好きで、好きで好きで好きなんだ。
頭の中が、 その言葉に埋め尽くされるくらいに。
ねぇ、頼むから、 誰か代わりに、 グガを幸せにしてあげて。
なんて…本当はそんなこと、 思ってもいないくせに。
『どうして僕じゃダメなんだよ』
今にも口からこぼれてしまいそうなその言葉を、 僕は必死にのみ込んだ。
出逢い
グクside
僕が、 小学一年生のときのこと。
僕の家族は、 お父さんとお母さんと僕の3人家族。
お父さんは、 滅多にしゃべらないし、 滅多に笑わない人で、 けれど怖いというわけでもなく、 とくに怒られたこともなかった。
次第に理解していった。
お父さんは、 …この人は、 僕に興味がないだけなのだと。
一方、 お母さんは、 成績や運動、 素行などにすごく厳しい人で、 よく怒られたのを覚えている。
でも、 幸せな家庭だった。
…僕にとっては。
__ピンポーン。
ある日の休日。
珍しく3人で家にいて、 各自仕事、 勉強、 家事をやっているとき、 家のインターホンが鳴った。
僕はリビングにいて、 濡れた手をタオルで拭いたお母さんが急いで玄関に向かう。
少したったあと、
テヒョンの母
お母さんのセリフに、 なんだろうと思いながらお父さんと玄関へ行った。
扉を挟んだ向こうに立っていたのは、 僕より年上に見える男の子と、 その子のご両親らしき2人。
グクの母
グクの母
その男の子のお母さんらしき人が箱を差し出し、 お礼を言って其れを受け取ったお母さん。
僕は2人の会話よりも、 無言で立っている男の子が気になって、 じっと見つめた。
高学年かな? 低学年かな?
僕よりお兄ちゃんだと思う… よいうより、 なんだか子どもっぽくない。
直感的に、 そう思った。
テヒョンの母
テヒョンの母
お母さんにそう言われて、 半ば無理やり頭を下げられた男の子。
何も言わず黙っている男の子に対して、 男の子のお母さんが不機嫌になったのがわかった。
JUNGKOOK
僕は直感的に、 この空気を変えなければいけないと判断した。
JUNGKOOK
JUNGKOOK
男の子のお母さんに向かって、 満面の笑みを向けた。
彼女は先ほどまで男の子に向けていた不機嫌な顔を一変させ、 僕に視線を合わせるように屈む。
テヒョンの母
テヒョンの母
JUNGKOOK
JUNGKOOK
ホッ…と、 バレないように息を吐く。
よかった、 みんな笑顔になった。
男の子も、 怒られずに済んだ。
そのあと、 お母さん同士で話に花を咲かせはじめたので、 お父さんと僕、 向こうのお父さんと男の子は、 2人を残して家に戻った。
新しい住人さんが引っ越してきて、 いくつか上のお兄さんもやってきた。
賑やかになるといいな。
その時の僕は、 のん気にもそんなことを願っていた。
歯車が、 歪な音を立て始めたことにも気づかずに。
_________
グクの母
グクの父
グクの父
グクの母
リビングから、 お母さんの怒鳴り声が聞こえる。
JUNGKOOK
僕は1人、 部屋の中でため息をついて、 こっそり家を抜け出した。
マンションの中にある、 ピアノルーム。
僕のお母さんがピアノ教室を開いていて、 普段からマンションの住人が使えるように解放している。
お父さんとお母さんのケンカを聞きたくない時、 僕はいつもここに来ていた。
防音用の重たい扉を押して、 中に入る。
すると、 いつも誰もいないはずのそこに、 1人の男の子がいた。
JUNGKOOK
JUNGKOOK
たしか昨日、 おうちに挨拶に来た男の子だ。
彼はピアノの隣にあるソファーに座り、 僕を睨むように見ていた。
V
JUNGKOOK
V
どうしたんだろう?
だって、 もう夜の8時だよ?
僕も人のことは言えないけど、 こんな遅くまで何をしているんだろう。
JUNGKOOK
僕は彼の隣に座って、 首をかしげた。
すると彼は、 バツが悪そうな顔をして、 下を向いてしまう。
V
ポツリと、 たしかにそう呟いたのを、 僕は聞き逃さなかった。
V
続けてそう言って、 彼はソファーから立ち上がる。
そして、 この部屋から出ていこうと扉に向かって歩き出した。
JUNGKOOK
JUNGKOOK
彼が出て行ってしまう前に、 伝えたかった。
JUNGKOOK
僕も、 まったく同じ気持ちなんだと。
同じ気持ちの人がいるとわかって、 ちょっと嬉しくなったんだ、 って。
V
彼は振り返って、 僕の顔を見た。
V
JUNGKOOK
僕は、 まだ全然慣れていない敬語を使いながらそう返事をした。
すると、 再び隣に戻ってきてくれた彼に、 嬉しい気持ちになる。
V
彼が何か言いかけて、 僕の顔を覗き込むようにして見てきた。
V
この時、 僕がどれだけ… …どれほど嬉しかったか。
今まで1人でこの部屋で過ごして、 本当はとてと寂しかった。
お父さんとお母さんのケンカから逃げるようにここに駆け込んで、 でもここは誰もいなくて、 残るのは、 いつも孤独だった。
JUNGKOOK
JUNGKOOK
V
V
JUNGKOOK
JUNGKOOK
V
JUNGKOOK
V
僕たちは笑いあって、 指切りの約束を交わした。
V
JUNGKOOK
V
V
あの日から、 何度もテヒョニヒョンとこの部屋で同じ時間を共有した。
いつものように家から抜け出して、 落ち合っていた時。
テヒョニヒョンは何をするでもなくボーッと寝転んでいて、 僕は明後日のピアノの発表会に向けてピアノを弾いていた。
JUNGKOOK
JUNGKOOK
今日のレッスンでも、 何度も怒られた。
お母さんの息子なのに間違えたりしたら… なんて想像するだけで恐ろしくて、 僕は発表会が恐怖でしかなかった。
するとふと、 僕の方へ歩み寄ってきたテヒョニヒョン。
僕と目線合わせるように屈んで、 そっと頭を撫でた。
V
V
胸が広がっていた不安が嘘のように薄れていく。
コメント
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あぁ、また天国行ったってぇぇえー! なんでこんなに作るのうまい? 怖い。その力私にくださいぃぃ! 続き楽しみにしてますよっ💗
これ小説化したら絶対買う笑