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第1話 - あ

2023年07月25日

#恋愛

結城真矢

マサトモ

セイヤ君、娘と離婚するというのは本当かね？

セイヤ

はい。こんなことになってしまってすみません

セイヤ

短い間でしたが、お世話になりました

マサトモ

馬鹿者！！お前ごときが娘に離婚を切り出すなど、何事だ！！

マサトモ

お前があれほど熱心に「娘さんを下さいと頼むから、」

マサトモ

結婚を許してやったのに…

セイヤ

ちょっと待ってください！ユメから理由は聞いてないんですか？

セイヤ

離婚理由は、ユメの浮気ですよ

マサトモ

聞いてるよ。でもそれが何だ？

マサトモ

男なら、一度の浮気くらいは許すべきだろう。器が小さいんじゃないのか？

マサトモ

誰にだって過ちはある。許し合って乗り越えていくのが夫婦だろう

セイヤ

そんな！逆だったら許せるんですか？

セイヤ

浮気したのが僕の方だったら…

マサトモ

許せるわけないだろう！！大事な娘をくれてやったのに、

マサトモ

娘を裏切って浮気するなど、万死に値する！！

セイヤ

だったら、僕の気持ちもわかりますよね！？

マサトモ

お前とユメを一緒にするな！

マサトモ

安月給の冴えない男と、美人で気立てのいい俺の愛娘は釣り合わないんだよ！

マサトモ

だいたい、こんなに美人の娘なんだ。他にも男が寄ってくることくらいわかっていたんだろう？

マサトモ

なら、魔が刺してその男と過ちを犯してしまうことがあってもおかしくないじゃないか

マサトモ

それだけの覚悟もなかったのか、呆れるよ

セイヤ

そうですね。僕はユメとは合わなかったようです

セイヤ

他にユメを幸せにできる男を探してください

マサトモ

そうやって無責任に逃げる気か！

マサトモ

可哀想に。ユメはずっと泣いてるよ

マサトモ

愛しているのはお前だけだと、お前がいないと生きていけないと…

マサトモ

お前なんかのために、健気に謝ってるんだ！

マサトモ

愛した女をこんなに泣かせて、お前は何も思わないのか！

セイヤ

思いませんね。「そんなに泣くなら浮気しなきゃよかったのにとしか」

マサトモ

なんだと！？娘がこんなに反省して謝ってるのに、それでも許さないお前は鬼か！！

マサトモ

その上慰謝料まで請求してるそうじゃないか！

マサトモ

俺が払ってやるが、娘を捨てる上に金まで請求するなど…血も涙もないのか！

セイヤ

当たり前ですよね。ユメの方に非があるのですから

セイヤ

お義父さんに何を言われても、俺の気持ちは変わりませんよ

マサトモ

生意気な！大体、ユメが浮気したのはお前のせいだろう！

マサトモ

ユメは「寂しくて魔が刺したと言ってるぞ。可哀想になぁ…」

マサトモ

むしろ、寂しい思いをさせたお前がユメに謝るべきだろう！！

セイヤ

僕はこまめにユメを気遣って感謝も伝えていましたし、

セイヤ

誕生日も記念日も欠かさず祝っていました

セイヤ

夜の方は、むしろユメの方から断ってきてました

セイヤ

それでも僕が悪いというなら、どうしようもありません

マサトモ

もういい、LINEじゃ話にならん！家に来い！

セイヤ

どちらにしろ、復縁するつもりはありませんよ

マサトモ

誰がお前みたいな男に復縁しろなどと頼むか！

セイヤ

さっきはそう言ってたじゃないですか

マサトモ

別れる前に、こっちにお前の忘れ物があるんだ！取りに来い！

セイヤ

わかりました。忘れ物ということなら

～数時間後～

ユメ

あっははははは、セイヤ、大丈夫ー？

ユメ

お父さんに殴られて、凄い吹っ飛んでたけどｗｗ

セイヤ

ユメ、なんでお義父さんが俺を殴るのを止めてくれなかったんだよ…

ユメ

だって、許してくれないセイヤが悪いんだよ？

ユメ

お父さん、昔から私の為ならなんでもしてくれるからねーｗｗ

セイヤ

ユメ、お義父さんに聞いた話とは違って全然反省してないんだな…

ユメ

だって、悪いのは甲斐性がなくて寂しい思いをさせたセイヤなんだよ

ユメ

お父さんもそう言ってたから、間違いないんだよ！

ユメ

でもね、セイヤが復縁さえしてくれれば、

ユメ

私もお父さんも許してあげるよ！

セイヤ

ふざけんな！誰が復縁するか！このバカ親子！！

～直後～

マサトモ

どうだ、考え直したか？娘との離婚を

セイヤ

いきなり殴られて、考え直すわけがないじゃないですか！

マサトモ

これは娘の心の痛みだ。思い知ったか！

セイヤ

浮気された僕の心の痛みは無視なんですね

マサトモ

当たり前だ。男なら浮気くらいでピーピー言わず、広い心で許すべきなんだよ！

セイヤ

じゃあお義父さんもお義母さんを許すんですね

マサトモ

へ？

マサトモ

ちょっと待て、なんで妻が出てくるんだ

セイヤ

これは伝えようかどうか迷ってたんですけどね

セイヤ

どうせ調停の時に発覚することなんですけど、

セイヤ

ユメの浮気を調査してて分かったことなんですけど、毎回お義母さんの影が出てくるんですよ

セイヤ

お義母さんが僕に対してアリバイ工作をしたり、

セイヤ

浮気相手との密会のセッティングをしたり、こういったことを度々していました

マサトモ

つまり、妻が協力してたってことか？

セイヤ

それだけじゃないんですよ

セイヤ

ユメもお義母さんに対して、同じことをしていました

セイヤ

お義母さんと浮気相手が会う間に、お義父さんに対してアリバイ工作をしたり…

マサトモ

は？妻が、浮気？

セイヤ

ええ。母子で浮気のために協力し合っていたようですよ

セイヤ

でも、問題ないですよね。お義父さんは浮気くらいでピーピー騒がず、

セイヤ

広い心でお義母さんを許すんですよね！

セイヤ

是非、器の小さい俺にもお手本を見せてください！

マサトモ

ふざけるな、許せるわけないだろう！！俺が今まで養ってやったのに…

セイヤ

あれ、過ちを許し合って乗り越えていくのが夫婦なんじゃなかったんですか？

セイヤ

僕にはさんざんユメを許せと言っておいて、自分は許せないんですか？

マサトモ

ユメと妻とでは訳が違う！！

マサトモ

ユメは若くて美人だが、妻はいい年したババァなんだぞ！

マサトモ

年甲斐もなく、気持ち悪い！！

セイヤ

でもお義母さんが浮気したのは、お義父さんが悪いんじゃないですか？

マサトモ

なんだと！？なぜそんなこと言われなきゃならない！！

セイヤ

お義父さんが僕に言ったことですよ

マサトモ

お前と俺を一緒にするな！！

セイヤ

そうですね。お義母さんを庇うわけじゃありませんが、正直、

セイヤ

お義父さんに関しては本当に原因があると思ってます

セイヤ

お義母さん、ユメに愚痴ってたんですよね

セイヤ

「お父さんは昔、女遊びばかりしてた」

セイヤ

「だから私も対抗して他の男に走ったって」

セイヤ

本当なら、お互い様じゃないですかね

マサトモ

お互い様なもんか！少しの女遊びくらい、男の本能なんだから仕方がないだろう！

マサトモ

妻なら、それくらい許すべきだ！

セイヤ

なんですか？それ

セイヤ

以前は、男なら妻の浮気くらい許すべきだと言っていましたよね

セイヤ

つまり、男も女も浮気は許されるべきだとお考えなんですか？

マサトモ

それは…

セイヤ

そんな両親のもとで育ったユメにはある意味同情します

セイヤ

浮気するような人間に育つのも無理はないですね。だからって許しませんけど

マサトモ

さっきから好き放題俺達を侮辱しやがって！

セイヤ

あ、そうそう。お義母さんの昔からの浮気相手だという男を見ましたけどね

セイヤ

顔立ちがユメとそっくりでしたよ

マサトモ

へ？

セイヤ

愛する娘のユメが、本当にあなたの子ならいいですね

マサトモ

そ、そんな嘘だろ…そんなはず…

マサトモ

なぁ、証拠取れたんだろ。俺にも見せてくれ。妻と離婚する時に使いたいんだ

セイヤ

は？嫌ですけど

マサトモ

どうしてだ！さっきの話は出まかせなのか！？

セイヤ

僕が信じられないなら、自分で興信所なり雇ってください。DNA鑑定ならすぐにできるでしょうし

セイヤ

僕はあなたに手を貸す気はありません

セイヤ

殴られた件で、警察に被害届を出しますし

マサトモ

なんだと！？おい、義理の父親に対して大袈裟なことするな！

セイヤ

ユメと僕はこれから他人になるんですよ。必然的にあなたとも他人になります

セイヤ

僕に非がないのに殴られたんだから、当然ですよね

マサトモ

男のくせにちょっと殴られたくらいで警察に泣きつくとは、情けない！

セイヤ

どう思われようと結構です。あなたのやったことは傷害罪ですから

マサトモ

待ってくれ！あの時は悪かった。浮気された男同士、手を取り合おうじゃないか！

セイヤ

知りません。もうあなた達家族とは関わりたくありませんから

セイヤ

それではお元気で

～一週間後～

ユメ

どうしてくれるのよ！！

セイヤ

どうした、ユメ

ユメ

セイヤが殴られたくらいで被害届なんか出すから、

ユメ

お父さん警察沙汰で、クビ切られそうになってるのよ！

セイヤ

それは、お義父さんの自業自得だろう

ユメ

それだけじゃないの！お父さんったら酷いんだよ！私のこと守ってやるって豪語してたくせに、

ユメ

掌返したみたいに怒って追い出すんだよ！

ユメ

なんでも、DNA鑑定したら、私はお父さんの子じゃなかったんだって！

セイヤ

あー、やっぱりそうだったか…

ユメ

だからってこれまで親子としてやって来たのに、あんなに可愛がってくれたのに、

ユメ

いきなり「お前なんか娘じゃないって追い出すなんて酷いよ！」

ユメ

私のせいじゃないのに！！

セイヤ

まぁ、托卵はお前のせいじゃないと思うけど、

セイヤ

お義母さんの浮気に加担してたのは事実だからなー

セイヤ

その点でも多分許せなかったんだろう

ユメ

お父さんとお母さんも、凄い夫婦喧嘩してる…

ユメ

全部、セイヤの入れ知恵なんだってね！

ユメ

こんなのって酷いよ…いくら浮気したからって、

ユメ

私の家族まで壊すことないじゃん！

セイヤ

俺も元々は深入りする気なかったんだよ

セイヤ

でも君の父親に殴られて、そうもいかなくなった

セイヤ

俺が壊したんじゃない。とっくに壊れてたんだよ、君の家族は

セイヤ

俺はもう、そんな家族に関わる気はないね

ユメ

そんな！セイヤのせいで、頼りだった家に居場所がなくなったんだよ！？

ユメ

責任取って、ヨリを戻してよ！またセイヤと暮らしたいよ…

セイヤ

無理。浮気がどんな悲劇をもたらすのかを、この機会に思い知ればいい

ユメ

充分思い知ったから！もうしないから許してよ！

ユメ

私今、住んでた家の近くにいるの。開けてよ…

セイヤ

俺、そこにいないし

ユメ

え？

セイヤ

今、荷物持って実家に帰ってる。お前が浮気相手と使ってたベッドとか吐き気がするからさ

セイヤ

その家はとっくに売りに出してるよ

ユメ

そんなぁ…じゃあ私どうすればいいのよ…

セイヤ

ホテルにでもどこにでも泊まれよ

セイヤ

それか、浮気相手の家に泊めてもらったら？

ユメ

逃げられたの知ってるくせに、酷い！！

セイヤ

知るか。人妻に手を出したんだから、責任取ってもらえ

セイヤ

じゃあな、俺はもう寝るから

ユメ

待って！見捨てないでよ！ねえってばー！！

～後日談～

セイヤ

その後、ヒートアップした元義父は包丁を持ち出して、元義母に切りかかろうとしました

セイヤ

怯えた元義母が通報したことで、元義父は二度目の逮捕

セイヤ

今度こそ塀の向こうに行くことになり、会社もクビになりました

セイヤ

勿論俺とユメも離婚が成立

セイヤ

ユメからも元義父からも、慰謝料をがっぽり取ることができました

セイヤ

頼りにしていた父親のいなくなったユメは、

セイヤ

慰謝料を払うためにバイトを掛け持ちして必死に働いているのだそうです

セイヤ

狭いアパートの一室で、生活に困窮し浮気相手にも逃げられた母親と同居しているそうですが、

セイヤ

現状をお互いのせいにし合った親子喧嘩が絶えず、

セイヤ

アパートの他の住人からも苦情が絶えないのだそうです

セイヤ

俺は、慰謝料を使って気分転換に旅行にでも行こうかと思っています

セイヤ

今は、もう結婚はこりごりだという気持ちですが、

セイヤ

もし次結婚することがあれば、元嫁の家庭とは似ても似つかない

セイヤ

あたたかい家庭を築きたいと思います

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結城真矢

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