僕は残りの時間をどう過ごすのか伝えるために、家族3人を病室に呼び寄せた
お父さん
………
お母さん
………
お姉ちゃん
………
青
(僕のせいでそんな顔させてごめんなさい…でももう、終わらせるから…)
青
僕、延命治療はしたくない
僕の言葉を聞いて、みんなが弾かれたように顔をあげる
お父さん
なっ、何を……!
青
残り少ない時間を辛い治療に耐えながら過ごすなんて、嫌だ
青
最後くらいは薬に苦しめられたくない。これから歩むはずだった人生を生きたい。…だからお願いがあるんだ
青
……県外で、一人暮らしをしながら高校に通わせて欲しいです
お母さん
………っ、こ、こんな時に、バカな冗談はやめてちょうだい!
青
病室だよ、トーン落として
お母さん
だって……!
青
冗談でこんなこと言ったりしない。僕は本気だよ
青
(まあ、そうだよね。いきなりこんなこと言われたって、理解できないよね)
青
中学を卒業したらほとんどの子は高校に行くんでしょ?お姉ちゃんもそうだったし
青
なのに、せっかく高校に入れたと思ったのに、病気のせいで1回も行けなくて
青
普通に学校に行って授業を受けて…そういう何気ないことが幸せだったって…今なら分かるよ
お母さん
青…
青
だからさ。どうしてももう1回、普通の男子だった頃と同じように、学校に通いたいって思った
お姉ちゃん
……っポロポロ
お父さん
………お前が高校に通いたいという気持ちは、よくわかった
お母さん
あ、あなた……!?
お父さん
でも、なんで県外なんだ?家から通える範囲にも、高校は沢山あるだろ
青
誰も、僕を知らないところに行きたい
お母さん
え……?
お姉ちゃん
どういうこと…?
青
僕ね、自分で言っちゃうけど、学校の中では結構有名なんだよ。大会を勝ち上がってく男バスの中でも、すっごく上手かったんだから!
お母さん
青……
青
そんなやつがさ、いきなり学校に来るなんて、怪しいじゃん。何かあるって、みんな勘ぐるに決まってる
青
家から通える高校はあるけど、同じ中学の子が進学してるかもしれないでしょ?そしたら、僕がずっと休んでたことが広まっちゃうかもしれない
お母さん
それは…
青
それに、同じ中学の子がいなかったとしても、友達の友達とか…このあたりの学校だったらいくらでも繋がれる
お母さん
だからって、一人暮らしなんてしなくても……
青
(そうだよね。言っちゃえば、家族全員で引っ越すことだってできる。余命わずかの息子を、1人で生活させたりはしないよね)
青
(だから、ここからが1番大事)
青
僕、末っ子でしょ。お姉ちゃんとは年もちょっと離れてるし、3人にはずっと甘やかしてもらってたなーって思うんだ
青
だから、身の回りのことを全部しなくちゃいけない環境に自分を置きたい。最後くらいは、自分の足で立ってみたい
青
(お父さんもお母さんもお姉ちゃんも、そんなに顔をくしゃくしゃにして泣かないでよ…)
青
今まで、いっぱいワガママ言ってごめんなさい。でも……これで最後にするから
青
お願いします。僕の願いを……叶えてください
深く頭を下げて望んだ願いは、最終的に聞き入れられた