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桃side

悠佑

ほら、ないこ、りうら、着いたで

見えるか、とアニキは目の前に聳え立つショッピングモールを指差す。

周りの木の葉に埋もれて少々見えにくくなっているその建物に近づいていくと、その大きさが一目でわかる。

今まで学校とバイト以外で外に出させてもらえていなかった俺にとって、 その建物に最早威圧感さえ感じてしまう。

それはりうらも同じようで、 建物を見上げながらは目を見開いて丸くしていた。

ただ他の四人は見慣れているからなのか、俺たちを微笑ましそうに見た後、 手を引いて入口まで連れていってくれる。

ほとけ

さっそく中に入ろ!

りうらの手をギュッと握りしめたほとけっちは、そのままの状態で入り口に向かって走っていく。

初兎

ちょっ、イムくん待ってや!

悠佑

おいおい、そんな走ったら転ぶで

いふ

てか、普通に他の客に迷惑だろ・・・・・・ほんと、あほとけ

気づけば既に建物の中からこちらに手を振っている三人に手を振りかえしつつ、俺たちも行くかと入り口へ向かった。

ないこ

それで、最初はどこ行くの?

中に入った俺たちは年下三人を先頭にして、ショッピングモールをのんびりと歩く。

悠佑

一番重要性があるのは服屋やけどな

ほとけ

ゲームセンター行きたいなぁ

初兎

俺も行きたーい

いふ

お前らそれが目的か・・・・・・

「だってここのアーケードゲーム面白いんだもん」とほとけっちは頬を膨らませる。

悠佑

まぁゲームセンターは最後に連れてってやるから、まずは服屋行くか

いふ

ここから近くて、二人に合いそうな服屋と言ったら・・・・・・あそこ?

そう言っていふまろが指差したのは、なんだか大人っぽい雰囲気の洋服が並べられているお店。

夏らしさを感じる腰巻きシャツや、どこぞの模様やらロゴやらが散りばめられたキャップなど、男性用のお洒落な品々をマネキンが着飾っている。

ないこ

いや、俺にはああいう服は似合わないでしょ・・・・・・

「りうらならまだしも」と苦笑しながら言うと、まろは「そんなことないよ」と俺の背中を押してお店まで強制的に連行した。

いふ

ないこスタイル良いし、
絶対大人っぽい服似合うって

ないこ

そうかなぁ・・・・・・?

いふ

ほら、例えばこのTシャツとか__

まろは近くの棚に畳まれておかれていたTシャツを一枚手に取り、 この服に合わせると似合うズボンや上着などを紹介される。

あまりにもまろがペラペラと話すので、俺は途中から何を言われているのかわからず、 ちょっと悪いなと思いつつ話を右から左に聞き流した。

ちらとりうら達を視線で捉えると、 ほとけっちと初兎とアニキがりうらに似合う服を真剣に選んでいる姿が見えた。

何度も何度もりうらの体に服を当てて鏡に映しては、「この色よりはこっちじゃない?」「いや、その色だと上着と合わせる時に・・・・・・」と議論をしている。

りうらはされるがままにポケーっと、二人の会話を聞いていた。

いふ

・・・・・・ないこ、聞いてる?

と、Tシャツの色々な組み合わせを試している途中のまろが俺の名を呼ぶ。

ないこ

えっ、ごめん、なに?

いふ

だから!
ないこにはこっちの服の方が・・・・・・

ないこ

うぅ、よくわかんないよぉ

用語をつらつらと言われても、わからないものはわからない。

まろが俺のために説明しようとしてくれているのは嬉しいが、 今まで全くお洒落というものと無縁だった俺には少々理解し難いジャンルだったようだ。

いふ

えー、じゃあ・・・・・・

まろは呆れたようにそう言うと、何着かの服を手に取り、俺の手を引いて近くにいた店員さんに話しかける。

何やら了承を得たらしいまろは、今度は俺の腕を掴んでお店の奥にある試着室に向かい、入れと俺に促してくる。

いふ

俺が選んだやつ、一回着てみて

ないこ

う、うん

「着替え終わったら呼んでな」 とまろは試着室のカーテンの仕切りを閉める。

仕方なく俺は何着かの内の一着を選んで、元々着ていたTシャツの上から被った。

ないこ

こんな感じ、で良いのかな・・・・・・?

自分で一度鏡を見てみると、そこには水色の半袖シャツを纏って狭い空間に立つ俺の姿が視線に映っていた。

ズボンや俺の体という根本的部分は変わらないのに、シャツが変わるだけでも随分印象が変わるものだ。

ないこ

いふまろ、着替え終わったよ

いふ

見せて見せてー

仕切りを開け、俺の姿をまろが見えるように彼の方向を向いて立ってみる。

初兎

もしかしてないくん、試着しとるん?

悠佑

お、めっちゃ似合っとるやん

ほとけ

ないちゃんカッコいい!

りうら

普段のないくんの爽やかな印象が出てるし・・・・・・うん、似合ってる!

俺たちが試着室にいることに気づいた四人は、試しに着てみたこの洋服と俺に感想を述べる。

思っていた以上に好評だったので、俺はもう一度自分の姿を鏡で覗いた。

ないこ

みんながそう言うなら、これ一枚欲しいかも・・・・・・

自分だけ聞こえるようにそっと呟く。

ほとけ

それじゃ、
こんな感じで色々見てみいこう!

初兎

りうちゃんも試着する?

りうら

うん、する!

悠佑

ないこも残りのやつ、試着しな

ないこ

わかった

初兎はりうらが試着する服を持っていくためにどこかへ行き、ほとけっちもそれについて行く。

アニキはりうらと何か話していて、まろは試着室のカーテンを再び閉めた。

__こんな事を繰り返し、俺たちは無事第一の目標であった洋服を買うことに成功したのだった。

兄弟、拾いました

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