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雨は夕方から降り始めた。 最初は弱かった。 でも夜になる頃には、 街全体を濁らせるみたいな降り方になっていた。 窓へ雨粒が叩きつけられる音を聞きながら、 僕は携帯を見ていた。
23時20分。 かやまからの着信履歴。 三件。 僕はため息をついて、 ベッドへ倒れ込む。 無視するつもりだった。 少し距離を置いた方がいい。 そう思っていた。 最近のかやまは重すぎる。 視線。 電話。 待ち伏せ。 全部。 息が詰まりそうだった。 なのに。 携帯を伏せても、 頭の中からかやまが消えない。 その時。 携帯が震えた。 かやま。 僕は数秒迷ってから通話を押す。
はせがわ
かやま
僕は眉をひそめる。 カーテンを開ける。 マンション下。 街灯の雨の中。 かやまが立っていた。 傘も差さず。 僕を見上げている。
はせがわ
かやまは少し黙ったあと、 小さく言う。
かやま
その声が、 少し震えていた。 僕は目を閉じる。 最悪だ。 こういう言い方をされると弱い。
はせがわ
外は寒かった。 雨が強い。 コンビニの光も滲んで見える。 かやまは全身濡れていた。 髪から水滴が落ちる。 僕は自分の傘を少しかやまへ寄せた。
はせがわ
かやまは僕を見る。
それだけで、 少し安心したみたいな顔をする。 僕は胸の奥が重くなる。 かやまがぽつりと言った。
かやま
はせがわ
かやま
僕はイライラした
はせがわ
かやまは俯く。 濡れた前髪が目へかかる。
かやま
雨音。 車の走る音。 僕は何も返せない。 かやまが続ける。
かやま
その言葉が、 妙に喉へ引っかかった。
こにし
後ろから声がする
こにしだった。 コンビニ袋を提げている。 髪が雨で濡れていた。
こにし
こにしは笑う。 でも、 空気の悪さにはすぐ気づいたらしい。 笑顔が少しだけ曖昧になる。 僕は誤魔化すみたいに言う。
はせがわ
こにしはかやまを見る。 かやまもこにしを見る。 どっちも笑っていない。 雨だけがうるさい。 こにしがため息をついた。
こにし
コンビニ袋を持ち直しながら言う。
こにし
僕は反射的に否定する。
はせがわ
でもかやまは何も言わない。 こにしは苦笑する。
こにし
はせがわ
こにしは少し迷ってから言った。
こにし
空気が止まる。 かやまの表情が消えた。 僕の喉が強く詰まる。 雨音だけが響く。 こにしは苦笑したまま続ける。
こにし
視線が僕に向いている。
その瞬間。 かやまがこにしの腕を掴んだ。 強く。 こにしが顔をしかめる。
こにし
かやま
僕は初めて、 かやまを怖いと思った。 本気で。 かやまの目が、 壊れそうなくらい暗かった。
こにしが腕を振り払う。
こにし
僕は慌てて間に入った。
はせがわ
かやまは僕を見る。 その目だけで、 胸が締めつけられる。 捨てられそうな犬みたいな目。 でも同時に、 何か壊れたみたいな目。 こにしが舌打ちする。
こにし
背を向ける。 でも途中で止まった。 振り返らないまま言う。
こにし
雨が強い。 こにしの声だけが妙にはっきり聞こえた。
こにし
沈黙。 かやまの呼吸が止まった気がした。 僕は何も言えない。 言い返せなかった。 かやまが、 僕の制服の袖を掴む。 冷たい手。 震えている。 僕は振り払えなかった。
深夜二時。 僕は結局、 かやまと一緒に歩いていた。 雨の川沿い。 街灯が水面へ揺れている。 二人とも無言だった。 かやまは僕の少し後ろを歩いている。 捨てられないように、 ついてくるみたいに。 僕は頭がぐちゃぐちゃだった。 悠真の言葉が離れない。 『そいつといると壊れるよ。』 その通りかもしれない。 なのに。 かやまを一人へ戻す想像をすると、 胸が痛かった。 橋へ辿り着く。 川が黒い。 雨で流れが速い。 その時。 後ろから足音。 こにしだった。 息を切らしている。
こにし
僕は目を見開く。
はせがわ
こにしは乱暴に髪をかき上げた。
こにし
かやま
こにしが睨む。 空気が最悪だった。 雨だけが降っている。 こにしは僕を見る。 真っ直ぐ。
こにし
かやまの手が、 ゆっくり僕の服を掴む。 こにしが続ける。
こにし
僕は何も言えない
かやまの手が震えている。 こにしの目は真剣だった。 橋の上。 雨。 逃げ場がない。 その時。 かやまが小さく言った。
かやま