深夜___辺りが青く染まる。
その闇と、同じ色の目を持って道を征く小柄な人影。
彼、中原中也が黒い陰を見て、目を上げる。
中原 中也
太宰 治
白衣は着て居らず、黒い胴衣と開襟襯衣姿の太宰。
何時もの調子で、中也に話し掛ける。
中也は、普段の仕事着姿。
中原 中也
太宰 治
学校では白襯衣に襟飾のみで、上から白衣…と云う格好の為、見慣れない。
太宰 治
中原 中也
他愛も無い会話の中でも、何処か冷たい空気が二人を刺して居る。
太宰 治
其の低い声に中也は小さく頷き、太宰の後を追った。
___まるで、文学の世界みたいだ。そう思い乍ら。
街灯の数が段々減っていき、遂に真っ暗になった…と云う辺りに其れは在る。
中原 中也
太宰 治
太宰 治
太宰 治
中原 中也
舐めるなと云わんばかりに、中也はロングパーカーの背に隠して居た竹刀を取り出す。
フードを被り、見張りの前へと堂々と正面から歩み寄って行く。
見張りが此方に気付く気配は無い。
気配を消せば、居ないのと同じ___今から殺す、彼奴自身に教えられた事だ。
残り僅か数メートル。足先に当たった小石が転がる音で、漸と見張りの目が中也を捉える。
無論、叫ばせる暇など与えない。
目で追うのがやっと、反応など以ての外…風を切る速さで中也は二人を昏倒させた。
太宰 治
背後から来る太宰に、中也が苦笑する。
太宰 治
云いつつ太宰は、自身の後ろへと銃口を向けた。
微かな音がした後、少し離れた処で人が倒れる音が響く。
太宰 治
にっこりと笑む太宰の左手には、麻酔弾。
其の笑顔が逆に恐ろしい。
ちゃんと寝ると良いもんだ。中学二年生にして中也は思った。
身体が軽々と動く。
今迄危ない目に一度でも遭っただろうか?
答えは否だ。
太宰 治
頭領執務室前に二人は辿り着いた。
中原 中也
太宰 治
太宰 治
呆れ乍ら破壊したセキュリティ装置の扉を開け、パソコンを繋ぐ太宰。
カタカタと文字盤を打つ音が響く。
太宰 治
中原 中也
細かいアルファベットの文字列。太宰は其処へ更に文字を打ち込んで行く。
太宰 治
中原 中也
そうこうして居る内に、緑色のチェックマークがディスプレイに映る。
太宰 治
不敵に笑って太宰が云うと同時、部屋の扉が音を立てて開いた。
扉が開き切る。
男が上座に座って居る。
太宰 治
仮面の道化師の笑顔で太宰が声に応える。
夜の海を思わせる、闇色の襯衣。
秀麗な顔に、其れを一層際立たせる金色の髪。
太宰 治
太宰の眼が温度を失う。 その名を呼ぶ。
太宰 治
ポール・ヴェルレエヌ。白手袋を嵌めた手で自身の顎を撫でた。
ポール・ヴェルレエヌ
ポール・ヴェルレエヌ
中原 中也
中原 中也
中也から、抑えられて居た殺気が噴出した。
コメント
7件
ま、まさかのヴェルレェヌ!? 、、、最高っすよ!
ま、ま、まさかのヴェルレェヌ!?森さんだと思ってた!?今回も最高でした!ありがとうございます!!!