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–演習場–
雪
若い訓練兵
若い訓練兵
ジリジリと照りつける陽光の下、若い訓練兵たちはひたすら走らされていた
この地域は比較的涼しいものの、長時間の訓練となると焼かれるような暑さだ
それを見る雪は表情ひとつ変えず笛を鳴らしている
一方、ひと足先に単独任務に赴けるようになった矢城や美羽たちは、彼らから外れた場所で武具演習を行っていた
幸い、日陰だ
矢城
弓を手に持ったまま呟く
界人
矢城
突然背後から聞こえた低く通る声に驚き、思わず飛び跳ねる
矢城の背後に立つ隊長–界人は、いつも通りの無表情で彼を見下ろす
矢城
界人
矢城
そこまで言わなくていいじゃないか、と矢城は眉をハの字に曲げた
すると、界人の後ろからぴょこんと真が顔を覗かせた
呆れ半分、面白半分といった表情だ
真
界人
真
界人
真は一瞬ぽかんとした後、はっと驚いた顔をし、そして笑った
その横には、呆れたようにため息をつく界人
何もなかったような日常
しかし確かにあの日の会話はあった
僕は僕でいていい、か
糸が切れたように、矢城は失笑した
矢城
真
界人
界人
真
矢城
矢城
そこにあるのは、素直な言葉と笑顔だった
あの日、界人さんが僕に言ったこと
界人
矢城
界人
ゆっくりと、噛み締めるように息を吸う
界人
矢城
ただ事実を述べるだけなのに、この人はどうしてそんなに悲しそうな顔をするのだろう
界人
界人
矢城
矢城
過去がわかるんだから、いいことじゃないか
そう言おうとした
けれどやめた。無言で窓の外を見つめる雪さんと、懇願するように僕を見つめる界人さん
とにかく、だめなんだろう
矢城
記憶がない。過去がない
だから彼女は、あんなにも無邪気なんだ
…だから彼女は、あんなにも、無責任なんだ
真
矢城
前から声をかけてきた彼女は隊服に着替えていた。これから任務なのだろう
可愛い後輩…
真を見ると、矢城の脳内にその言葉がフラッシュバックしてしまう
またムカついてきた、と矢城は眉間に皺を寄せる
真
矢城
真
矢城
矢城
少し照れたように彼はそっぽを向いた
真は満足そうに頷いた
真
真
そう言って横を通り過ぎる
自分より少し背の低い先輩の頭上で、アホ毛がふわりと揺れる
矢城
思わず声をかける
彼女は驚いたように振り向いた
矢城
矢城
少しの間があってから、真は親指を立て顔を綻ばせた
真
美羽
美羽
美羽
…けど
そしたら、わたしはどうすればいいの?
わたしは、誰のためにがんばればいいの?
第二章 完
#ファンタジー
#しのコン