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第1話 - あ

2023年08月05日

#恋愛

結城真矢

タイヨウ

なあ、ツキヨ。落ち着いて聞いて欲しいんだけどさ。

ツキヨ

なぁに？タイヨウ。もしかして、ホシナの誕生日プレゼントの事かしら？

タイヨウ

ちがうんだ。そんな事じゃないんだよ。

ツキヨ

そんな事じゃないってどういう事？

ツキヨ

ホシナの誕生日よりも大事な事？

タイヨウ

俺にとっては大事な事なんだ。

ツキヨ

へえ、どういう用事？

タイヨウ

あのさ、俺と離婚して欲しい。

ツキヨ

え！？いきなり何を言うの。

ツキヨ

今朝まで普通に一緒にご飯を食べて、一緒の寝室で寝ていたのに

ツキヨ

突然離婚なんて、どうしてそんな事を言うの？

ツキヨ

私、何か悪い事した？

タイヨウ

そうじゃないんだよ。ただ、色々ちょっと疲れちゃって。

タイヨウ

一人になりたいんだよ。

ツキヨ

一人になりたいって、そんな理由で離婚？

ツキヨ

全然納得できないんだけど。

タイヨウ

すぐに分かって欲しいとは言わないけど、最近ツキヨと一緒にいるとしんどいんだ。

ツキヨ

え～？ほんと何を言っているのか…心当たりが全然ないんだけど。

ツキヨ

仕事で何かトラブルを抱えてて、ストレスがあったとか？

タイヨウ

仕事は関係ない。

タイヨウ

ただ、以前みたいにツキヨを愛せなくなった。

ツキヨ

そんな…理由も無しに「愛せなくなったからって。」

ツキヨ

ホシナの事はどうするの？まだ3歳なのよ。

ツキヨ

パパが大好きな娘なのに…。

タイヨウ

ゴメン、ホシナの事はツキヨが引き取って欲しい。

ツキヨ

えっ？ホシナの事も見捨てるの？

タイヨウ

いや見捨てるとかじゃないよ。たまに会う事は出来るから。

タイヨウ

ただ、その場合もツキヨが立ち会うんじゃなくて、

タイヨウ

俺の実家に連れてきて欲しいんだ。

ツキヨ

はぁ？何を言っているの？

ツキヨ

つまり自分の都合が良いときだけ、ホシナと会いたいって事でしょう？

タイヨウ

そうじゃないよ！俺だってホシナの事はカワイイと思ってる。

タイヨウ

たまに遊んでやるくらいは出来るからって話だよ。

ツキヨ

たまに遊ぶくらいじゃ、子育てしている事にならないわよ！

ツキヨ

あなた子供に対して、どれだけ残酷で身勝手な事を言っているのか、自覚ある？

タイヨウ

ワガママなのは承知の上だよ。でも、ツキヨと暮らすのは限界なんだ。

タイヨウ

それにホシナも、母親と暮らすほうが安心だろう。

ツキヨ

一人で勝手に決めないでよ。私やホシナの気持ちも考えてほしいわ。

ツキヨ

突然そんな事を言い出すなんて、本当に酷いわ…。

タイヨウ

ああ、うっとうしいなぁ。冷静に話し合いも出来ないのかよ。

ツキヨ

冷静でいられるわけないでしょう。

ツキヨ

これで取り乱さないほうが不思議よ。

タイヨウ

あのさ、それなら落ち着いたらまた話そう。

ツキヨ

また話すって？離婚の話を進めるってこと？

タイヨウ

あたりまえだろう。もうツキヨとは暮らせないんだよ！

ツキヨ

そんな…。

タイヨウ

俺はしばらくカプセルホテルに泊まる。

タイヨウ

家には帰らないから、次に話す時までに考えておいてくれ。

ツキヨ

嫌よ。私、離婚はしないわ！

タイヨウ

ゴネてもムダだよ。じゃ。

ツキヨ

ちょっと！あなたってば。

ツキヨ

そんなに簡単に決められないわよ…。

～1週間後～

ツキヨ

お義母さま、ご相談があるのですが…。

テンコ

あらツキヨさん。どうしたの？ホシナちゃんは元気？

テンコ

最近あまり孫に会えてないから、どうしてるのかと考えていた所よ。

ツキヨ

すみません、ご無沙汰しておりまして。

ツキヨ

私もタイヨウさんも、仕事が少し立て込んでいましたので。

テンコ

まあ、お仕事の事で何かあったの？

テンコ

二人とも働くのも程々にね。

ツキヨ

お仕事は順調なんです。けど、タイヨウさんの事で少し問題がありまして…。

テンコ

タイヨウが？あの子ったら、何かしたの？

ツキヨ

あの…申し上げにくいんですが、実は先日、

ツキヨ

突然、離婚したいと言い出したきり、家に帰ってこないんです…。

テンコ

何ですって！離婚したい、ですって？

テンコ

しかも家を出て行ったなんて。なんて無責任なの！

ツキヨ

なぜ急に離婚しようと言い出したのか、全く心当たりが無くて、

ツキヨ

ホシナの面倒も見なきゃいけないのに、夜も眠れないんです。

テンコ

なんて事…そんな状態じゃ、あなたが倒れてしまうわ。

ツキヨ

ご心配して下さってありがとうございます。

ツキヨ

私、両親もいないので、誰も相談できる人がいなくて…。

テンコ

辛いわね。私で良ければ、いくらでも頼りなさい。

テンコ

ホシナちゃんは、どうしているの？

ツキヨ

ご飯を食べさせることと、保育園に通わせる事だけは、

ツキヨ

何とか出来ています。でもパパが帰ってこないから、娘も不安みたいで。

ツキヨ

時々、夜泣き出す事があるんです…。

テンコ

なんて事かしら…タイヨウの奴、こんなに小さい娘を放っておいて

テンコ

一体どこで何をやっているのか。

ツキヨ

あの…すごく申し上げにくいんですが、もしかしたらタイヨウさん

ツキヨ

他に好きな人が出来たのかもしれません。

テンコ

心当たりがあるのね？

ツキヨ

はい。何年も前から、出張が多いお仕事ではありましたけど、

ツキヨ

出張中は連絡が取れない事が多いし、普段から残業が多い割には

ツキヨ

お給料に残業手当がついていなかったりするんです。

テンコ

なるほどね…仕事だと言って、誰かに会いにいっているかも、という事ね？

ツキヨ

はい。

テンコ

私にもそういう事が昔あったから分かるわ。

テンコ

浮気しているかもって、女のカンが働いたのね。

ツキヨ

一度疑い出したら、もう、そうだとしか思えなくなっちゃって。

ツキヨ

不安なんですけど、証拠も掴めないですし。

テンコ

証拠を掴む方法はあるわよ。

ツキヨ

え？どうやって、ですか？本人が帰宅しない事にはスマホも見れないですし、

ツキヨ

車を持っていないから、ドラレコとかで証拠を掴む事も難しいんですが…。

テンコ

そこは私に任せて。出来るだけお金をかけずに、証拠を掴む方法があるわ。

ツキヨ

ほんとですか？

テンコ

ええ。多少、時間は掛かるかもしれないけど。

テンコ

ただ、本当にタイヨウが浮気しているのなら、ツキヨさんにはつらい結果になるわよ。

ツキヨ

はい。覚悟します。それで本当の事が分かるなら…。

テンコ

そう。それならきちんと調べましょう。

テンコ

でもその前に、ツキヨさんはちゃんと体を休めた方がいいわ。

テンコ

ホシナちゃんの事も、私が見てあげるから、明日そちらの家に行くわね。

ツキヨ

え、本当ですか。それはすごく助かります！

テンコ

ええ、ツキヨさんとカワイイ孫の為だもの。

テンコ

ばあばを頼ってくれて嬉しいわ。

ツキヨ

ありがとうございます。本当に何とお礼を言ったらいいのか…。

テンコ

いいえ。出来損ないの息子が一番悪いのよ。このくらい、やって当然だわ。

テンコ

だから、タイヨウの事は二人でなんとかしましょう。

ツキヨ

はい。やり直せるのなら、良いんですが…。

テンコ

どうなるか分からないけど、私はツキヨさんとホシナちゃんの味方よ。

ツキヨ

うれしいです。お義母さまにそう言っていただけて…。

テンコ

こちらこそありがとう。どうか少しでも休んでちょうだいね。

ツキヨ

はい…。

～1週間後～

タイヨウ

なあツキヨ、この間の話だけどさ、ちゃんと考えてくれた？

ツキヨ

考えたわよ。でも、あなたの思い通りになんてさせないわ。

タイヨウ

なんで？もう一緒に暮らすのは無理だって言ったよな。

タイヨウ

俺の気持ちは何も分かってくれないのか。

ツキヨ

あなたの気持ちというか、事情は分かっているわよ。

ツキヨ

あなたが何を隠しているのかも、もう知ってる。

タイヨウ

へ？

タイヨウ

俺に隠し事？あるわけないだろ、そんなもの

タイヨウ

適当な事をでっち上げて、俺を脅そうとしても無駄だよ。

ツキヨ

適当な事じゃないわよ。ちゃんと調べたもん。

タイヨウ

はぁ？お前に何が出来るって言うんだ？

タイヨウ

仕事と子供の事しか考えられない、堅物のお前になにが分かる？

ツキヨ

分かるわよ。あなたがとんでもないクズだって事もね！

ツキヨ

何も知らないと思って、私の事をバカにして。

ツキヨ

自分の子であるホシナの事も平気で踏みにじるアンタが許せないわ！

タイヨウ

オイオイ…また興奮し出したな。

タイヨウ

だから冷静になれよ。話し合いにならないじゃないか。

ツキヨ

そうね。話し合いにならないから、第三者に入ってもらいましょうか。

タイヨウ

へ？第三者って一体誰の事だ？

ツキヨ

～ツキヨがテンコをLINEグループに招待しました～

テンコ

はーい。私が第三者よ。

タイヨウ

母さん！なんでツキヨの側にいるんだよ！

テンコ

黙れ！この〇カ息子！

タイヨウ

え？か、母さん？なんで俺を叱るの？

タイヨウ

俺なんにも悪い事はしてないよね？怒るなら嫁のほうだろ！

テンコ

ツキヨさんは何も悪くない！あんたがあまりにも愚かだからだよ。

テンコ

まったく、一番似て欲しくない所が、父親に似るなんて…。

タイヨウ

え、何を知ってるの？

ツキヨ

ええ、もう全部知っているわよ。

ツキヨ

お義母さまが、知り合いの探偵さんに頼んでくれたの

ツキヨ

あなたの身辺をしっかり洗ってくれたわよ。

テンコ

タイヨウ、あんた女と暮らしているね？

テンコ

女が暮らすアパートに出入りする様子が、バッチリ撮れたから。

タイヨウ

な、なんだって？いつのまに調べたんだ？

ツキヨ

探偵さんが確認してくれた住所に、私も行ってみたわよ。

ツキヨ

あなたの浮気相手は妊娠しているようね。

ツキヨ

大きなお腹をかかえて、あなたと一緒に産婦人科に行っているのも見たわよ。

タイヨウ

おい、人の後を付け回すなんて、お前はなんて〇しい女なんだ！

ツキヨ

〇しいのはあなたでしょう！色々調べて分かった事だけど、

ツキヨ

あなた、5年も前から浮気していたんですってね。

テンコ

これも、私の知り合いの探偵さんが調べてくれて分かった事よ。

タイヨウ

え、そうなの？そこまで調べたって事？

ツキヨ

ええ、そうよ。徹底的にね。

テンコ

アンタのやっている事は、浮気して私を捨てたアンタの父親にソックリよ。

テンコ

真面目に子育てしてきたのに、こんな形で家族を裏切るなんて！

ツキヨ

あなた、私やホシナの事ばかりじゃなくて、お義母さまの事まで裏切ったわね。

タイヨウ

なんだよ、二人して俺を責めるのかよ。

タイヨウ

だって仕方ないじゃないか。彼女、妊娠しているんだし。

タイヨウ

向こうの親からも、早く嫁と離婚して責任を取れって、迫られてるんだよ！

テンコ

何ですって！相手の親も不倫を認めているって事？

タイヨウ

まあ、そういう事になるな。

タイヨウ

娘が幸せになれるなら、別に何でも良かったらしい。

テンコ

信じられない…同じ親でありながら、娘の不倫を容認するなんて。

ツキヨ

どうやら常識の範囲外の人達のようね。

ツキヨ

あなたも、あなたの不倫相手達も。

タイヨウ

お前なんかに言われたくないね。

タイヨウ

俺だってこの5年間、彼女と一緒になりたくて

タイヨウ

ずっと我慢してきたんだぜ？いい加減開放してくれよ。

テンコ

アンタに被害者ぶる権利なんかない！

ツキヨ

そうね。私達をこんなに傷付けた責任は、しっかり取ってもらうわ。

タイヨウ

へ？

タイヨウ

責任ってどうやって取るの？だってもう離婚するでしょ？

ツキヨ

ふざけんな、このド低能野郎！！！

タイヨウ

ひぃっ。何いきなりキレてんの？

ツキヨ

あなたと不倫相手にはそれぞれ、慰謝料を請求するからね！

ツキヨ

それからあなたには、養育費も請求するよ？

タイヨウ

え？彼女妊娠して仕事を辞めたから、無職なんだけど。

タイヨウ

そんなか弱い彼女から、お金をむしり取るのか？

テンコ

あたりまえだろ、この〇ホ息子！

ツキヨ

あのねぇ、お金を取られる覚悟も無いのに、不倫なんかするなって事なの。

ツキヨ

結婚して7年も経つけど、こんなに〇カだとは思わなかったわよ。

タイヨウ

そんな…。

タイヨウ

なあ、母さんは俺を見捨てないよな？

タイヨウ

俺、そんなに金を持ってないんだ。

テンコ

だから？

タイヨウ

代わりに慰謝料と養育費、払ってくれないかな？

タイヨウ

せめて俺の分だけでも…。

テンコ

もちろん、お断りだよ。

タイヨウ

え、だめなの？

ツキヨ

あなた、自分だけ楽しようとしちゃって。最低ね。

ツキヨ

浮気相手さんも、これからさぞ苦労するでしょうねぇ。

タイヨウ

ツキヨ、せめて金額は軽くしてくれるよな？

ツキヨ

まさかぁ。離婚はしてあげるけど、がっつり相場以上の金額は請求するからね。

ツキヨ

今日あたり彼女のアパートに内容証明が届くはずだから

ツキヨ

覚悟を決めておきなさい。

テンコ

アンタは勘当だよ。元気でね。

ツキヨ

そういうわけで、さようなら。

タイヨウ

マジか…。

～後日談～

ツキヨ

それから3か月後、数回の話し合いを経て、

ツキヨ

タイヨウとその不倫相手に慰謝料を払わせる事に成功しました。

ツキヨ

タイヨウには500万円、不倫相手には250万円を請求したのです。

ツキヨ

またタイヨウには、毎月の養育費を7万円払ってもらう事になりました。

ツキヨ

夫と不倫相手はすぐ再婚したものの、

ツキヨ

新婚の内からスッカラカンとなった為、ケンかが絶えず

ツキヨ

子供も生まれていないのに、早くも離婚危機に陥っている、

ツキヨ

と、夫の知人から聞きました。

ツキヨ

芸能人じゃあるまいし、お金も大して持ってないのに

ツキヨ

不倫なんてするものじゃありませんね。

ツキヨ

私はというと、お引越しをして、娘のホシナと新たな生活をスタートさせました。

ツキヨ

元義母とも時々会って、娘の事も可愛がってもらい、

ツキヨ

穏やかな日々を送れるようになりました。

ツキヨ

これも、頼もしい元義母が私の味方になって下さったお蔭だと思います。

ツキヨ

もしこの先、元義母に何かあったら、私が支えていこうと思うのです。

ツキヨ

大切な人達と、これからも楽しく暮らしていこうと思います！

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結城真矢

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