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佐伯〇〇

ぐぁー疲れた

これはもしもの話になる

佐伯〇〇

帰ってストゼロストゼロ…

佐伯〇〇

……ん?

佐伯〇〇

シュヴァインデンアドラーズ

街中のポスターに足を止めた

佐伯、24歳OL

佐伯〇〇

牛島…?

新たな出会いの始まり

ドスっと暗闇の自室でスマホを開く

佐伯、24歳、大卒OL、彼氏なし

髪は黒い

彼女はもう金髪ギャルではない

佐伯〇〇

…しゅゔぁいでんあどらーず

佐伯〇〇

…しゅゔぁいでんあどらーず

言い慣れない、言葉を唱えて

スマホをスワイプする

佐伯〇〇

う、牛島…

シュヴァインデンアドラーズのファンイベント

佐伯〇〇

これに行ったら…会えるの…?

手はいつの間にか

「チケット予約」

のボタンをタップしていた

勢いで来たイベント

ここにいる様々なファンよりも

このチームのことを知らない

でも、1番自信があった物がある

佐伯〇〇

牛島若利…

彼を見るのは6年ぶりだった

自分の思いをまだ引きずっていることに気づいた

私はあれから何者にもなれなかった

佐伯〇〇

好き

ファンイベントは色々なことをしていた

懐かしい影山くんもいた

お客さんと選手一同みんな心が通い合ったような…

みんな選手達に夢中になっている

ただ1人

私はずっと牛島若利を見ていた

彼から目が離せなかった

楽しい時間はあっという間に過ぎていった

ファンイベントが終わったところで次は握手会だった

私は悩んだ

若利に何年ぶりに触れてみたかった

喋りたかった

「好きだよ」

って言いたかった

佐伯〇〇

(だけど)

私にそんなことをする資格はない

貴方は立派になって、世界の頂で争えるくらいの大きな人

もう白鳥沢の牛島若利ではないし

私も金髪ギャルではない

佐伯〇〇

(会う必要なんて最初からなかったのに)

自分が馬鹿みたい

自分が嫌い

でも、それでも会いたいと思ってしまった

ただ握手をするだけ

彼はきっと私のことを覚えていない

足先を人混みに向けた

長い長い行列の末

私の目の前に牛島若利がいる

彼はあの時から何にも変わっていなかった

次は私の番だ

若利の目線が私に向けられた

目があった

それから数秒間お互いずっと見つめあっていた

こんなに私の目を見てくれたの、何年ぶり?

若利がゆっくりと手を差し出す

牛島若利

…?

牛島若利

握手、しないのか?

佐伯〇〇

ぐっ…!?

きょとんとした顔で見つめてくる貴方の顔は

何にも変わっていなかった

佐伯〇〇

あ、え、っと

佐伯〇〇

ずっと、応援、シテマス…

そう言って彼の手をきゅっと握る

牛島若利

…ありがとう

係員に早く退くように焦らされたので手を離す

もう彼は次のファンと手を握り合っている

なんだか泣きたくなった

佐伯〇〇

疲れた…

あれからファンイベントも無事終わり

私は夜ご飯を食べるため近くの定食屋に来ていた

佐伯〇〇

なに食べよ…

お腹も大して空いてないくせにメニューをぱらぱらめくっていると

佐伯〇〇

ハヤシライス…

佐伯〇〇

若利の好物…

私はなんて重い女なのだろう

気がつくと注文して目の前に鼻をくすぐるいい匂いの食事が運ばれていた

佐伯〇〇

いただきます

ぱくりぱくりとゆっくりと咀嚼をし胃に流し込んでいく

気がついたら涙が流れていた

佐伯〇〇

うぐっ…

佐伯〇〇

私の…ほうがっ……ずっと好きだったのに……

目の前は涙で濁っていてよくわからなかった

考えれば考えるほど自分が醜く意気地なしの弱者で

泣き飯でもこのハヤシライスは美味しかった

もう一つ泣きたくなることがあった

佐伯〇〇

……っ、なんで…

佐伯〇〇

なんで……っ若利は私のこと…覚えてないの…!

こんなのわがままだ

今はあんな大スターが私のことなんか覚えているはずがなかった

そんなのは最初からわかっていた

でも

どこかまた期待している自分がいてしまった

佐伯〇〇

…馬鹿みたい

お冷をとりに立ちあがろうとすると

佐伯〇〇

えっ…

目の前にいるのは

大柄な体格

キリッとした顔立ち

なのにどこか天然風味

佐伯〇〇

……、!?

佐伯〇〇

牛島…若利…?

彼は戸惑うようにこちらを見ていた

牛島若利

……?

牛島若利

ハヤシライスを食べながら泣く女がいると聞いて

牛島若利

気になってきた…

!?!?!?!?

頭の中がはてなマークびっくりマーク畑だった

目の前に若利がいるのも信じられない

佐伯〇〇

……すっ、すいません……っ

だめだ、貴方の顔を見ているともっと泣きたくなってしまう

牛島若利

…!

牛島若利

ファンイベント…来ていた人か…?

佐伯〇〇

…は、い

牛島若利

チームが今日ここで打ち上げをすると言って

牛島若利

偶然、だな

佐伯〇〇

はひぃ…

牛島若利

…なんでそんなに泣いているんだ

佐伯〇〇

…知らなくていいっ…

牛島若利

そうか

牛島若利

俺も知らなくていい

佐伯〇〇

じゃあ聞くなぁ…

佐伯〇〇

慰めろぉ…

牛島若利

……?

牛島若利

何故俺が慰めなきゃいけないんだ?

佐伯〇〇

うるさあい…!

佐伯〇〇

女が泣いていたら声かけんの!

佐伯〇〇

かのじょできねぇぞ!

牛島若利

訳が分からない

牛島若利

酔っているのか?

佐伯〇〇

酔ってねえよ!

佐伯〇〇

ちなみにお酒は結構好き!

牛島若利

そうか

そう言った彼の顔はふわっと少しだけ笑みを浮かべた

佐伯〇〇

………っ!

牛島若利

今度は赤くなったり

牛島若利

君の体はどうなっているんだ?

佐伯〇〇

な、なんでも、そんな赤いの!?

牛島若利

…?

佐伯〇〇

うぅ…

牛島若利

ハヤシライスは泣いて食べるものではない

佐伯〇〇

うぐ…ごめんなさい

牛島若利

それじゃあ

佐伯〇〇

あっ…

また、どこかへ貴方が消えてしまう

これが最後のチャンス

牛島若利

…少し聞きたいことがあるんだが

牛島若利

名前を教えてくれ

佐伯〇〇

な、まえ…?

迷ったこの時の私は世界一悩んだ

でも、考えた答えはこうだった

佐伯〇〇

私の名前は

佐伯〇〇

佐々木と言います

もう嘘をつくしかなかった

牛島若利

佐々木…

佐伯〇〇

私は…佐々木です

牛島若利

…そうか

佐伯〇〇

じゃあ、もう食べ終わったんだし、帰ります

佐伯〇〇

慰めてくれてありがとう

牛島若利

…慰めたつもりはない

佐伯〇〇

いいんだよー

佐伯〇〇

じゃね

ここはもう大人なんだからかっこよく立ち去ろう

そして新しい出会いを求めてこの店を後にした

牛島若利

…スマホ忘れてる

牛島若利

…ちょっと待て

店を出て瞬く間に背後から声がした

後ろにはさっきの牛島若利がいた

もう忘れたいのに

忘れさせてくれない

牛島若利

スマホを忘れている

佐伯〇〇

…ありがと

佐伯〇〇

優しいね

「昔から何にも変わんないね」

「もっと話したい」

「私のこと気づいて」

「貴方の笑顔、すっごく大好き」

「好きだよ」

伝えたいことは山ほどある

考えただけで涙が止まらない

牛島若利

だからなんで泣くんだ

佐伯〇〇

ごめんっ…

佐伯〇〇

ごめんね…

牛島若利

……?

牛島若利

やはりよく分からない…

佐伯〇〇

ありがとう

牛島若利

気をつけろ

佐伯〇〇

うん

牛島若利

それだけだ

佐伯〇〇

他のみんなとあとは楽しんできて

牛島若利

ああ

佐伯〇〇

………

牛島若利

じゃあな

佐伯〇〇

ばいばい

今度は私から背を向けて歩く

いいんだ、これが1番いい選択

もう忘れる

金髪ギャルは卒業しないと

コツコツとなる自分の靴の音に耳を傾ける

貴方とはもう、一生のさようなら

牛島若利

帰り道を教えてくれ

牛島若利

佐伯

背後から聞こえた聞き取れるかわからない小さい声

貴方のその一言

私たちの出会いの一言

それを聞いて私は飛び出していた

佐伯〇〇

…若利?

牛島若利

…佐伯、〇〇

牛島若利

ずっと、探していた

牛島若利

随分、雰囲気が変わったな

そう言ってふわっと笑みを浮かべる

佐伯〇〇

あ、あたしっ…

私は彼の胸に飛びついていた

ぎゅっと何年越しのハグ

貴方の香り、何にも変わっていない

ずっとずっと大好きな香り

私はずっといつまでも

貴方の金髪ギャルでいたい

あたしは貴方のことをこんなにも思っている

そして今君に伝える

佐伯〇〇

好きでした

金髪ギャルと牛島若利

佐伯〇〇

【Fin】
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コメント

7

ユーザー

あ"ぁ"ぁ"ぁ"泣何だこの感動するやつはァァァ!!

ユーザー

牛若やばいぬまるかも

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