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ラズベリー・モンスター

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ラズベリー・モンスター

1 - ラズベリー・モンスター

♥

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2019年05月08日

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『早く助けてよ』

ゲーム配信者

僕がこの世界に踏み入ったのは かなり前のことだ。

大好きなゲームをしていれば、

現実の自分にはない『気高さ』… それが手に入れられる気がしていた。

そしてまた、ゲームの世界にはない 惨めな自分を…

見つめていくことになる…。

森田

八木!俺とグループを作らない!?

八木

グループゥ…?

森田に相談されたとき、 僕は鼻で笑っていた。

八木

なんのグループなのw

森田

そりゃもちろん…

森田

八木

配信者のグループってこと?

森田

そうそれ!

八木

ははーーん。

八木

それで大ヒットさせようっての?

森田

そうそう!✨

森田

楽しそうじゃん!やろうよ

八木

えぇーーー

八木

仕方ないなぁ…

正直そんなもの…すぐ落下して ガラス瓶みたいに音をたてて割れて…

自然消滅するんだよ。

僕は『成功』それは不可能と考えた。

八木

八木

馬鹿馬鹿しいわwww

『教師になりたい』

僕はその夢を捨ててはいなかった。

配信者のグループなんて、 どうせすぐ終わる…

そう思っていたから 大学を中退することはしなかった…

だけど…。

犬井

お、八木じゃ〜ん

犬井

お前も入んの?

八木

えぇ?犬井も〜?

里川

俺もだぞ、八木

八木

里川www

何故こんなにメンバーが 賑やかになっていくのか…不思議だった

くだらないのに。

八木

あぁ〜くだらない。

八木

八木

…。

僕は自分の性格が嫌いだった。

素直になれないこと。

ふてぶてしいこと。

そして…

自分の意思がハッキリしないこと。

ハッキリしていれば、すぐに…

八木

グループなんかくだらないしwww

八木

なんで僕が?www

八木

入らないからw

なんて言っていただろう。

でも言えないのはやはり、 そんなにハッキリ言ってしまえば…

森田

なんだよその言い方…

森田

馬鹿にしてんのか

なんて、相手を怒らせてしまうこと。

僕はそんな経験…失敗を何回もしたから 知っている。

僕は、他人に自分の素を見せることは できない。

歌は嫌いではなかった。

僕が初めて歌ってみたを投稿した時… 周りからの声が怖かった。

『ギャップすごい✨』

それは…一体どういうことだ。

本当の僕は今、 君達にどういう風に見えてるんだ?

というか、本当の僕を… 君らは知ってる?

試しに自分の歌を聞いたとき、 目眩がした。

八木

っ…!

とっさに冷や汗が出たくらいだ。

歌っている僕はまるで……

楽しそうだったからだ。

現実の俺は…こうじゃない。

周りが言う"ギャップ"とは…

次の日…

僕は外に出掛けた。

コンビニに寄って、いつものガムを買う予定だったんだ。

しかし、あいにく…。

いつも人気のないはずの大好きなガムは すでに棚が空っぽだった。

八木

はぁっ!?

八木

ないんだけどぉ!?

八木

八木

はっ……

しまった、声がでかかった。

自分の部屋で出しているボリュームが コンビニに出てしまっていた。

とっさに僕はコンビニを飛び出した。

困惑する店員の声と、 自動ドアの電子音が僕の耳に残った…。

『仮想の僕は…もっとやれる…。』

そう自分に言い聞かせ、スマホを取り出した。

いつものゲームをしようと、 公園のベンチに腰をかけた。

赤い髪の少女を操って敵を倒す バトルRPG…。

『このゲームをしていると、自分は強い…』 そう思うことができた。

だけど…。

八木

あれっ……

突然…敗北の電子音が鳴る。

八木

はぁっ!!?

八木

僕が負けるわけないじゃん!?

八木

八木

あっ…。

また、大声を出してしまっていた。

八木

くそっ…

どうしても現実の自分の悪い クセが出てしまう…

隠さなきゃ……

隠さなきゃ………っ。

八木

もう一回っ………

ピピッ

八木

は…

すると今度は電波が悪くなったのか 読み込みが遅くなる。

八木

あぁ…もう!

なんだよ…。これ。

僕は何をしているんだろう。

仮想世界に逃げ込んで、現実を逃避して…。

仮想世界がなきゃ自分を見失い…

焦り、隠し、抱え…

いつしか閉じこもるのかな…。

それだったら、まだ間に合う…

ここで教師という夢を追いかけようか…

あぁ…そうしよう。

そこまで考えた時…

森田

八木…

八木

えっ…。

彼がいたんだ。

いつの間にそこに現れたのか、

僕の目の前に森田がいた。

いや、僕がずっと気づかなかっただけ… そうなのかもしれない。

八木

あ……、えと。

八木

いつから…

八木

いたの……?

森田

森田

ずっといたよ。

八木

あ……

八木

そう…なん、だ。

森田

じゃあ、聞かれてな…。

僕が大声で叫んだこと。

僕の表情も読み取ったかも…。

だったら、こいつの性格からして… 次の行動は……。

森田

どうした、なんかあった?

八木

くっ……

わかっていた。

きっとこいつは、 『ゲームどうかした?』

そんな疑問を抱いているわけではない…と。

ただ、読み取ったのだ。

僕が何かを抱えていることに。

八木

な…何もない。

森田

ほんと?

八木

うん…。

森田

ほんとに??

八木

うん……。

森田

森田

八木

八木

何。

森田

相談してよ。

…。

なんだよそれ……。

僕がそんなに弱く見えるか…?

そこまで読み取っちゃうのか?

ハッキリ言えばいいよ…

八木

僕のこと…

八木

弱いって言えば!!?

森田

…八木。

八木

本当はわかってたんでしょ!?

八木

グループのことだって、

八木

やりたくなかったんだってさ!

森田

……。

森田

うん。

八木

だったら僕が弱いって言えよ!

八木

ハッキリ言えない弱いやつだってさ!!

森田

そんなことない…

森田

八木は強いよ。

ほらな…うざったるい。

八木

馬鹿馬鹿しいんだよ!

八木

なに現実の僕に勝手に期待してんだよ!!

八木

もう構うな!!

あぁ…言っちゃった。

また、悪い癖だ。

また……、

離れてしまう……。

森田

ごめんね。

森田

森田

本当にごめん。

森田

やめても…いいんだよ。

八木

くっ…、

八木

あぁ、辞めてやるよ!!!

身を翻した僕は…

沈む太陽の僅かな光を浴びながら…

泣いていた。

森田

ライブすることになったよ!

みんなで集合した時… 森田は笑顔で言った。

皆に会うのはこれで最後にしよう…

そんな日に告げられたのが ライブのことだった。

八木

くっ…、…

羊汰

八木…?

羊汰

どうしたん?

八木

え…

突然羊汰は言う。

八木

何もないけど…

羊汰

ホンマに?顔曇ってるで

八木

え…

そんなに僕…顔に出てるかな…

最近、現実が上手くいかない。

理想の自分になりたいのに…

いつしか遠のいていた。

八木

何言ってんだよ〜

八木

ライブ楽しみだな✨

羊汰

なんだよ、そんな顔すんなよ。

森田

八木…

八木

森田…

森田

ちょっときて。

彼の表情は笑顔だった。

八木

なんだよ急に〜

僕も笑顔を作った。

理想の笑顔……。

森田

森田

本当に…辞めるつもり?

八木

唐突な真剣な問いに… ゆっくりと口角を下げた。

だけど、また笑顔に戻す

八木

辞めるよ

森田

八木

僕、教師になりたいって夢があったんだ。

八木

だから、そっちに走る。

森田

そっか…

森田

俺はとめないよ…

八木

うん。

森田

だけど…1つだけ。

森田

これから先、もっと大きくなった時…

森田

後悔するよ…きっと。

八木

八木

どういうこと…

いつしか僕から笑顔は消えていた

どちらが現実か、仮想か… わからなくなる。

森田

だから、

森田

お前だけ置いてってもいいの?

森田

後悔しない?

八木

何言ってんの?w

八木

僕は辞めるよ?

森田

そっか…それが答えなんだね。

八木

当たり前じゃんwww

森田

じゃあ、現実はどうなの?

八木

は…

森田

さっきのは八木の本音じゃないよね。

八木

はぁ?本音だよ。

八木

森田

森田

嘘つくな

…っ

本当は、まだ走りつづけたい。

本当の自分を探すために…

まだここにいたい。

だけど…

僕はこういうやなやつだからさ…

みんな傷つけたくないっ、

森田

森田

それが本音だよね

八木

え…

森田

ちゃんと聞こえたよ。八木の本音。

八木

何言ってんだよ…僕なにも…

森田

全部聞こえてた。

八木

え…

森田

ここは、現実だよ。

八木

…ご…っ

八木

ごめんなさいっ…

八木

まだ…っ

八木

時間が欲しいっ…ですっ……

いつしか僕は泣いていた。

本当になりたい物を…思い出したんだ。

森田と出会った日に…見つけた夢を…

友達

八木〜。カラオケ行こうぜ〜

八木

いいじゃん行こうw

いつからこんな風に… なってしまっちゃったの…

笑顔さえも…ぎこちない、

僕…ちゃんと笑えてる??

僕…人傷つけてない…??

友達

八木がながらスマホしてる〜

友達

ぶつかるぞ

八木

ヘーキだしw

八木

っと…

ドスッ

不良

あぁ…???

八木

げ…

目の前に立っているのは… どのRPGのラスボスより…

遥かに恐ろしい……現実の恐怖…

巨大モンスター…

不良

てめぇ、いてぇなぁ

八木

ごっ…ごめんなさっ…

不良

慰謝料だせよ…

八木

そんなもの…っ…ないです…

不良

はぁあ!?

森田

森田

待てよ。

森田

せっかくこれから合コンなんだぜ?

森田

そんなにカッカすんなってさ〜

巨大モンスターの肩に手をおいたのは…

ヒョロヒョロで弱そうな若い人だった。

僕の目の前に現れて、僕を助けてくれた

彼は僕を見ると…一言。

森田

ここは現実だよ。

森田

ちゃんと前見て歩けって…w

森田

ゲームの仮想世界に入り込んでた?w

八木

…!

本当の自分を、見つけたい。

本当の夢を、見つけたい。

八木

人を救えるような、勇敢な…

八木

人を笑顔にできる勇者に……。

森田

自分の殻に閉じこもってちゃ何も進まない。

森田

攻撃こそが、最大の防御なんだよ…。

森田

だからさぁ…

森田

森田

もっと自信もてって

二カッと笑っていた彼は…

夕日に照らされて…

赤く、気高い…

勇敢な勇者にみえたんだ。

八木

君のようになりたいです。

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