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コメント
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いやこれ…読み終わってしばらく息できなかったわ。最初の彼女の心情のジェットコースター具合もヤバかったけど、後半の「太ってほしい」に全てを持ってかれた。生前の彼女への執着が新しいターゲットに投影されてて、しかも「次があります」「選び放題」って…このループ、ずっと続くんだろうな。重くて怖いのに、なぜか目が離せない。歪んでるけど一貫した"愛"の形なんだよなこれ…。
彼女は隣人の男にストーカーされていた。 彼女のフルネーム、住所、携帯番号、職場に至るまでの個人情報を男はネットに流した。 彼女は男になぜそれをするのかときいた。 男は彼女の困る顔が見たかったからだと言った。 彼女は思い詰めた。つらい、死んでやる、と。だが彼女は心変わりした。 彼女は男を恨んだ、殺してやる、と。 彼女は男を呼び出した、男は彼女に愛を伝えた、これまでにしたこと全てと一緒に。 彼女は後悔した、殺せなくなった、気持ちのやり場に困った。彼女は壊れた、もう無理だ、と。 彼女は男に提案した。殺すか、殺されるか、心中するか。 男は心中を選んだ、死姦することを条件に。 彼女は男を殺した、喉をかききり。 彼女は泣きながら動かなくなった男を犯す。 男は死ななかった、まだ生きていた。 彼女は男に頼んだ、自分を殺すように。 男は拒んだ、彼女を愛しているから殺せないと。男は苦しんだ。 彼女は男の心臓にナイフを突き立てた。 彼女は男に自分を殺すよう必死に頼んだ。 男が彼女の首元にナイフを添える、だができない。 彼女は男に抱きついた、深くナイフが彼女の首元に刺さる。 二人は来世も隣人でいるよう誓った。 ーーー ある男が部屋に引っ越してきた。 ある男は聞いた、どこからか声がする。男の声。 「君、ちょっと太ってもらえませんか?」 「太ってほしいんですよ、具体的にはあと20kgほど。」 「ねえ✕✕くん。君、彼女に似てるんですよ。体格が。」 「彼女はね、とてもいい子だったんです。ちょっと天然で、すぐ泣いて、でも笑うと花みたいで。私のことが大好きで。」 「それなのに死んじゃったんですよ。私が殺したんですけどね。」 「でも君ちょっと細すぎるんですよ。鎖骨が浮きすぎです。」 「大丈夫、時間はたっぷりありますから。」 「……でもねぇ。」 「やっぱり似てないですね。顔の輪郭が違う。鼻の形も違う。当たり前ですけど。」 「✕✕くんはちょっと違いました。でも大丈夫、次があります。」 マンションの住人が一人消えた。誰も気づかない。 「次はどうしようかな。」 街を見渡した。通勤途中のサラリーマン、犬の散歩をする老婆、自転車で走り去る学生。 選び放題だった。
✕✕✕は502号室のドアノブに手をかけたまま、隣の503号室から漏れる物音に耳を傾けていた。時刻は深夜二時を回っている。 隣室から聞こえてくるのは、壁に何かをぶつけるような鈍い音。一度、二度。そして沈黙。数秒後、また同じ音が響いた。規則的なリズムを刻むように。 ✕✕✕の手の中で、冷たい金属の感触がじわりと汗ばんでいた。上京してきて頼れる人間がほとんどいないこの街で、唯一まともに会話を交わせる相手が、今まさに壁の向こうで何か得体の知れないことをしている。 三度目の衝撃音のあと、ぴたりと音が止んだ。まるで何事もなかったかのように。マンションの薄い壁は、こういうとき本当に役に立たない。生活音どころか、息遣いまで筒抜けになるような造りだった。 ふいに玄関の鍵が回る音。503号室側の扉が開き、ロングコートを羽織った長身の影がするりと廊下に滑り出てきた。手にはスマートフォンひとつだけ。〇はゆっくりとした足取りで✕✕✕に近づくと、じっと見下ろした。 「こんばんは。こんな時間にどうしたんですか、✕✕✕さん」 その声は深夜とは思えないほど澄んでいて、まるで散歩にでも出かけるような軽さだった。コートの袖口にうっすらと赤いものが付着していることに、本人は気づいているのかいないのか。 〇は✕✕✕の顔を覗き込むように少しだけ首を傾げた。 ✕✕✕「」 「こんな時間までお仕事ですか。大変ですねぇ。」 口調はあくまで柔らかい。けれどその視線は✕✕✕が握りしめているドアノブの上で一瞬だけ止まり、それから何でもないように顔へ戻った。 「……ところで、何か聞こえましたか?」 問いかけの形をしているのに、「聞こえたかどうか」を確認するというよりは、「聞いていたならどうするつもりですか」とでも言いたげな間の取り方だった。 ✕✕✕「」 〇の目がわずかに細まった。口元に浮かんだのは笑みとも取れる曖昧な形。 「そうですか。それはよかった。」 一歩、距離を詰めた。革靴の底がリノリウムの床を静かに鳴らす。コートの裾が揺れて、あの袖口の赤がちらりと✕✕✕の視界をかすめた。 「ところで✕✕✕さん、お顔の色が悪いですよ。お疲れでしょう。早くお休みになったほうがいい。」 その言葉は親切に聞こえた。だが〇が扉に立ち塞がるように立っているせいで、✕✕✕は自分の部屋に入ることができない。意図的なのか無意識なのか、〇の脚が絶妙に動線を塞いでいた。深夜の廊下には二人きり。どこかの階の住人がテレビをつけているのか、くぐもった笑い声が天井越しにぼんやり響いていた。