野村猛
久保田進
久保田進
野村猛
野村猛
久保田進
久保田進
久保田進
野村猛
久保田進
久保田進
久保田の言葉に少し疑問を抱きつつ、野村は言われた通り砂時計を箱に入れたままにしておくことにした。
数日後の夜、野村は新作小説の執筆に取りかかった。
久保田がプレゼントした砂時計は箱が開いた状態で、作業台の隅にインテリアとして置いてある。
執筆は順調に進んだが、腹の虫が空腹を報せる。
リビングへ行くと妻の麻里がテレビを観ていた。
麻里
野村猛
お互い冗談を言って笑ってから、野村は台所からカップ麺を取り出し、お湯を入れて部屋へと戻った。
時間を計ろうとして、自然と砂時計に目が行った。
「大分年期が入ってて砂がこぼれるかもしれない」
野村猛
野村猛
野村は笑いながら砂時計を手にすると、作業台の上に立たせた。
上に溜まった砂が中央の管からサラサラ…とかすかな音を立てて下へ落ちる。
計測時間は3分なので丁度よかった。
リビングから聞こえるテレビの音以外、なにも聞こえない静寂に包まれた室内に聞こえる砂の音。
じっと砂が落ちる様子を見詰める野村だったが、突然視線を砂から天井に向けた。
野村猛
野村猛
天井裏を人が歩いているような足音が上から聞こえる。
野村は怖がりではないが、不吉な予感に襲われ腰掛けていた体を起こした。
すると、作業台が揺れた弾みでカップ麺と砂時計が床に落ちた。
野村猛
熱湯が足に降りかかり熱さで野村は飛び跳ねた。
落ち着いた頃には既に足音は聞こえなくなっていた。
騒ぎを聞いて飛び込んできた麻里に「大丈夫だ」と言い、床に落ちたカップ麺と砂時計を拾い上げた。
それから3週間が過ぎたある日の夜。
麻里がコーヒーを野村の作業台に持って行くと「あら?」と声を出した。
麻里
野村猛
麻里
野村猛
麻里
麻里
麻里
野村猛
野村猛
野村猛
麻里
麻里は残念そうに言い、部屋から出て行った。
ここ数日、野村は久保田から貰った砂時計を使っていない。
使えばまたあのような出来事が起こるからだ。
天井裏から聞こえる足音。
点滅を繰り返すスタンドライト。
ひとりでに転がるペン。
窓が閉まっているのに揺れるカーテン。
勝手に開閉するタンスの扉。
野村猛
さらに、足音に関しては特に不気味だった。
砂時計の砂が落ちている間、足音は彷徨うように天井裏で足音を立てているが、
気のせいか3分が経過する直前になると自分の真上に近付いてくるような気配が感じられた。
そのときは、慌てて砂時計を横に寝かせたが、
そうすることで足音も聞こえなければ、一連の怪奇現象もピタリと収まった。
野村は久保田の言った意味がわかった気がして、3日前に連絡を入れたが一向に繋がらない。
間違いなく砂時計の力が働いていると確信した野村は自分の視野に入らないよう、
砂時計を箱に納めたまま作業台の引き出しにしまっていた。
気を取り直して執筆に戻ろうと思ったが、寒気で尿意を催しトイレへと向かった。
トイレから出ると、台所でなにやら麻里の鼻歌が聞こえる。
野村猛
麻里
麻里
麻里が指を差した先を見た野村は驚愕した。
あの砂時計だ。
麻里
麻里
野村猛
麻里
砂時計に気を取られていた麻里は気付いていないが、野村にはしっかりと気配が感じ取れていた。
リビングを彷徨っていた足音が台所へと向かっている何者かの気配を…。
野村は慌てて砂時計を掴み上げたが、既に砂は全部落ちていた。
麻里
麻里
突然、部屋の電気が切れ麻里は拍子抜けしたような間の抜けた声で天井を見上げた。
ただし、野村の視線は天井から妻の背後を向いていた。
恐怖で唇をわなわな震わせた野村の手から砂時計が落ちた。
気付いたときには麻里は姿を消し、
野村は得体の知れない「なにか」に掴まれた足を振りながら床を這っていた。
やがて、静寂のみが残った真夜中の家に響くスマホのコール音。
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
久保田進
必死に呼びかける久保田の声は、誰1人いない家に虚しく響くだけだった。
2019.10.20 作