水side
教師
無事に夏休みテストを受けることができた僕は、先生から自分の名前が呼ばれるのをただジッと待っていた。
今回いふくんに教えてもらった範囲は当たり前だがどれもテストに出て、なんとなくだが解くことが出来た気がする。
たとえどんなに点数が低くても、赤点が回避できれば・・・・・・!
周りの子たちが次々と返されていって__その次、初兎ちゃんが呼ばれる。
教師
いよいよ僕の番が来た。
昂る鼓動を胸に手を当て宥めながら、先生からテスト用紙を受け取る。
実際は一枚の紙切れなのに、これだけ重く感じるのは僕が胸の中でどこか不安を抱えているからだろうか。
ゆっくりとテスト用紙を裏返す。
そこに書かれていた点数は__
青side
ないこ
高校の授業も終わり、俺と共に帰宅したないこは家に入った瞬間、挨拶と自分の感情をほぼ並列的に言い放った。
りうら
リビングから大きめのスウェットを着たりうらが、ないこの方へ駆け寄ってくる。
ないこは「ただいま!」ともう一度言うと、両手を広げてやって来たりうらをギュッと抱きしめた。
悠佑
今度はアニキが顔を覗かせる。
悠佑
ないこ
最近外から帰ってきた後風呂に入るのがマイブームとなったないこは、りうらをバックハグの体制に変えて風呂場へ直行する。
俺はその様子は苦笑して見送りながら、ふといつもならリビングからででくるはずの双子が、 いない事に気がついた。
りうらがいるなら、 あの二人もおるはずやねんけど・・・・・・どこ行ったんやろ。
「まぁ、どうせすぐ出てくるやろ」と自問自答をして、自分の部屋にバッグを置きに行こうと二階へ上がる。
自分の右足が二階の廊下に乗っかった時、俺の部屋の隣__ほとけとしょにだの部屋からしょにだが出るところとすれ違った。
初兎
話し始める時に何か言いたげな雰囲気を出したしょにだだったが、笑顔で部屋の扉にもたれかかる。
だがその笑顔は少し暗くて、 口元と目元は笑わせていても眉は下がっていた。
いふ
なんだか直感で嫌な気配がした俺は、しょにだに未だ姿を見ていない弟の名を問いかける。
するとしょにだはピクリと反応し、俺に言いにくそうに視線を泳がせた後、ため息を吐いて言った。
初兎
右手の親指で自分の背後の扉を指したしょにだは、俺に自分の部屋に入るよう命じると「いふくんの部屋の中で話す」と俺の目の前を通り過ぎた。
珍しく静かな廊下で突っ立っていた俺は、多少の疑問を持ちながらもしょにだの後に続いて部屋の中に入る。
部屋の中に入ると、許可も出していないのに俺のベッドに腰かけるしょにだがいた。
俺はバッグを置いて、自分が羽織っていたブレザーを脱ぎネクタイを外す。
完全にプライベートの服と化した制服を纏い、しょにだをジッと見下ろすと視線も合わせずに彼は呟いた。
初兎
しょにだが一階に降っていったのを確認して、俺は一呼吸置いた後隣の部屋をコンコンとノックする。
いふ
弟の名前を呼んでも中から返事は無かった。
いふ
ほとけ
仕方なく相手の同意もなく、部屋のドアノブを捻って開けると、部屋からほとけが焦るような声が聞こえてきた。
電気も付いていない部屋の端っこに__制服も着替えずに壁に寄りかかって膝を抱えるほとけがいた。
いつもの笑顔ではない、 辛そうな表情。
心なしかあの元気なオーラも、今だとドス黒い真っ暗なものに見えてくる。
ほとけは・・・・・・少し触れると泣いてしまいそうな、そんな顔をしていた。
いふ
ほとけは俺の言葉にキュッと唇を噛み締める。
__しょにだから聞いた話。
ほとけはこの一週間で、 彼の限界まで行くぐらいの勉強量と時間を費やした。
だが残念なことに テストの結果は赤点。
何問かのケアレスミスだったり、単語の意味を勘違いしていたりとテスト勉強の経験で差が出てしまう場所の間違いが多かったらしい。
夏休み明けテストだから補修はないとの話だったが、どんなに頑張っても出来なかった自分に対しての嫌悪感が溢れている、とのことだった。
ほとけ
ほとけは片手に持つ、テスト用紙らしき紙をグシャッと握りしめる。
そして気持ちを吐き捨てるように、抑揚のない声で言った。
ほとけ
ほとけ
「僕はもう駄目だ」とでも続きそうな話し方で、ほとけは自分の膝を抱える腕の力を強める。
俺は小さくため息を吐いて、ほとけの隣にストンと胡座をかいて座った。
ほとけがチラリと俺を横目で見る。
いふ
ほとけ
独り言のようにポツリと呟いた言葉に反応して、ほとけは首を傾げながらこちらに視線を移す。
俺は「だから」とわざと強調するように言って、ゆっくりと言葉を紡いだ。
いふ
いふ
ほとけ
「何を言ってるのかわからない」と言いたげなほとけを横目で見下ろしつつ、続けた。
いふ
いふ
いふ
ほとけ
意外だ、と驚くようにほとけは顔を上げる。
俺は「そうだったんよ」と過去を見つめるような遠い視線で、懐かしい気持ちになりながら言った。
いふ
いふ
ほとけ
いふ
そう言いながら彼の頭を撫でると、照れながらも驚いたような表情で俺の瞳をジッと見つめた。
いふ
それだけでもええんよ、と優しく言い聞かせる。
いふ
いふ
いふ
いふ
もう一度優しく頭を撫でてやると、一気に心の中に溜まっていたものが溢れ出るように、ほとけの瞳から涙が溢れた。
嗚咽をこぼしながらも、泣き続けるその姿を安心させるように何度も「頑張ったな」と声をかける。
ほとけ
ほとけ
ほとけ
全てを出し切るように早口で嗚咽混じりに叫ぶほとけの体を、俺はギュッと抱きしめた。
いふ
いふ
再び大きな声で泣き始めたほとけの背中を撫でたり、声をかけたりしてしばらくの時間を過ごす。
たまたまポケットに入っていたハンカチを渡すと、ほとけは鼻を啜りながらもだいぶ涙が収まってきていた。
ゴシゴシと制服の袖で目を擦ると、ギュッと目を瞑ってパチリと大きな目を開ける。
そして頬をペチンと両手で叩くと、「よし」と声を出して笑顔を作ってみせた。
ほとけ
俺は目を細めていつもみたいな元気な声でそう言ったほとけの頭から手を離し、 床から立ち上がった後に彼へ言う。
いふ
ほとけ
いふ
普段なかなかそんな事を言わなそうな俺が協力的な言葉を口に出した事に驚いているのか、目を見開いて俺の顔をジッと見つめるほとけ。
なんだか恥ずかしくなって「やめろよ」と顔を隠してみれば、ほとけはまたニコリと笑って言った。
ほとけ
ほとけ
__この日から時々どちらかの部屋の中で、一緒に勉強している二人が見れるようになるのはまた別のお話。
コメント
1件
いいなぁ… めっちゃ好き こういうの好き… やっぱ青組って仲良いよね