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その日は、朝から少しだけ雨の匂いがした。 降っていないのに、空気だけ湿っている。 あたしは机に座ったまま、指先を見ていた。 何もしていないのに、少し落ち着かない。
あい
愛はいつも通り、後ろからくる。
あい
なつめ
短い会話。 それだけで終わるはずだった。
でも愛は、すぐにあたしの手を見る。 いつもより長く。
あい
あい
なつめ
あたしは自分の指を見る。
なつめ
愛は少しだけ首をかしげる。
あい
その「そっか」は、 納得しているというより、 確認をやめただけの音だった。
昼休み。 教室はうるさい。 でも愛の周りだけ、少しだけ静かに見える。
あい
あい
なつめ
あい
あたしは一瞬止まった。
なつめ
あい
愛は笑っている。 でも目は笑っていない。 あたしは笑い返した。
なつめ
愛も笑う
あい
でもそのあと、 愛はあたしの指を軽く見る。 数えるみたいに。
あい
小さな声。 あたしは思わず聞き返す。
なつめ
愛はすぐに顔を上げる。
あい
放課後。 帰り道。 空は低くて、色が薄い。
あい
あい
なつめ
あい
あたしは歩きながら笑った
なつめ
あい
その言い方は、 冗談の形をしているのに、冗談じゃない。
駅の前で、愛が立ち止まる。
あい
なつめ
愛は少しだけ近づく。
あい
なつめ
あい
その瞬間、 風が少しだけ強く吹く。
あたしは笑おうとした。 でも、うまく笑えない。
なつめ
愛は少しだけ安心した顔をする。 でもその安心は、どこかずれている。
夜。 あたしはベッドで自分の手を見ている。 指。 爪。 関節。 全部、ちゃんとある。 でも愛の言葉が残っている。 「ちゃんと全部あるよね」
翌日。 愛はいつも通り教室にいる。 リボンは完璧。 笑顔も同じ。 でもあたしは気づいた。 愛がもう、 “数えるみたいな目”で見てこなくなったことに。 代わりにその視線は、 もう少しだけ深く、 あたしそのものを見ている。
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