田川 航
出だしは、好調だった。
田川 航
夏休み前の朝ということもあり、ぼくはいつになくさわやかに目が覚めた。
田川 航
雲ひとつない夏の空を見上げたぼくは、今日も何事もなく過ごせる予感に包まれていた。
田川 航
学校までの足取りも好調だ。しかし、油断は禁物。
田川 航
昇降口に入った僕は、素早くあたりを見回して、クラスの中で一番嫌いな野崎勇輝のげた箱を確認した。
田川 航
げた箱の中には上履きではなく、すでにスニーカーがあった。もう登校している証拠だ。
田川 航
上履きに履き替えた僕は、いっしゅん迷ったが、ぬいだ自分のスニーカーをげた箱の中に入れることにした。
田川 航
迷ったのは、くつを入れないで教室に持っていくかどうか考えたからだ。ぼくのくつは、このげた箱からよく消える。
田川 航
クラスの悪ガキ大将の勇輝とその一味が、ここで脱いだスニーカーをどこかへ隠してしまうのだ。
田川 航
くつがなくなったと、ぼくが先生へ言いに行くと、いつのまにか、くつはげた箱に元通りになっている。
田川 航
そんなことが数え切れないほどあった。







