TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

これはとある魔女の家系の末裔の 少女の話である。

魔女の家系といっても 箒で空を飛べる訳でもなく 呪文を唱えて超常現象を起こす事もない。

ただ、不思議な効力を持った 魔法の薬が作れる少女のお話である。

燕 魔保

いや、長い!

え?いやほら 冒頭のナレーションって大事かと…。 それにまだちょっとしか話してない…。

燕 魔保

そんなのどうでもいいから早く始めなさいよ!

はぁ…、それでは 「雲を掴む薬」始まります…。

ピーーーー!

燕 魔保

おっと、とと…。

薪ストーブの上に置かれたヤカンの 沸騰を知らせる音に反応して 慌ててヤカンを火から遠ざける。

燕 魔保

えーっと、これが沸いたらアレとコレとソレをこうして…。

彼女の名前は 燕 魔保(ツバクラ マホ) 古く由緒ある魔女の家系の末裔。

宗吉

またヤカンで薬を作っているのか…。

宗吉

婆さんから譲り受けた鍋はどうした。

彼?の名前は 燕 太郎兵衛宗吉 (ツバクラ タロベエムネキチ) 魔保の家に80年以上住む犬である。

燕 魔保

あー…、確か衣替えする前まではそこにあったと思うけどどっかに行っちゃった!

宗吉

…。

燕 魔保

ぶっちゃけ鍋よりヤカンの方がすぐ湧くし、沸騰したら教えてくれるし、出来上がったら注ぎやすいからね!

宗吉

ヤカンで薬作る魔女なんてお前ぐらいだよ…。

燕 魔保

それは前に聞いたよ!

宗吉

それで、何を作っているんだ?

燕 魔保

んー、今日学校で友達と話している時に「雲を掴む話」って単語が出てきたんだけど。
私もそういった話をしてみたくて「雲を掴む体験ができる薬」を作っているの。

宗吉

…は?

燕 魔保

だから、雲を掴む…。

宗吉

それは薬の力に頼るものではないと思うが。

燕 魔保

えー、手っ取り早くていいじゃん。

宗吉

まぁいいか…。
前の惚れ薬の時のような事はするなよ…。

燕 魔保

ふふふ、私に失敗の文字はないのだよワトソンくん。

宗吉

あ、コレはダメなやつだな…。

燕 魔保

まぁ話している間に完成!

ヤカンの中身は 色々なモノが混ざり合い 濃い紫色をした煮立った ドロドロのスライム状になっている。

宗吉

これ、どうするんだ?

燕 魔保

飲めば効果を発揮するはず!

宗吉

そうか、じゃあ終わったら感想を聞かせてくれ。

そう言い残し宗吉は 部屋の扉の方へ歩いて行こうとする。

燕 魔保

ちょっと待った宗吉さん!

宗吉

やめろ!尻尾を掴むな!

燕 魔保

試しに飲んでみてよ!

宗吉

そうくると思ってたが絶対に嫌だ!

燕 魔保

コンソメスープ味にしたから毒み…味見してよ!

宗吉

お前今完全に毒見って言っただろ!

燕 魔保

言ったけど言ってない!

宗吉

何だそれは!やめろ!離せ!

燕 魔保

ちょ、宗吉さ…あつ!!

ガシャン!

宗吉

あっつ!!

情けない擦りつけ合いの結果 魔保の手がヤカンに当たってしまい ヤカンが台の上から床に落ちた…

燕 魔保

あーぁ…。

宗吉

やってしまったな…。

燕 魔保

まぁ薬は仕方ないけど宗吉さん大丈夫?

宗吉

跳ねたのが少しかかっただけだから問題ない、魔保は無事か?

燕 魔保

私も大丈夫、ごめんね宗吉さん。

宗吉

いや、俺すまない事をした。

燕 魔保

とりあえず掃除かな…。

宗吉

そうだな…、ん?

床の上にぶちまけられた ヤカンの中の薬が何やら蠢いている。

宗吉

お、おい…、やばくないかこれ…。

燕 魔保

わわわ、どうしよ宗吉さん!

宗吉

俺に聞くな!

蠢く薬…もとい物体は 自発的に一つの塊へとなっていき…

元々の量から比べても かなり小さな球体へと形を変える。

燕 魔保

何これキモ…。

そして、その球体は圧縮されるように さらに小さくなり…。

ブシュー!と大きな音を立てて 上記を吐き出し部屋を包み込んだ。

燕 魔保

ちょちょ、何にも見えない!!

宗吉

魔保!無事か!?

燕 魔保

宗吉さん!
大丈夫!コンソメスープ臭いけど無事だよ!

宗吉

どうやらコレはただの水蒸気みたいだ、晴れるまで下手に動かずじっとしてろ!

燕 魔保

分かった!

暫くすると部屋を包み込んでいた 水蒸気が落ち着き いつもの部屋の景色が目に入った。

燕 魔保

あー、びっくりした…。

宗吉

まったく何が私に失敗はないだ…、な、何だあれ…。

燕 魔保

何よ、いいタイミングだから驚かそうって考えなの宗吉さん?

宗吉

いや、そうじゃなく…、お前の隣…。

燕 魔保

はいはい、私の隣に雪男でもいるんでしょ〜…、何コレ…。

魔保の隣、 2人の目線の先にあったのは。

…。

燕 魔保

雲だ…。

宗吉

雲だな…。

デフォルメされているが 中型犬ほどの大きさの雲が浮かんでいる。

何アホみたいな顔して驚いとんねん、アンタらが呼び出したんやろがい。

燕 魔保

関西弁だ…。

宗吉

あぁ…。

いや、何が関西弁だ…やねん!
アンタらが掴みたいっちゅうからわざわざきてやったんやろがい!

燕 魔保

…?

宗吉

理解が追いつかん…。

いやいやいや、そこの嬢ちゃんが雲を掴みたくて薬作ったんやろ?

燕 魔保

え?あ、うん…。
そう言う意味じゃないんだけど…。

せやからワシがわざわざ出てきてやったちゅーわけや。

燕 魔保

えぇ…。

宗吉

お前何作ってるんだ…。

燕 魔保

え?え!?知らないわよ!
こんなはずじゃなかったんだから!

宗吉

いやいや、どう考えてもお前の薬の失敗で生まれた化け物だろ!

燕 魔保

いやいやいや、こんなつもりなかったんだから!

なぁなぁ、アンタらさっきからひどない?

それにこっちは、さっきから掴まれるの待ってんねん。
言い争うのは勝手やけど、せめて茶の一つぐらい出せんの?

燕 魔保

あ、すいません…。

それにな、そこの犬。

宗吉

な、なんだ?

ワシが化け物やったら喋る犬のアンタも化け物ちゃうんかい。

宗吉

む…、すまない…。

ほんま、こいつらせっかく来てやってんのに何ちゅう態度や。

燕 魔保

すいません…。

宗吉

すいません…。

ええ加減にせえっちゅねん。

その後2人は突然現れた雲に 小一時間説教され 最後に魔保が一掴みさせてもらい 無事帰っていったと言う。

「雲を掴む(物理)薬」 完

この作品はいかがでしたか?

109

コメント

9

ユーザー

そう来たかwwwww 完全にギャグ路線もめちゃ面白いwww てか怒られてるの貴重…( *¯ ꒳¯*)✨

ユーザー

雲を掴む(物理)www 初めのナレーションんも笑っちゃったし 雲の関西弁でも笑ったwww

ユーザー

物w理wはw笑wうww (感想 まさかの物理(笑)) 最初のナレーションも面白かったですww

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚