_𝐇𝐢𝐭𝐦𝐚𝐧_14人の殺し屋

"先生"も昔、親に捨てられて死にそうだったところを、助けてもらったらしい。

その助けてくれた人も殺し屋で、 小さい頃から殺し屋としての術を習っていたそうだ。

"先生"はその人を、"師匠"と呼び、慕っていた。

そしてある日、運命的な出会いをする。

高校三年生の時に、新しく"先生"の仲間になった同い年の女の子と、恋に落ちたそう。

それを機に2人は殺し屋をやめる決意をし、20歳になったら一緒に逃げようと約束した。

20歳になり、家を出て、殺し屋もやめ、 息子も生まれ、幸せな家庭を築いていたが、

ある日、"先生"の奥さんが"師匠"に見つかり殺されてしまった。

ちょうど、2人目の子を産んだ1週間後だった。

"先生"は"師匠"を憎み、殺す決意をした。

自分の子供を一人前の殺し屋に仕立てあげ、"師匠"に復讐することを誓ったのだ。

見回すと、全員びっくりした表情をしている。

ミンギュヒョンが頭を押さえた。

洗脳というよりも、記憶の改ざんという方が近いかもしれない。

僕たちは全員親に捨てられた孤独な子供たちだったはずなのに、

親について詳しく覚えている人は誰一人いなかったんだ。

どういう経緯で"先生"と出会い、殺し屋を始めたのかも覚えていない。

"先生"が、昔の記憶を消していたからだったんだ。

だいぶ前に、この国最大で最悪とも言われる連続少年誘拐事件が起こった。

2002年の出来事だった。

"先生"は、"師匠"への復讐のため、完璧な殺し屋集団を作ろうと考え、子供を次々誘拐し、育てたのだ。

ジュニヒョンが"先生"の足の手当をしながら聞いた。

誘拐した子供たちには、新しい記憶を植え付けた。

『お前は、親に捨てられたんだ。 でも、俺が救ってやったからもう大丈夫だぞ。 これからは、兄弟たちとカッコイイ仕事をして生きるんだ。 生まれ変わるんだ！』

ただ、"先生"には一つだけ心残りがあった。

早くに死んでしまった奥さんの事だ。

愛する人が死んだことはどうしても受け入れられず、いつしかその愛情を、〇〇に向けるようになった。

〇〇と愛する人を重ね合わせ、〇〇だけは守る、そう決めた。

ただ、愛する人より長く生きている女性を見るとどうしても虫唾が走る。

この仕事に関わっている女性が20代後半になると、どんなに親しい仲でも、

憎くてたまらなくなるそうだ。

しばらく沈黙が続く。

急にジュニヒョンが声を上げた。

"先生"の足の出血が酷くなっている。

〇〇は焦ったように"先生"の傷口を押さえる。

〇〇は今にも泣き出しそうだ。

こうなると思った。

どうせ、真実を話したとしても"先生"を殺すことに賛成する人なんて居ないと思っていた。

いや、これでいいのかもしれない

むしろ僕は

こうなってほしいと願っていたのかもしれない。

俺が本当に伝えたかったのは

｢生まれてきてくれてありがとう｣

｢生まれてきてくれてありがとな｣