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あの日
小さな手で一生懸命花を編む姿が あまりにも綺麗で
声をかけてしまったんだ。
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
俺は騎士団長である父のキツい鍛錬から 逃げ出し、花畑に身を潜めていた。
そしたら少し年下くらいの女の子を 見つけたから、興味本位で近づいた。
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
案の定そう提案してきた彼女は、 俺の話を真剣に聞いてくれた。
それがひどく嬉しくて、
ぺいんと
そう口走った。
すると彼女は暗い表情になり、自身が… 悪魔の血を引いていることを打ち明けた。
俺はそういう年頃だったから、 彼女の悩みなど知る由もなく
ぺいんと
なんて、感嘆の声をあげていた。
今思い返しても、 デリカシー無いなと思う。
でもその言葉に彼女は笑った。
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
しにがみ
ぺいんと
ぺいんと
それから2人でよく遊ぶようになり、
しにがみは俺の友達とも すぐに馴染んでいった。
湖で遊んだ際、男だって判明した時は めちゃくちゃびっくりしたけど…
でも、お前とは良い関係を築けていたと
そう、思ってたんだけどなぁ…
大人になり、騎士になった俺は、 森の警備に出ていたんだ。
俺は割と強い方だし、どんな魔物が来ても大丈夫だと高を括っていた。
ぺいんと
ぺいんと
バサッバサッ、
ぺいんと
ぺいんと
ザシュッ!
ぺいんと
まずい、油断した。
そう思って振り向いたら、
そこにはしにがみが立っていた。
ぺいんと
いや、違う。正確には、 “しにがみそっくりの悪魔”だったんだ。
でもあの時は焦りと混乱で、それを しにがみとしか認識できなくなっていた。
悪魔
悪魔
ぺいんと
あまりのスピードについていけず、 体にじわじわと傷を付けられていく。
ついに立っていられなくなり、 その場に倒れ込んだ。
ぺいんと
悪魔
悪魔
俺は最後の力を振り絞り、 剣を悪魔に向かって振った。
悪魔
悪魔
悪魔
悪魔は腕に深い傷を負い、 よろよろと逃げていく。
そこで俺の意識は途切れた。
ぺいんと
ロボロ
トラゾー
ぺいんと
気づいた時にはベッドの上。
周りには親族や友人達が集まっていた。
クロノア
ぴくと
俺は森でのできごとを思い出し、 青ざめる。
酷く記憶が混濁していて、 断片的な部分しか覚えていない。
だから…あんなことを言ってしまった。
ぺいんと
トラゾー
俺はさっきあったことを事細かに話した。
もっとも、俺が覚えている範囲で、だが。
トラゾー達は俺の話を聞き終えると、 顔を真っ赤にして部屋を出ていった。
村長であり、しにがみくんの親代わりの ともさんの所へ向かったのだろう。
ぴくと
ガチャッ
ぺいんと
俺は死にかけた恐怖と、 裏切られたショックで放心状態だった。
…しにがみは俺の大切な友人だ。
…それでも俺はきっと、心のどこかで 悪魔であるアイツを疑ってて
あいつがこんなことをする訳がないと、 “ああ”なるまで気づかなかったのだろう。
…
...本当に、酷い話だ。
バタンッ!
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
また傷つけられたくない。
そんな恐怖がしにがみを拒絶する。
ぴくと
しにがみ
ぴくと
しにがみ
ぴくと
ドンッ!
しにがみ
ぴくと
しにがみは押された拍子によろけ、 シェルフの角に頭をぶつけた。
頭からは真っ赤な血が流れ出ていて、 彼は小刻みに震えていた。
しにがみ
ダッ!
タッタッタッタッタッ…
ぴくと
ぺいんと
ぴくと
パタンッ
ぺいんと
ぺいんと
それから数日後
俺は無事に退院できた。
しにがみはあの日 村を出ていったそうだ。
俺を襲った悪魔がいなくなった。
なのに…どうしてこんなに 気分が晴れないのだろう。
トラゾー
ぺいんと
トラゾー
トラゾー
トラゾーは肩を負傷していて、 まともに話すのもしんどそうだ。
ぺいんと
ぺいんと
トラゾー
俺は悪魔のもとへ走った。
そこにはともさんをはじめ、 みんなが集まっていて
暴れる悪魔をなんとか 縛り付けていた。
ともさん
ぺいんと
ぺいんと
悪魔と目が合い、思わず後ずさる。
だってそいつは
紫の髪、紫の瞳、小さな黒い角まで “彼”にそっくりだったから。
悪魔
ぺいんと
あの喋り方…間違いない。
あの時俺を襲ったのは
間違いなくコイツだ。
クロノア
ぺいんと
ロボロ
あの時の記憶がフラッシュバックする。
と同時に、 しにがみの辛そうな表情を思い出した。
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ともさん
悪魔
悪魔
悪魔
チーノ
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
俺が叫ぶと みんなの顔つきが変わった。
しにがみより少し背の高い そいつは不気味に笑う。
悪魔
悪魔
俺は楽しそうに嘲笑う悪魔を 無視して走り出す。
早く…早くアイツを見つけないと…!
心当たりのある場所は全部探した。
初めて出会った花畑、 よく四人で集まった秘密基地、
らっだあの友人の家、 イタズラして怒られた教会、
昔一緒に遊んだ湖…
ぺいんと
しにがみ
クロノア
クロノア
しにがみ
ロボロ
しにがみ
チーノ
ぺいんと
トラゾー
しにがみ
クロノア
ぺいんと
ロボロ
チーノ
トラゾー
トラゾー
ぺいんと
しにがみ
クロノア
しにがみ
…
…懐かしいな。
子供の頃は純粋で
悪魔の恐ろしさも、残酷さも、 何も理解してなかったからこそ
心の底からアイツを友達だと呼べた。
でも、次第にあいつを 信じられなくなって行って、
こんな悲劇を生み出した。
…でも今は違う。
ちゃんと、ちゃんと、 しにがみがどんな奴か思い出したから。
…あいつはきっと、 こんな俺でも許してしまうんだろう。
それでも謝って、謝って、
一生を懸けて、しにがみに償おう。
あいつを拒絶したこと
みんなに誤解させたこと
少しでも、あいつを疑ってしまったこと
だからどうか…
無事でいてくれ。
ぺいんと
湖のほとりで横たわる紫を見つけ、 急いで駆け寄る。
ぺいんと
声をかけるが返事は無い。
動悸が速くなり、呼吸が乱れる。
怖い…怖い…
知ってしまうのが、 事実を受け入れなくてはいけないのが、
怖い…
ぺいんと
彼の体を抱き上げる。
酷く軽くなっていて、 温もりは感じられない。
手には空のビンが握られていて、 彼が自決したのだと悟った。
ぺいんと
ぺいんと
そこからのことは、 あまり覚えていない。
しにがみを抱えたまま 呆けている俺をらっだあが発見し、
村に連れ帰られた。
…誰も俺を責めなかった。
それが余計に俺の罪悪感を抉る。
俺があんなことを言わなければ
しにがみは今も、 ここで笑っていたのだろうか。
ごめんね