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🌙瑠海🎧@ひまがく
ルル
🌘『夏の終わりに、何かがほどけていく音がした』🌷
「また行こうね、夏祭り」 そう言ったのは、病室のベッドの上で、浴衣の写真を見ながら笑うえとさんだった。
🌷
僕はそう答えた。何の迷いもなく、そう思ってた。
その翌日。 病院に珍しくアナウンスが流れた。
《感染症流行の影響により、当面の間、入院患者の外出は制限されます》
🌷
思わず声がでた。 廊下ですれ違った他の患者もざわついている。 職員に食ってかかっている親御さんもいた。
僕は、えとさんの病室に向かった。
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🍫
えとさんは、窓の外を見ながら、ぽつんと答えた。
🍫
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言葉が詰まる。 でも、たぶん、僕はーー 怖かったんだ
“このまま、えとさんと外に出られなくなるんじゃないか”って。
けれどそこ夜。僕の不安を打ち消すように、もっと大きな不安がやってきた。
🌷
夜の病棟が静まりかえった時間。 えとさんが倒れた、と聞いて僕は走った。
自動ドアが閉じた処理室の向こうに、彼女の姿が一瞬だけ見えた。 ぐったりとした腕。落ちた点滴。慌ただしい看護師の声。全身が冷たくなる感覚。
🌷
病室に戻れと言われても、僕は処理室の前を動けなかった。 ずっとずっと、目を離したら彼女が消えてしまう気がして。
その日、夜の病棟の空気は、いつもよりずっと重たくて冷たかった。 僕たちの“夏”は、あっけなく揺らぎ始めたーー。
🌘『ただ、何も知らなかった頃みたいに笑えなくなっただけなんだ』🌷
🍫
えとさんが元気に手を振ってくる。 昨日の処理のあととは思えないくらい、いつもの笑顔だ。
だけど、僕は、うまく手が振れなかった。
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声がこもる。
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🌷
笑ってごまかす。 けどたぶん、ぎこちなさは隠しきれてない。
えとさんが近づいて、僕の顔をじっと覗き込む。
🍫
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ひとりで顔をそむける。 ーーこんなの、いつもなら僕の方が近づいて、からかって笑わせてたのに。
なんでだよ。 なんで今さら、こんなふうにうろたえてるんだ、僕。
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一瞬、えとさんの動きが止まる。
🍫
🌷
ほんとは、眠くなんかない。 ただ、笑えないだけ。 隣にいるのに、もう“同じ未来”を見てる気がしなくて。
えとさんが背を向けて歩き出したとき、その肩が、いつもよりちょっと 小さく見えた気がした。
僕は病室にひとり、ベッドに潜り込んだ。 天井を見ながら、胸の奥がしくしく痛む。
あの子が笑うたびに、泣きたくなる。 あの子がはしゃぐたびに、時間がこぼれていく気がする。 こんなの、ずるいよ。
🌷
声に出したら、涙がこぼれた。
ほんとは、えとさんに触れたい。 笑ってほしい。 一緒にいたい。
でも、僕の手は、どんどんポケットの中でこぶしになる。
🌙『触れたくて、触れられない』🍫
なおきりさんが、なんか変だ。 ここ数日、ずっとそう思ってる。
笑うときの目が少しだけ笑ってなくて、 話すときの声が、前より静かで。
私が「行こう」って言っても「あとで」 って言われることが増えた。
前は、こっちが言う前に手を引っ張ってたくせに。 前は、ずっと隣にいてくれたのに。
🍫
そう聞いたら「寝不足なだけ」って笑ってた。
けど、知ってる。 その笑い方、ウソのときのやつ。
ーー本当は、怖い。 聞くのが。
🍫
そんなこと、もし本当だったら。 私、たぶん、泣く。
だから、いつも通りのふりをする。 おはようって手を振るし、バカな話もする。
でも、心のどこかがヒリヒリする。 目が合うたびに、「どうして?」って言いたくなる。
夜、病室のベッドでうつ伏せになりながら、三宅さんがくれた カエルのクッションをぎゅっと抱きしめる。
🍫
だって、何も言ってくれない。 私が“あと少し”しかいられないことも。 分かってるくせに。
それなら、せめてーー 最後まで、いつもみたいに笑わせてほしいのに。
🍫
小さくつぶやいた声は、夜の病室に吸い込まれていった。
🌟『ここから始まる、終わりのない今日』🌷
🍫
えとさんが、いつものように僕の病室のドアをちょこんと開けて顔を出す。 ただーー“いつものように”って言いながらも、もう、僕たちは前とは違う。
お互いの病状を知っていて、 終わりが来るかもしれないことも分かっていて、 それでも、一緒にいることを選んだ。
🌷
僕が笑うと、えとさんは「えーっ、ヒントちょうだい」って小さく口をとがらせる。 でもそんな顔も、今は全部、愛おしい。
手を伸ばすと、えとさんはすっと僕の横に腰を下ろした。
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えとさんは、窓の外を見ながら、ぽつりと言う。
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僕は、えとさんの手を握った。 そっと、でも離さないように。
🌷
えとさんは照れくさそうに笑って、僕の肩に頭を預けた。
点滴の音も、廊下のナースコールも、全部遠くに感じた。
今、ここにあるのは、 ほんの少しの静けさと、ふたりの心臓の音。
命のリミットが近づいてるなんて、忘れてしまいそうなほどにーー 僕たちは、ただ穏やかに並んで座っていた。
(🍫視点)
手をつなぐたびに思う。 「この手を、何回つなげるんだろう」って。
でも、なおきりさんは何も言わずに笑ってくれる。 その笑顔に、私は毎日救われてる。
もしかしたら私は、なおきりさんよりも先に、 いなくなってしまうかもしれない。
だけどそれまでの時間を、ちゃんと一緒に、 ちゃんと笑って、ちゃんと泣いていたい。
“もう、何も隠さない”って決めたから。
ーー私、なおきりさんが好き。 心から、大切で、大好きだよ。
だから、もし明日が終わっても、今日だけはちゃんと生きる。 それが、私たちの、はじまりの物語
コメント
4件
またまた失礼します!! 神作品すぎますよ🥺 書き方とか本当に上手で尊敬です🫶🫶
この物語ほんとに切ない、💭 投稿されて読む度に毎回 号泣ですよぉ ~ 、🥹笑 続き待ってます ! !