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俺が一人きりで営業しているカフェの名前は "인연" である。
至極小さなカフェで、店内で飲めるスペースは立ち飲み用のカウンターだけ。 でも、来てくれた人との縁を大切にしようという意味でそう名付けた。
おかげさまで昼食を食べ損ねるくらい繁盛する日もあるのは、カフェの立地も影響している。 だからSNSなんかにも良く載せてくれる人が多くて、それがまた集客に繋がっているようだ。
某カフェチェーン店が周りに何件かある中で、順調に営業できているのは幸せな事である。
それからもう一個。 もしかしたら、いや、もしかしなくてもこれが一番の影響力なのかもしれない
テテ
ホソク
テテ
同じかどうかは知らないけど、怒られるのを避けようとか思わないのか。
怒られるのを百も承知で、今日もまた甘い飲み物を買いに来たのはテヒョンだ 支払いの為に端末にカードを挿し込むと直ぐに決済が完了した。
綺麗に色の抜けた金色の髪は殆どキャップで見えないけれど、流石に顔を覆う物が無さすぎて、無防備甚しい。
目の前の事務所からそのまま気にせず出て来たとは思うけれど、気にしなさ過ぎなのだ。 だから怒られるのだ、事務所のお偉いさん方に。
ホソク
手作りの苺果肉たっぷりのソースを入れたカップに牛乳を注ぐ。
テテ
ホソク
ピシャリと過去の失態を言い放ちながらカップに蓋をした。 テヒョンはというと、立ち飲みのカウンターに凭れた体勢で
テテ
わざと戯けた表情で常套句を言いながら、俺の差し出したいちごラテを受け取った。 だから俺もテヒョンと同じように
ホソク
常套句で返してキャップの鍔を軽く叩いた。
テテ
オープンして15分くらいしか経ってないのに、まったく朝から落ち着かない。 信号待ちをするテヒョンが振り向いて手を振ったのが見えて、息子ではないけれど子供みたいだとはよく思ったりする。
販売している訳ではないが、たまに手作った焼き菓子を個包装にしてカウンターの隅に置いておく。 "お一人様一個ずつ良かったら"という感じで。
タダなんて勿体ないってテヒョンに言われた事もあるけれど、お金を取るレベルではない。 あくまで趣味の延長だ。
そろそろ次の季節限定メニューは何にしようかと、天気の良い外の景色を見て考える。 やっぱりキウイ、かな。
グク
タブレットにメモ書きをしてる所にまた聞き慣れた声がやって来た。 しかも2人で来た。
可愛らしい挨拶をしたのは大きい方で、その後少し遅れてドアを開けて入って来た比較的小さい方が
ジミン
グク
ホソク
ジミン
ジミンが黒い前髪をかき上げてカウンターに頬杖を付いて微笑んだ。 サングラスをしてるからって良いってもんじゃないぞ、とジミンのその顔を一瞥して思う。
グク
グク
そんなジミンに肩を組んで俺の手元を覗き込むようにして言ったジョングクはバケットハットとマスク姿で、まぁ納得出来る。
とはいえ事務所から個々で向かいのカフェに行くなって何度もお咎めを喰らってるはずなのに、全く懲りない。 ていうか3個買うならせめて代表で誰か買いに来ればいいのに、と。
あとジョングクに関しては絞りたいならカフェモカなんか頼むなよ、なんて事も思ったけれど可哀想なので言う事はない。
ホソク
2個のカップをそれぞれに渡した。
グク
ジミン
ジミン
ホソク
2人とも律儀に手を振って店内から出て行く。 丁度信号が青で2人とも軽やかな足取りで道路の向こう側へ、つまり事務所だ
テヒョンを介して仲良くなったジミンとジョングクにもすっかり慣れた。
テヒョンは幼馴染で、ジミンとジョングクは友達。 でも俺の中にそれとは違う感情が生まれつつあって、その相手が---
この感情を表や口に出す予定は未定。
お客さん
ホソク
昼休憩の時間が一番激務だ。
片手間でお客さんの返事に答えたが、嬉しそうな声が聞こえるだけで満足だ。 勿論、意図せず片手間なのだ。 何故ならコーヒーの注文が立て込んでいて、引っ切りなしだから。
テイクアウト用の使い捨てキャリーを何個も作って、出来た物から入れていく こっちは4個、あっちは3個。 混乱しないように手書きの付箋を見ながらだ。
この激務が大体午後2時頃まで続いて、ようやく俺の昼食になるのだ。 客足が遠のいたタイミングを見計らって1時間だけブレイクタイムで店を閉める。
ドアに掛けてある"Open"を"Close"に裏返すことから先に。
ホソク
ホソク
ドアからカウンターに振り向いて気付いて出た独り言。
個包装の焼き菓子が一個もないのだ。 あり得ない。 20個くらいはあった。
手を伸ばしてたのはあの時声を掛けて来た人達だけ…と、空になったバスケットを見て落胆。 無料だから仕方ないけど、1人1個って書いてあるのに。
グク
落胆する俺の背後でドアが開いて、ジョングクが入って来た。
バケットハットがないかわりに、パーカーのフードを被っている、マスクは…していない。
グク
空のバスケットを持って立ち尽くしてる俺にジョングクがそう聞くのも無理もない。 だから手に持つそれを逆さにして見せた。
ホソク
そこまで言うと、ジョングクはフードを少し持ち上げて綺麗な二重の目をもう少し大きく開けた。 それから形の良い口も。
グク
そしてやや大きめの声でそう言った。 タイミングの悪さよ。
ハよりもカに近い音の溜息を吐いたジョングクは俺より落胆して見えて、10センチ以上背が高いのにやたら小さく見えた。 それからジョングクがそんなだから、俺の落ち込み度合いが不足してる様に感じてしまった。
グク
グク
極め付けはそんな無茶苦茶な事をまるで変な事など何もないかのような真面目な目付きで言うから、俺にはもう落胆する暇なんて無くなっていた。