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蘭side
夏休み最初の週末は 慌ただしく始まった。
前日の夜は変に緊張して 寝付けずようやく熟睡できた頃には 目覚ましが鳴っていた。
記憶はそこで途切れ、 再び目を覚ました時には 待ち合わせの1時間前だった。
桃瀬らん
桃瀬らん
私は鏡の前で試着を 繰り返しながら一向に決まらない 組み合わせに頭を抱える。
桃瀬らん
あの後奈唯心くんから届いた LINEには私が大ファンである 漫画家のサイン会への誘いが 書かれていた。
場所は遊園地でも水族館 でもなく当然のように 都内の大型書店だ。
行き先はどこになるのかと そわそわしていた分 LINEを受け取った直後は 呆気に取られてしまったが 憧れの漫画家に会えるという 事実に一気にテンションが上がった。
すぐに私もサイン会の予約に走り 今日この日を迎えたのだった。
桃瀬らん
桃瀬らん
足元に積まれた服の山から 桃色のシースルーシャツを 拾いあげる。
以前幼馴染4人で出掛けた時 ノリと流れで試着してみたら 好評だった為買った物だ。
桃瀬らん
白色のチューブトップと 膝上のスカートを一緒に 部屋着の上から合わせて 全身鏡の前に立つ。
桃瀬らん
桃瀬らん
我ながら単純だなと苦笑いしながら 私は部屋着に手をかける。
桜黄みこと
不意に美琴の言葉が蘇り 思わず手が止まった。
桃瀬らん
当の奈唯心くんはそうとは 言わなかったし行き先も 漫画家のサイン会だ。
いくら共通の趣味だからと いってデート先には選ばないだろう。
そもそも告白されたことも ないのだから考えすぎにも程がある。
... ピピッ!ピピピッ!
思考を遮るようにベットに 置きっぱなしにしていた スマホが鳴り響いた。
桃瀬らん
慌てて駆け寄り時間を確認すると 待ち合わせまで30分を切っている。
迷っている暇はない。
ぴしゃりと両手で頰を叩き 私は潔く部屋着を脱ぎ捨てた。
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