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田中 蒼子
肺の中の空気が全部抜けていくほどに大きなため息をつく。
ため息は形を成すこともなく、周りの暗さに溶けていった。
田中 蒼子
体中におもりがついているかのように、 ただひたすらに重い。
精神的にも肉体的にも大分疲れているのがよくわかる。
田中 蒼子
(…「アイツ」呼べるかなぁ……)
そう思い、近くの電柱に駆け寄る。 淡い期待のせいか鉛のように重い体もいくらかは動かせる。
田中 蒼子
3回、心の中で呟き目を瞑る。
田中 蒼子
田中 蒼子
田中 蒼子
ゆっくり口に出して10数える
田中 蒼子
そおっと目を開く。
電柱の灯りによってできた影が私を見つめる。
影
影
影
影
私には友達がいない。
小さい頃から人と話すことが苦手で全く友達が出来なかった。 話すことが苦手なのはずっと続いていて、そのせいで何年も友達といえる友達はいたことがない。
田中 蒼子
親には迷惑かけたくないから友達はいると言ってる。 たまに遅く帰っては「友達と遊んでた」なんて嘘をつく。
影
たくさんの人に嘘をついているから、 自分を隠しているから、 自分を助けてはくれない。
田中 蒼子
でも、「影」だけは、何も言わなくても、 私の気持ちをわかってくれる。
影
田中 蒼子
影
影
影
小さい頃からずっと、私だけの味方だ。
田中 蒼子
田中 蒼子
影
影
田中 蒼子
田中 蒼子
田中 蒼子
田中 蒼子
田中 蒼子
影
電柱の下で、私は泣いた。 声を殺して。
影
涙が頬を伝い、冷たいアスファルトに丸いシミをつくる。
影
「影」にも涙が落ちる。
「影」は何も言わずにただ、ただ、 そこに居た。