あれは、まだ、徳川様が将軍だった頃じゃ この村に梅子という女がおった 梅子は、旦那に騙され家ごと捨てられた それから梅子は毎日毎日藁人形で打ち付ける毎日じゃった
それから、旦那だった男が大病を患い、生死を彷徨っとると聞いてたいそう喜んだ 川に藁人形を流した その藁人形が、人の形に成り変わったら、それが河童になったのじゃ
河童たちの中には気性が激しい者や、ゆっくり暮らしとるやつも居たもんじゃ、その中で一番力が強くて一番ゆっくりなのが、草六じゃった 草六は、キュウリを噛るのが好きじゃった
伝丸という若い男が、その草六と相撲をしにきた 伝丸は、村一番の相撲取りじゃった 草六という河童がどれだけ強いか、相撲をとりたかったのじゃ
伝丸は、意外に強い草六に苦戦を強いられた だから、「あれはなんだ!」と気をそらし、伝丸は勝った
これに憤慨したのが河童達じゃった 河童は、伝丸に詰め寄り、尻子玉を抜き取り、その代わりに藁を尻に詰めて、川に流した
伝丸は、死体となり、村に帰っていったとさ、おしまい
これが、祖母の三宅睦子からよく聞かされた村の河童伝説だった。
三宅美咲
うぅん
高下隆美
ゆっくりでいいからね
三宅美咲
はい
三宅美咲(みやけみさき)、刑事
先日、村田長二(むらたちょうじ)というカメラマンが、大量の藁人形と一緒に磔にされて死亡した
しかも、身体には「河童伝説」と傷があった。
島田寛太
どう?
三宅美咲
一応書けました
島田寛太
うん、課長に持ってく
三宅美咲
ありがとう
奈良岡八郎
ふむ、それにしても、なんだってこんなマニアックな話を見立て殺人したのか、全く分からんな
島田寛太
ですね
島田寛太
あ、村田長二なんですが
奈良岡八郎
あぁ
島田寛太
蟹吉村ってところの村長、藤村久佐士(ふじむらくさし)という男と会っていたようです
奈良岡八郎
なんで、また?
島田寛太
雑誌の記者、岡部公之(おかべきみゆき)と同行していたと
奈良岡八郎
その岡部は?
島田寛太
彼も行方不明です
奈良岡八郎
まあ、仕方ない、引き続き調べていこう
木坂剛蔵
なんだ、こんな所に呼び出して
木坂剛蔵
まさか、河童の宝が見つかったのか?
???
…
木坂剛蔵
おい、なんとか言えよ
???
ふん
深々とナイフが、木坂の腹部に刺さった
木坂剛蔵
がっ、な、なにしやがる、て、めぇ
???
コソッ
木坂剛蔵
なっ!?
木坂剛蔵
あ、あんだが、あの、ガクッ