満月を見ると、いつも思い出す
彼と、彼等と笑った日々を
時には誰かが告白されている場に 立ち会って
時には授業をサボって屋上で寝て
時には、ずっと一緒だと月の下で 誓って
そんな日々が続くと思っていた
高校を卒業して、大学に進んで
普通に働いて、普通に暮らす
そんな日々を送れると、思っていた
あの子に、出会うまでは
確か、暑い夏の日だったと思う
学校が終わって合流して、ゲームセンターにでも寄ろうかと話していた
神使 牙桜
神使 牙桜
日野 李葉
神使 牙桜
神使 牙桜
如月 盧亜
神使 牙桜
如月 盧亜
神使 牙桜
日野 李葉
僕は1つ上で、2人は同い年
でも盧亜はたまに、僕より年上に見える
牙桜が子供っぽすぎるせいだったのかなぁと、今なら考えられる
神使 牙桜
神使 牙桜
如月 盧亜
日野 李葉
シャワシャワと、蝉の声が嫌に耳に残っていた記憶がある
忘れたくて、消したくて
僕達はガヤガヤとしたゲームセンターに足を運んだ
日が落ちて、気温も少しマシになったところで店を出る
牙桜は結局、小さなくまさんのぬいぐるみしか取れてなかったなぁ
盧亜はクレーンゲームが上手くて、袋いっぱいにとっていた
僕だって、それなりには取れていたはずだ
神使 牙桜
日野 李葉
如月 盧亜
神使 牙桜
とぼとぼと歩いている牙桜を、盧亜と一緒に笑ってたっけ
楽しかったなぁ
そんな牙桜は、後にも先にもこの1度だけだった
立ちっぱなしで疲れた、歩きたくないという牙桜の要望を聞いて、公園で休むことにしたんだっけ
その頃にはもう、日は完全に落ちてたなぁ
神使 牙桜
日野 李葉
如月 盧亜
如月 盧亜
本当にそうだ
世の中、何があるかわからない
…本当に
暗くてよく見えなかったが、小さな子供が倒れていることに気がついた
牙桜が駆け寄って、声をかけて
盧亜が背中に乗せて、僕の家まで運んで
そして僕が手当てしたんだったっけ
…こんな選択、取らなければよかったと
今でも後悔している
僕が手当てをしている間、子供は怯えてるような、警戒しているような
そんな目を向けていた
日野 李葉
優しく手当てして、頭を撫でた
盧亜が来て、この子の無事を確認していた
…この時、少しでも
少しだけでも、牙桜が居ないことに違和感を持っていれば
そしたら、何かは違ったかもしれないのに
僕がいない、別の部屋では
牙桜が血塗れになって、それを盧亜が手当てしてるだなんて知りもしなかった
神使 牙桜
如月 盧亜
如月 盧亜
如月 盧亜
神使 牙桜
神使 牙桜
如月 盧亜
如月 盧亜
神使 牙桜
神使 牙桜
如月 盧亜
神使 牙桜
僕だけ何も知らなくて
僕だけが、除け者みたいで
そして彼らは、裏社会に足を踏み入れた
僕を、あの子供を、守るために
涼しくなり始めた秋頃の帰り道
日々疲れが見えて、憔悴していく2人に流石に違和感を覚えた
日野 李葉
神使 牙桜
如月 盧亜
日野 李葉
日野 李葉
日野 李葉
日野 李葉
日野 李葉
この時は考えるための理性なんてなくて
勝手に被害者振って、2人を傷つけてたなぁ
2人は優しいから、笑って宥めるだけ
…それが、当時の僕には余計に苛立ちを覚えることだった
神使 牙桜
神使 牙桜
如月 盧亜
如月 盧亜
日野 李葉
日野 李葉
如月 盧亜
神使 牙桜
日野 李葉
日野 李葉
神使 牙桜
如月 盧亜
如月 盧亜
如月 盧亜
如月 盧亜
神使 牙桜
如月 盧亜
神使 牙桜
僕を置いて、2人で笑うこの空間が 大嫌いだった
2人よりもお兄さんのはずなのに
今は、自分が子供みたいで
神使 牙桜
神使 牙桜
如月 盧亜
如月 盧亜
日野 李葉
何も言えなくて
何も言えない自分に、2人に腹を立てている自分に余計に腹が立って
俯いて、目に涙を貯めていた
そんな自分に2人が気づかないはずもなく
牙桜は肩を組んで、盧亜は頭を撫でてくれた
そんな会話をした、丁度1年後だった
盧亜が、死んだのは
家でスマホを見ていた僕は、牙桜から連絡が来て何を思ってたのだろう
もうそれすらも、曖昧だ
日野 李葉
日野 李葉
僕が着いた頃には、もうダメだったらしい
あの子供を追っていた組織に遭遇して、殺された
牙桜は顔や服に血が沢山ついていた
それが牙桜のものなのか、盧亜のものなのか
はたまた別の誰かのものなのかなんて、知りたくもない
日野 李葉
日野 李葉
日野 李葉
嘘をつかれていた事実と、盧亜が死んだ事実を目の当たりにして、情緒がおかしかったと自分でも思う
…それも、目の前で親友が死んだ牙桜に、そんなことを言うなんて
本当、嫌になる
日野 李葉
日野 李葉
日野 李葉
神使 牙桜
虚ろな目で盧亜を見つめ続ける彼に
謝ってばかりで、何も言い返してこない彼に甘えて、調子に乗った
日野 李葉
日野 李葉
こんなの
牙桜が盧亜を殺したと言っているようなもので
神使 牙桜
神使 牙桜
日野 李葉
神使 牙桜
神使 牙桜
神使 牙桜
神使 牙桜
日野 李葉
日野 李葉
神使 牙桜
日野 李葉
…そういえば、牙桜と取っ組み合いの喧嘩をしたのもこれが初めてだった
傍にある盧亜の死体は、もう動かないはずなのに
どこか、笑っているように見えた
そこから2年くらい口を聞かなかったっけ
僕も高校を中退して、牙桜について行った
気がつけば1人増えて、また一人増えていった
日野 李葉
神使 牙桜
相田 託兎
神使 牙桜
神使 牙桜
相田 託兎
日野 李葉
日野 李葉
神使 牙桜
神使 牙桜
変わらず牙桜は優しかったな
しばらくして、牙桜を探していたお姉さんも入った
2人も姉がいたなんて知らなかった
お調子者の女の子が入って
静かな女の子がまた入って
理性的な女の子も入ったなぁ
気がつけば、ここはどんどん人が増えて、大きくなっていった
満月の日になると、必ず思い出す
盧亜が死んだ時のことを
牙桜は満月が近くなると、外に出て月を眺めることが多かった
神使 牙桜
神使 牙桜
いつの間に牙桜はこんなロマンチックになっていたのだろう
風が吹き抜けた
草が揺れて、僕は思わず笑った
数年が経った
あぁ、こんな記憶、要らないのに
でも最近の記憶で、脳に焼き付くように残っている
神使 牙桜
神使 牙桜
牙桜らしい最後だと思った
…そして、僕らしい有り様
また一歩、届かなかった
銃声が響いて、血が舞った
僕の頬にそれが付くと同時に、牙桜が倒れる
やめてくれ
思い出させないでくれ
もう
嫌なんだ
目が覚めた
とても、長い夢を見ていた気がする
僕の手から、ひとり、ふたりと、零れていく
とても懐かしい記憶を
日野 李葉
夢の中でさえ僕は
あの子供を嫌っているのか
嗚呼、本当に
日野 李葉
コメント
2件
うわー!!!!重い!好き!!!!でもやっぱしんどい!!!!!!!
WOW