《少女は沈む》
窓の外ばかり見つめていた。
風になびいた教科書がパラパラとめくれていく。
数学教師
教師の声が響き渡る……
黒板に書かれた数式の羅列の中に何を見いだせると言うのだろう。
数式で世界を感じたいとは思わない。
また、文学で世界を感じたいとも
社会の法律や制度を見て感じようとも思わない。
周りの人は皆、懸命に黒板に書かれた数式をノートに殴り書いている。
この人たちは一体、何処にたどり着きたいのかしら……
学校から家に帰ってきた
母
今日も儀式を終えた。
今日は何だか、いつにもまして、陰鬱な気分を感じていた。 私は何処かへ行きたくなった。
明日は休日らしいから何処かへ行こう……。 ベッドの中でそう思った。
《翌朝 》
ガチャ!
母
母
母
母
母
バタン!!
ドアを勢いよく閉めた。
少女は駆けていった
息が切れて、
一人で寝そべった。
川は流れるし、小鳥は囀ずる。
日は照るし、木葉は舞い散る。
一つに重なり合って、山は高らかに歌う。
これが音なんだと思った。
少女は耳をすませた。
そして、静かに目を閉じた。
見上げると、木の梢の方に果実がなっていた。
私は手を伸ばしたけれど、届かなかった。
背伸びをしてみたけれど届かなかった。
力を込めてジャンプをしたら、意外と楽に届いた。
力の加わった木の枝は鞭のようにしなり、 ミクロな振動となってやがて止まった。
私は取った得体の知れぬ、赤い果実をガリリと噛んだ。
苦いような酸っぱいような、舌先の痺れる味がして、思わず吐き出した
そして、少女は笑った。
日も暮れて、宵が私を包んでいく。
そして足を波に踏み入れた……
波の音が時の移ろいを示す……
月の傾きが……星の小さな輝きが……
あなたたちの囁きが……
私に動きを与えているの
沈む沈むよ、私は沈む
耳に残るのは、あなたたちの囁き…
帰る場所を与えてくれる
普段は大人しいくせに……
あなたたちのせいじゃないのは分かってる…
海に浸った私の体……
月光の眩しい夜に……
これが光なのねと囁く
ふく風よ、やまないで
打ち付ける波よ、止まることを知らないで
夜明けを待つ小鳥たちよ、囀ずることをやめないで
私の足取りは止まらない
沈む沈むよ、私は沈む
ここが私の……私たちの故郷じゃないかしら……
水中から聞こえる水面を打ち付ける波の音
記憶にはないけれど、遠い昔に聞いたような……
ほのかに温かい水の中で私はそっと手を伸ばす
苦しい……
けれど、辛くはないの
次第に楽になるでしょう……
だって私の故郷だもの
大きく水を吸い込んでもっと深くへいきましょう……
沈む沈むよ、少女は沈む
《少女は沈む》完
コメント
16件
こんな下僕にフォローありがとうございました… 物語拝見させてもらいました。何処かしら小説家みたいな 物語の書き方をしていたので実に興味深いなと思いました あ、お礼の品に♡111個と🍮を置いて下僕は去ります。
フォロー失礼します!