テラーノベル
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💙『君のポケットの中に、僕がいるように』🌷
八月の終わり、空が少しだけ秋に近づいているのがわかる日。 えとさんが「屋上行こう」って言うから、 僕は少し歩幅をゆるめて、その隣に並んだ。
病院の屋上は、日中は暑いのに、夕方になると涼しい風が通る。 風が吹くたび、えとさんの髪がさらりと揺れて、僕は思わず目で追ってしまう。
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そう言って、えとさんはポケットから、小さな箱を取り出した。 開けると、そこには青と白のビーズが交差する、手作りっぽいキーホルダー。
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えとさんは胸ポケットから同じものを取りだして、 ふっと笑った。
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僕はキーホルダーを手に取って、そっと握った。 その温度は、えとさんの手と同じくらい、温かかった。
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でもそれだけじゃ、終われない気がして。 僕も、ポケットから一枚の手紙を取り出した。
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えとさんの目がふわっと潤んで、でも涙じゃなくて、笑ってくれた。
ふたりでベンチに並んで、背中合わせで手紙を読みあった。 文章にしないと伝えられないことが、たくさんあった。
“君といる時間が、僕にとって生きてる意味なんです”
そんな僕の文字を、えとさんは読みながら、 ページの角をぎゅっと指で握っていた。
読み終わった後、どちらからともなく、静かに顔を向けあった。 夕陽がゆっくり沈むのと一緒に、心の中のなにかが溶けていくみたいだった。
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僕は、手にぎゅっと握っていたキーホルダーを見つめながら、言った。
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えとさんが、顔をこちらに向けた。 その目にはさっきの涙の余韻がまだ残っていて、 それでも、僕の言葉をちゃんと受け止めようとしているのが伝わった。
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そのときだった。
屋上の扉が急にガチャッと開いて、強い風が吹き抜けた。
三宅
階段の上から、三宅さんの声。 続いて、看護師さんがもうひとり、慌てた様子で駆け上がってきた。
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えとさんは驚いた顔をしながらも、すぐに 立ち上がって微笑んだ
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僕は言葉をのみこんだ。 せっかく心の奥から出しかけた「好き」が この風にかき消されていった。
そのまま、何も言えずに、僕はえとさんと並んで、 屋上をあとにした。
ポケットの中で、さっきもらったキーホルダーが、 小さく、でも確かに揺れていた。
🍂『秋風と、もうすぐのこと』🌷
病室の窓から見える木々の葉が、少しずつ色を変え始めていた。 ついこの前までの、蝉の声と白い陽射しが、まるで夢みたいだった。
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えとさんが僕のベッドに腰かけながら、カーディ ガンの袖を指でくるくる回していった。
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僕が笑うと、えとさんはむっとした顔をして、 枕で僕の腕をぽすっと叩いた。
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えとさんは一瞬、黙った。 そして目をそらして、窓の外を見た。
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その言葉に、胸が少しだけ痛んだ。
ーー僕も、同じことを考えてたから。
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えとさんは言葉をつづけた。
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僕は一瞬だけ視線を落として、えとさんの小さな肩を見た。 夏より少しだけやせた気がして、無意識に手を伸ばしそうになる。
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僕が言うと、えとさんは「ふふっ」って笑って、 そっと自分の手を僕の指にからめてきた。
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カレンダーのページがまた一枚、めくられる。 あと何枚めくれるかなんて、誰にもわからないけど。
ーーこの秋も、えとさんと過ごせるなら、 それでいい。
🍡『お団子と、ふたりの影』🌷
その日の夜は、雲ひとつない空だった。 まあるい月が、病院の屋上を優しく照らしていた。
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えとさんが笑って、僕の横にちょこんと座る。 秋の夜風は思ったより冷たくて、自然と肩が近づいた。
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そう言ってえとさんが取り出した小さなお皿の上には、かわいい三色団子。 どこかの誰かが見たら「地味だな」って笑うかもしれないけど、僕には、この夜がちょっと特別に思えた。
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ぼそっと呟いた僕の言葉に、えとさんがちらっと横目を向けた。
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えとさんがむくれながら団子を口に運ぶ。 その仕草が可愛くて、僕はまた黙って笑った。
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僕が団子を一つ手に取ろうとしたとき、えとさんが 持ってた串をそのまま口元に差し出してきた。
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しらばっくれてるその顔が、月明かりでほんのり赤く見えた。 僕は目を細めて、そのままお団子にかぶりついた。
甘くて、やわらかくて、ほんのちょっとだけ、えとさんの指がふれた気がした。
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えとさんが月を見上げながら言った。 その声が風の音にまぎれて、すこしだけ震えて聞こえたのは気のせいじゃないと思う
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えとさんのその言葉に、「最後」って言葉が引っかかったけどーー 今は、目の前の月と彼女の横顔がすべてだった
静かな屋上に、ふたり分の影が並んでいた。
🎃『そのイタズラ、僕が先にするよ』🌷
病院のプレイルームが、見違えるほどににぎやかになっていた。 ガーランドやかぼちゃのランタン、壁に貼られた手作りのおばけたち。 看護師さんたちが頑張ってくれたらしく、ちょっとしたお祭りムードだ。
えとさんの姿を見た瞬間、言葉が少しだけ遅れて出た。
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それでも、えとさんは照れて笑った。 白と淡いピンクが混ざったドレスに、きらっと光るティアラ。 病院の蛍光灯の下でも、ほんの少しだけ魔法にかかったみたいに見えた。
そして、えとさんはいたずらっぽく目を細めて、 僕の方に一歩、近づいてきた。
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僕は、ゆっくりとえとさんの手をとった。 あたたかくて、ちょっとだけ細い指先。
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ほんの数秒だけ、えとさんがきょとんとしていた。
そのまま僕は、王子様の仮装にふさわしい“儀式”を、この場でちゃんと果たした。
ーーえとさんの手の甲に、そっと口づけを落とす。 一瞬、えとさんの呼吸が止まった気がした。
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顔を赤くして視線を逸らすえとさんが、ほんとうに、どうしようもなく可愛かった。 どんなお菓子よりも甘いのは、僕が今イタズラしたこの空気だった。
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🧡『……ずるいよ、なおきりさん』🍫
お菓子交換で手に入れた袋の中に、まんまるで可愛い飴が入ってた。 ラッピングもキラキラしてて、ハロウィン限定ってかんじ。
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そっと口に入れてみた瞬間、あ、って思った。
なんか、思ってたのと違う味。 苦手ってほどじゃないけど、好きじゃない……うーん……ってやつ。
「どうした?」って隣でなおきりさんがのぞきこんでくる。
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そう言いながらも、捨てるのはもったいなくて、舐めたり止めたりを繰り返してるとーー
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って声と同時に、なおきりさんの手が私の頬をやさしく包んできた。
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驚いて目を開いた瞬間。 あったかい唇が、わたしの唇にふわっと重なった。
一瞬、時間が止まったみたいだった。
口の中の飴が、なおきりさんの口へとそっと移されて、 彼はそのまま、にこっと笑った。
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なにそれ。なにそれ。なにそれぇぇぇ……っ!!
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顔から火が出そうなくらい、真っ赤になってるのが自分でも分かる。 ドキドキが止まらなくて、混乱して、恥ずかしくて、
でもちょっと、嬉しかったりもして……
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私がつぶやくと、なおきりさんはちょっといたずらっぽく笑った。
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その笑顔を見たら、もう怒こる気も失せた。 だってずるいくらい、かっこよかったから。
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こっそり、心の中でだけそう呟いた。
飴一粒で、私の胸の奥にあった気持ちが、とけてしまいそうだったーー。
コメント
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ほんとに尊すぎますこの物語、🫶🏻︎ 1人でめちゃにやけて ますもん、笑 続き楽しみにしてます ! !