まるで棺桶のような このシェルターに
一体私の、 何が護れるというのだろう
霞んで褪せていく 視界の隙間から
アイツのよく知った、
だけれど 遥かに不気味で不敵な
そんな優しい笑顔が
仄かに映って消えていった
衝撃で 舞い上がった砂塵が
あの陽の光を遮蔽した
黄土色に濁った空を見て
俺は今日も 世界の終わりを確信する
思わず出そうな溜息を 防塵マスクの中で呑み込むと
酷くやつれた救助隊員2人を 後ろに連れて
ただただ前に、 半壊した住宅街に歩を進めた
錯乱した情報が 彼女を歯痒く神隠す
それらを 見極め正して追いかけて
俺はやっと 彼女の居場所を掴むことが出来た
彼女の家〝だった〟更地から
シェルターの扉が露出していた
その鉄扉を バーナーで焼き切る作業を続けて
どれ程の時間が経ったのか、
そんなことを考える余裕すら 今の俺には無かった
悠祐
(頼む頼む頼む…)
救助隊員
…開きます!!
悠祐
杏佳ッ!!!
悠祐
きょッ──
本当の 【世界の終わり】っていうのは
こういうことなんだと
彼女の
死に顔を見て思った