星野
星野
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星野
注意 ※VVT様のnmmn二次創作です ※ご本人様方とは一切関係ございません ※公の場での公開、共有等はおやめください 以上をご確認の上、大丈夫な方のみご覧ください
sm×kn 初めて
kn
sm
そう告げて、彼は外へと出た。
先程まで埋まっていたソファの隣が空き、少しだけ違和感がある。
気のせいだろうと思い、気を紛らわす為にも手元の本を再び開く。
普段あまり読まない恋愛小説は、甘ったるい言葉がずっと並んでいて味わいにくかった。
でも、心のどこかで羨ましく思う自分もいた。
普通で、でもどこか不思議な女を振り向かせたいが為に空回り翻弄される男の話。
付き合ってもいないのに手を繋がれたりして振り回されている。
手を繋いだ時の感情が緻密に表現されているようだが、俺にはまだ理解できない。
経験がないから。
付き合っているのに抱き合ったことも、手を繋いだことすらもないから。
年齢のせいで、というわけではない。俺が嫌というわけでもない。
ただ、俺が彼とうまくコミュニケーションが取れないだけだ。
読んでいる本の主人公と同じ。不器用で、いつも彼に翻弄されて。
手を繋いだことがないという経験の欠如と関係性の違い以外、何も変わらない。
sm
感情がわからないまま、1人ため息をこぼした。
そりゃ手だって繋ぎたいし、恋人らしいことだってしたい。
当時のありったけの勇気を使って俺から告白したのに、今でも外出はデートというより友人間での遊び。
彼は何も気にしていないように見える。だが見えるだけで、本当は情けない奴と思っているのかもしれない。
頭を抱えながら、お得意の余計な思考を巡らせる。
その状態で時間など、気にするわけがなかった。
kn
sm
思っていたよりも彼は早く帰ってきたようだ。
kn
sm
kn
1人頭を抱えている現場を見られてしまい、笑いながらも怪しむような顔を向けられた。
袋から菓子類やらジュースやらを取り出し、ソファ前のテーブルに置いた。
おかえりとも何も言えず、なんとなく本の表紙を隠した。
彼はまた俺の隣に腰掛けて、何をするでもなくテレビをつけた。
バラエティ番組だろうか。初恋がどうやら〜など言い、テレビが騒がしかった。
kn
何かを思うように呟いた彼。
彼にも初恋がいたのだろうか。そう考えると何故か頭が痛くなる。
学生時代に、一度だけ聞いた。
彼の、初恋相手を。
彼は教えてくれなかったが、少なくとも俺ではないよなぁと夢は捨てた。
今はこうして隣にいるが、恋人という要素は未だに少ない。もう1年と半年も経っているというのに。
kn
sm
恥ずかしい思考がバレないように、表情だけでも取り繕った。手は少しだけ震えたままだった。
テレビでは恋愛の話は終わっていて、ゲストのアスリートが試合の裏話について熱く語っていた。
kn
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テレビの内容には似合わない、小さく震えた声。
そういうこと、とはどういうことなのかあまり理解できなかった。
気まずそうに彼は俺を見つめていた。
sm
申し訳ないが濁されてはわからなかったので、彼の口から引き出すことにした。
kn
kn
呆れるような声が彼の口から漏れた。彼の耳は何故か赤かった。
kn
kn
kn
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普段から、俺を翻弄する彼とは思えないぐらい弱い声だった。
掠れた声が、俺の口から漏れてしまった。
俺の顔はきっと、とんでもないくらい間抜けな顔をしているだろう。
kn
sm
しどろもどろになりながら、自分の言いたいことをまとめるのに必死だった。
そりゃ、そういうのに興味がなさそうだった彼に急にそんなことを聞かれたら動揺するに決まっている。
混乱して、脳が悲鳴をあげている。
ようやくまとまった思考を、彼にぶつけることにした。
sm
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迷惑、というよりも勇気がないの方が近かったが、嘘はついていない。
kn
今までに見たことのないくらいに甘い顔で、俺の腕に引っ付いた。
唐突の出来事で頭が回らず、体が固まった。
いつもの男らしさの面影はなくて、艶やかな目をした恋人だけがいた。
sm
平常心を保っているふりをして、彼に問いかけた。
kn
sm
黙ってテレビを消して、彼の目を見た。何かを期待しているような目だった。
sm
心臓が鳴り止まなかった。
どくどくと血液が送り出されて、耳まで血が巡る感覚。
腕だけとはいえ、彼に抱きつかれたのはきっと今日が初めてだ。
緊張、嬉しさ、興奮。
その他諸々の感情が混ざって溶けて、切れかけの理性をなんとか繋ぎ止めていた。
sm
kn
sm
そういうわけじゃない。 むしろ、俺は__
sm
心の準備、まだなんだよ。
顔に体中の全ての熱がこもって、目を合わせられなかった。
kn
彼は俺を驚いたような顔で見つめた後、憎らしいほどの笑顔で笑い飛ばした。
kn
sm
無性にイラついて、彼の体を突き放してしまった。
しばらく見つめあってから、根負けしたふりをして彼に擦り寄った。
kn
sm
何も言わずに、彼の手を力強く握った。少し骨張った彼の指と俺の細い指が少しずつ絡んでいった。
sm
kn
kn
自分の置かれている状況に気がついたのか、彼は顔を赤くして目を逸らした。
kn
kn
いつもよりも余裕がないように見えて、心臓が酷く痛かった。
そして、彼が俺の思っているよりも普通の人間で、純粋で、普通の恋人であることに気がついた。
1年半気が付かなかった俺が馬鹿馬鹿しかった。
今まで見たことのない反応を見るのが楽しくて、少し遊びたくなった。
sm
kn
ふん、と鼻を鳴らす彼が愛おしかった。こんな表情もするのかと、少し意外だった。
空いている手で頰を撫でた。こんなにキスしたいと思ったのは初めてだった。
でも今ここでそれをしたら、先程格好つけてあんなことを言ったのが無駄になると思い、やめた。
kn
物足りなさげに俺を見つめていた。
sm
逃げるようにして台所へ向かった。
不思議と、俺の中に謎の余裕が生まれていた。
…本当に抱き潰したら、どうなるのだろうか。
なんて、不器用な俺はまだ行動に移せないけど。
それでもいい。
ちょっとずつ、堕ちていけば良いだけの話だ。
sm
遠くから少し幼く見えるようになった彼を見てから、コーヒーの入ったポットを手に取った。
テーブルにあった小説はきっともう読まないだろう。
だってもう、憧れなくて良いのだから。
星野
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