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るか
放課後の校庭は雨粒でザワついていた
私は、昇降口で立ち尽くす
傘を家に忘れてしまったの
靴の先に雨粒が触れる度、体が小刻みに震える
???
るか
恐る恐る顔を上げると
ほのお
なにかを感じる、懐かしい人がいた
ほのるか
設定 るか→小さい頃幼馴染と遊んでいると目の前で幼馴染が轢かれ死んでしまう。感情を隠す癖がある。るとの姉 ほのお→小さい時に死んでしまったが、今は閻魔大王として生きている。たまに現世に来る。現世の時の記憶はないが、大切な子がいたのは覚えている
すた~と
その人は、黒い傘をさした少年がいた
長い襟足の先が少し濡れている
少しタレ目な瞳の色は、真紅色だった
見知らぬ少年だ。そう思ったが
私の胸は期待を裏切られたかのように高鳴った
ほのお
ほのお
るか
ほのお
仕草も、声のトーンも
幼馴染に似ていた
年齢は?名前は?
聞きたいことだらけだったが、今は話す余裕が無い
ほのお
ほのお
ほのお
その話し方が。声のトーンが
私の記憶の中のあなたと重なる
…なんで、いるの…っ?
るか
とりあえず、一緒に歩いて帰ることにした
話していくうちに、やっぱり幼馴染のあなたと全てが重なる
るか
ほのお
るか
君が、「神代 炎」と答えてくれるのを期待してる自分がいた
君は少し間をあけ、口を開く
ほのお
その言葉を聞き、耳を疑った
私の目はあほみたいに緩くぼうっと広がる
閻魔。死者を司る存在
地獄の番人
炎じゃ、ないの…っ?
でも、君と私の手が触れた時
小さくて暖かい手が私の手を包み込む感触
太陽が差し込んだように笑う顔
鈴の音が聞こえるかのような綺麗な声
それが一気にフラッシュバックしてきた
私の目から、暖かいものが伝った
ほのお
ほのお
るか
涙が止まらない
あなたのこと、ずっと覚えてる
忘れるなんて、できっこない
ほのお
そう言いながらも、声は優しい
本当に私の事心配してくれてると感じ、さらに涙が溢れた
るか
ほのお
るか
君は目をゆっくりと細めた
その目が少し揺れた
ほのお
るか
るか
るか
るか
るか
…どうかっ、思いが伝わりますように…
私の大好きな炎へ届け…
君は言葉を選ぶように、ぽつりと話す
雨の日の湿気が、私たちだけを包み込むよつな感覚がする
雨の日の湿気をこんなにも好きだと思えたのは初めてだった
ほのお
ほのお
ほのお
ほのお
ほのお
ほのお
君は、ふっと、優しい顔で微笑んだ
その顔が、やっぱり炎にそっくりだったの
私は少し泣きそうになった
ほのお
私は言葉を失った
思いもよらぬ頼みごとに、体の力が抜けていく
私は頬を濡らしたまま
るか
と、頷くことしか出来なかった
私たちは、止めていた足を動かす
街頭の光が淡く広がる地面を、二人分の足音をならして踏みしめる
私はちらっと、隣の君の顔を見上げる
やっぱりその瞳は君の瞳だったが、どこか切り替わるように薄い灰色を帯びている
まるで、長い間たくさんの顔を経てきた人の目だ
るか
ほのお
君はふわりとこちらを見る
さっきの薄い灰色の帯はもう見えなかった
るか
るか
るか
言葉は呼吸と一緒に弾けそうになった
私は笑って喉にしまう
恥ずかしくて、私の頬が熱を帯びる
るか
るか
るか
君はすぐ答えた
ほのお
暖かい、懐かしい笑みが、私の胸を渦巻かせる
黒い傘の下、私たちは静かに寄り添う
雨はいつの間にか小雨になっていた
別れ際、君はふいに私の手を握ってきた
冷たくない、弱々しくない手
死にゆく炎の手じゃなかった
それに安心した
ほのお
るか
あ、とめちゃった…
別れたく、ない…
ほのお
でも君は嫌がる素振りを一切見せず、私に笑いかける
るか
静かな時間が流れる
少し間を開けて君は口を開く
ほのお
と、冗談を言うように優しく笑う
その顔に、私はまた惚れてしまった
"閻魔"の君も、大好きだよ
ほのお
るか
炎は濡れた地面を踏み締め走っていってしまった
雨は上がっていた
胸の中で、じんわりと広がる暖かい気持ち
炎の忘れられた記憶が戻るかどうかはわからない
でも今は、そんなことどうでもいい
今の私を好きになってもらえればいいから
黒い傘の下で見た彼の優しい笑みを胸に浮かべながら私は未来へと歩く
るか
るか