問.芸人はジンクスがあっても勝てるでしょうか？

自分は所謂"そういうの"を持っているらしい。

何歳の頃かな…たぶん小六とか？

検査したらそうだった。

別に自分は何にも思わなかった。でも、両親はそれが受け止められなかったらしい。

中学に入った頃、塾に入った。

友達がいるからという理由で入った塾だ。勉強のやる気なんて出ない。

そう、思っていた

寺田先生はこんな自分に 積極的に話しかけに来てくれた。

この頃は楠木迅では無かった。 だから本名は寺田先生しか知らない。

2ヶ月後…

ドンッッ

勉強も家族のことも 自分がそういうものだというのも 全てを口に出した。

それでも、先生は私を見捨てなかった。

先生がいるから自分がいる。 そんな感じがした。

先生が芸人…？って思ったけど あの面白さならって納得してしまった

成績も上がっていくし、人格も豊かになっていく。こんな素晴らしい時間があるのか。

「寺田寛明」

うん、すっごく面白かった。

完全にお笑いに魅了された。

ここからだ。私がお笑いが好きになったのは。

この楽しさがいつまでも続けばいいのに…そう思った

中2の春、3年生になるところで親の転勤で引越しが決まった

離れたくないと心の底から思った

胸が苦しくなった

でも悲しくさせたくない。必死に我慢したつもりだった

無理だった

微笑んでいたが、先生の目の奥は揺らいでいた。

新しいもの全てに嫌気が差した

勉強がこんなんで捗る訳が無かった

その状態が続いた

怖かった。勉強をしたら今の実力が分かってしまうから

中3の冬、第1志望校の判定がAからBに落ちた。

許容範囲だと思っていたのに 両親は激怒。

"貴方は障がい者なんだから" という視線が深く突き刺さった

そこからは全部が台無しに。 メンタルが崩壊した。

落ちていた

周りから歓声が聞こえる

分かっていた。でも悔しかった。

親に叱られてから？

引っ越したときから？

もしかしたら 生まれたときから？

いつもこう。

私は負けるというジンクスを持っているに違いない。

体育祭は全敗、合唱コンの最優秀、いや優秀賞なんてもっての外。

表彰もされたことがない。 市で開かれる作品展では毎回入賞。 金賞だってとったこともある。 なのに、その年だけ表彰式が無くなったりだとか散々だ。

いつジンクスは消えるんだ？

誰か、教えてくれよ

寺田先生はずっと黙っていた

ジンクスが消えなかったとしても

絶対に

乗り越えてやる

数年後

目の奥が揺れている

本当に

先生に出会えて良かった。