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夏都side

そこまで考えて俺は再び項垂れた。

不分相応なことは願わないと言い訳 しながら最低なことを願っている。

間違っても誰かに心の内を 聞かれるわけにはいかない。

赤暇なつ

( ... 俺って、ちっせぇな ... 、、)

他人と自分を比べても意味がないのは 分かっているが奈唯心の行動を 思い起こせばどうしたって 自嘲的な笑みが込み上げてくる。

ピ、ピピーッ!

それ以上考えるのを遮るように ホイッスルが鳴り響いた。

第一試合が終了し 次の試合の準備が始まる。

威榴真と澄絺が審判から選手に 交代する為にゼッケンを替え サークルに並んだ。

紫龍いるま

夏都ー、早く来いよ

紫龍いるま

今日こそ澄絺を負かしてやろうぜ

春緑すち

それはこっちのセリフだよ、

春緑すち

威榴真ちゃんには一点も入れさせないからね?笑

前哨戦を始めた幼馴染2人に 俺は軽く手をあげて応える。

赤暇なつ

( ...... ごちゃごちゃ考えるより、今は体動かすか ... )

無理矢理意識を切り替え 太陽に熱せられたピッチへと 入っていった。

実力が互角の澄絺と威榴真を 主力として両チームがぶつかり合い なかなか点が入らない。

決定打がないまま前半戦が進んでいき まもなく後半戦に突入するところだ。

赤暇なつ

(おー、またパスカット。威榴真今日も絶好調やん)

DFとして後方で守備につく俺は 頼もしい味方の背中に目を輝かせる。

迎え撃つ澄絺も視野の広い動きで カバーしているが思いがけない 動きをする威榴真を相手に 手を焼いてるのが分かる。

桃瀬らん

>恋醒、そのまま動かないでね ...... っ!

雨乃こさめ

>らんちゃん、すごぉいっ!✨

テニスも次の試合が始まったようで 恋醒の弾んだ声が聞こえてきた。

恋醒とダブルスを組んだ蘭が その抜群の運動神経を発揮し 上手いことフォローしているようだ。

恋醒も蘭を信用して深追いせず 息のあったプレイで相手を 翻弄している。

赤暇なつ

(運動はあんま得意じゃないみてぇだけど、恋醒は手を抜かないんだよなぁ ... )

その一生懸命さが眩しくて自分の 試合を他所につい目で追ってしまう。

春緑すち

ひまちゃーん、上!上ー!

紫龍いるま

おーい、避けろよー!

赤暇なつ

...... え、?何を ...

澄絺と威榴真の声にぼんやりと 反応した矢先それは降ってきた。

赤暇なつ

ぐぁっ ... !

空を見上げた瞬間見事にボールが 俺の顔面に飛び込んできた。

鼻に衝撃が走りバランスを崩して その場に尻餅をつく。

目の奥がチカチカして 勝手に涙が出てくる。

赤暇なつ

(ダサい、流石にこれはダサい ... っ、)

周囲からはワッと爆笑が巻き起こり 離れたテニスコートにいる 女子達の声も聞こえてきた。

これだけ騒がしければ恋醒にも 知られてしまったに違いない。

赤暇なつ

(好きな奴に見惚れて、ボール食らうって ...... )

流石にゴールを決めることは 出来なくてもパスカットをするとか FKを弾くとかもっとそれなりに 見せられるシーンがあったはずだ。

赤暇なつ

(きっと罰が当たったんだ ... )

赤暇なつ

(好きな人に、好きな人がいなければいいのになんて ... っ、)

ますます涙腺が緩んできて 俺は手で目元を覆い隠した。

威榴真達には全部見られていたのか どことなく明るい声が降ってくる。

紫龍いるま

顔面ブロックくらいで泣くなよ 笑

横暴にも聞こえるけど威榴真の 真意は分かっている。

俺が泣いたのはボールが 当たって痛いからだと周囲に アピールしてくれてるのだ。

春緑すち

うん、ナイスプレイだったよ!

澄絺もさりげなくフォローに入り 威榴真が苦笑しながら 手を差し伸べてくる。

俺は一瞬迷ったが素直に その手を取ることにした。

赤暇なつ

... ありがと、

紫龍いるま

気にすんなって。にしても、意外と重いな ...

紫龍いるま

これは1人じゃ運びきれんかも

赤暇なつ

(ん?運ぶ?)

春緑すち

...... 担ごっか

赤暇なつ

(ん?担ぐ?)

頭上で繰り広げられる 威榴真と澄絺の会話に イヤな予感がする。

確かめるのも怖いがここで 流してしまったら後で 何をされるか分からない。

これまでの経験が出す警告に従って 俺は怖々と尋ねてみる。

赤暇なつ

あの、さ ...... 、運ぶとか担ぐとか、何の話してる ... ?

威榴真/澄絺

夏都だろ/ひまちゃんでしょ

2人の声が重なった瞬間俺の身体は ふわっと浮かび上がっていた。

上半身を澄絺が、足を威榴真が支え 「ブーン」と効果音を真似た声がする

赤暇なつ

(こ、この体勢は、子供の頃によく遊んだ飛行機ごっこ!?)

当時はただただ楽しんでいたが 今や俺も高3だ。

呆然と3人を見守っていた クラスメイト達がドッと 笑い声をあげる。

m o b .

やべぇ、夏都号が運ばれてく 笑笑

m o b .

アレ俺にもやってくんね?笑笑

男子の冷やかしに 俺は唇を噛み締める。

赤暇なつ

(くっ、おかしな注目浴びちまった ... )

いたたまれなくなって視線を逸らすと 顔面に直撃したサッカーボールが テニスコートの方まで 転がっていくのが見えた。

ようやく回転が止まったボールを 細くて綺麗な指が持ち上げる。

赤暇なつ

(こ、恋醒 ... !?)

この距離だ、目が合うはずはない。

頭では分かっていても 俺は反射的に目を逸らす。

もしも恋醒の顔に呆れの色が 浮かんでいたら立ち直れそうにない。

赤暇なつ

... あのボール、羨ましい ...

ポロリと本音がもれた。

未練がましい呟きは誰かの耳に 届く前に威榴真と澄絺の靴音に かき消される。

そのことにほっとしながらなんとも 言えないモヤモヤが胸の辺りに漂う。

赤暇なつ

(マジで、かっこわる ... )

午後から天気が崩れるのか仰いだ空に 入道雲が出来始めている。

青と白の鮮やかなコントラストに 無性に胸が締め付けられた。

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