こんなのがあってもなくても、ジョングクみたいに定期的にやる相手なんかいないのに。 それにジミンとだって一回はそうなったけど、これからの事なんか分からないし。
俺としてはまた…なんて思ってしまうけれど、自分からジミンを誘うのは烏滸がましさ甚だしい。 流石にそこまで図々しくはなれない。
生憎、ジョングクの様に頻繁にやりたいとも思ってないし、別の相手を探すつもりも毛頭ない。
敢えて平日を自分の休日と決めている理由は、人の多い日を避けて行動したいからだ。 食事処の列に並ぶとか云々もそうだけど、街自体に人が多いのが嫌で。
久々に某有名百貨店に来てみれば、例に漏れず人が疎らで最高だ。 海外のハイブランドが両サイドに並ぶそこを何処にしようかとゆっくり歩くのが好き。
店員
シックなスーツを見に纏った店員が完璧なお辞儀をして俺を迎え入れる。
携帯で見てたバッグを買いに来た。 セリーヌに。 雰囲気だけでもテンションが上がるのに、今日は事前に決めた物を買いに来たのだから更に浮き足だっている。
ホソク
あった。 目的の物だから他の物よりキラキラ輝いて見えるから人間の物欲とは不思議なものだ。
店員
店員
働いた甲斐があるというものだ。 さよなら俺の300万ウォンと思うが、ここには一切金は惜しみたくない。
同じくセリーヌの財布からクレジットカードを取り出す。
ホソク
そう言おうとしたのに誰かに先を越された。 それに黒い革張りのカルトンにそれと同じ黒いクレジットカードが置かれて。
ジミン
"奢る"なんてワードでは済まされない額なのに、黒いサングラスを掛けたジミンの口元が確かにそう言った。 当然驚いたし遠慮しようかとも思ったけれど、この場所でそういう押し問答をするのはスマートじゃない。
だから店頭で袋を受け取って店員が見えなくなった所で
ホソク
足を止めてジミンの背中に言ったのだけれど
ジミン
と、冗談か本気か分からない笑顔で言われて面食らった。 もし本気なら返した事にならないのに、なんて。
颯爽と現れてスマートに300万ウォン以上も一回寝ただけのやつに使うなんて 普通の男が敵うわけない、太刀打ちできるわけない。 計算か天然か、どちらにしても、だ。
ホソク
黒くて小さいヴィトンの斜め掛けのバッグしか持ってないジミンの両手はガラ空きだ。
ジミン
ジミン
ジミン
そう言ったけれど、それはジミンの買い物ではないから正確にはノーカウントのはずだ。 人の買い物の支払いをして満足してるなら、それはそれで奉仕の心があり過ぎる。
そんな余計な事を考えて歩き続けて、いつの間にか自然と百貨店の地下駐車場
ジミン
似合い過ぎている車の前で、その車と同じ色のサングラスを掛けたジミンが俺に振り返り問う。
ホソク
試してみたくなる。 勇気とかそんなんじゃないし、"あわよくば"なんてジミンに今日会った瞬間から思ってる。
ジミン
ジミン
ホソク
ジミン
ホソク
ジミン
ジミンはその言葉を最後に俺の手からセリーヌの袋を奪い取って
ジミン
そう微笑んで有無を言わさず車に乗り込んでしまった。
返すも何も俺は一銭も払ってないから、返してなんて言える立場じゃないのに なんて思いつつも欲しかったバッグは返して欲しいから、ジミンの無茶苦茶で小狡い策略に乗っかる。
バッグだけじゃない。 ジミンも欲しいのだ。
グク
不在着信
グク
不在着信
バッグの中、マナーモードにしたままの携帯にジョングクからの着信がある事なんて気付きもしないまま。 この後、自分の身に起こであろう事態に静かに胸を躍らせていた。 まだ陽も高い時間だっていうのに。
"今すぐ行ける一番良いホテルのスイートルーム"とやらをあっさり押さえたジミン。 明らかに手慣れていて、これが常用の手口で常用の場所なんだろう。
ジミン
何の迷いもなくローテーブルに車のキーとサングラスを置いたジミンが慣れてるのを露呈する様な事を言う。
俺はジミンとは違って初めての景色を目にして、一点の曇りなく磨き上げられている窓ガラスの前に立つ。 ソウルが一望出来る高さに少し足が竦む。 いや、それともここに来た事自体に今更?
ジミン
背後から両脇腹を撫でる手と俺の左耳辺りを鼻でくすぐるようなジミンの行動は突然だった。
ジミン
窓ガラスに添えられている俺の右手をジミンの右手が握って言った。 ジミンが"これ"と言ったのはジョングクの噛み痕の事だ。
ジミン
ホソク
ジミンの言い回しが可笑しくて笑えた。
ジミン
ホソク
ジミン
後ろから俺の顔を覗き込んで、そのジミンの顔が困惑している。
ホソク
ジミンの顔が更に困惑した。 だから事の顛末を簡単に説明して、その頃にはもう少しお互い淫靡な事から頭が遠のいていた。
ジミン
ジミン
理解したジミンはハハハと一重の目をうんと細めて声を出して笑った。 そしてから俺の手の歯形をまじまじと見て、また小さくふふふと。
ジミン
それは誰に? と、思う間もなく聞く間もなく。 俺のTシャツを胸上まで託し上げると窓ガラスに押しつけて、丁度下着すぐ上辺りの位置にじゅっと音を立てて唇を這わせた。
ホソク
チクッと微かな痛みの後で、今度は強い痛みが走る。 そのせいで身体に一瞬力が入ったのをジミンは見逃さなくて、そこから唇を離すと
ジミン
と、満足げに舌を覗かせて言う。 見下ろせばそこには誰が見てもすぐにキスマークだと分かる痣と同系色の軽く血が滲む歯形。
ジミンが言った"意地悪"の意図に気付いて俺のモノが硬くなるとか、俺も相当変態だ。