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ぼん side
シンと静まるリビング。
誰も一言も発さない。
マッチの火が消えてしまったように
俺らが家に入って最初に見たもの。
酷くやつれ、棒切れのようになったドズルさんと
ぶつぶつ、何かずっと上の空で呟いているおらふくん。
そんな異常事態を見ても俺らは動かない。
きっと、君が居たならどうにかして
この場の雰囲気を
…………
…
もう 考えても 無駄か
………
あれ
俺はなんで
部屋にいる?
リビングに居たんじゃなかったっけ
…
食事を取っていないはずなのに
お腹が空かない
ふと気になって窓の下を覗く
俺は直ぐにその行動を後悔することになった
窓の下の地面に広がる光景。
広げられたブルーシート。
風に吹かれ、端の方が少しめくれている。
そこから少し覗く赤いシミ。
きっと君のものだ。
目を逸らしたいはずなのに
何故かそこに釘付けにされてしまう。
何かしょっぱい味がして
不思議に思う。
頬に手を触れると
ツー、と涙が流れる。
あぁ、俺は今泣いているのか。
感覚がない。
悲しいはずなのに、
悲しくない。
泣きわめきたいのに
声が出ない。
この感情を吐き出したいのに
体が動かない。
いつの間にか暗い空。
雨が降ってきた。
君の赤い花が溶かされ、
じわり、と広がる。
地面に咲き乱れる君の花。
気持ち悪くて、
どうしようもなく気持ち悪くなって吐いた。
吐いて、吐いて。
ぜーんぶ、ぜんぶぜんぶぜーんぶ。
そしたらね
苦しくない
悲しむこともない方法を思いついたんだ。
ごめんね。
1人に苦しいこと、背負わせて。
苦しかったよね。
俺らが想像もできないほど
辛かったよね。
ごめんね。
これからは、
ー俺も一緒にいるから。ー
おらふside
君が飛んだあと。
何処か遠い所へ
僕たちの手が届かないところまで
たった独りで
逝ってしまったあと。
ぐちゃっ ていう
あまりよく聞かない音がして。
頭ではこんなふうに考えていられるのに
感じていられるのに
そんな事がよく分かんなくて。
理解ができなくて。
わかんないけど
考えがぐるぐるぐるぐるぐるぐる
頭を覆い尽くして。
でもやっぱり理解ができなくて。
わかんないや。
気がついたら
僕は冷たい床に崩れ落ちて泣いていた。
わかんない。
わかんないわかんないわかんないわかんない
わからないよ!!
僕はなんで泣いてるの?
泣いてるのに
頭ではなんでこんなこと考えてるの?
第三者のように
………
しばらくして。
ドタドタ、と音がして。
何か暖かいものが体をおおった。
最初はよくわかんなかったけど
僕はそれがドズルさんだと
ドズさんが僕の体を優しく包んでくれているのだとわかった。
ドズさん
ドズさん
ドズさん
ー?
何か言っているのかな。
聞こえないよ。
ドズさん
ドズさん
ドズさん
ドズさん
ドズさん
よくわかんないけど
ドズさんが僕になにか話しかけていたのはわかった。
暫くしたら
隣の部屋から物音がした。
隣の部屋…
隣?
おんりーの部屋かな。
ドズさん、おんりーに何か用事があったのかな。
おんりー、遠い所へ出かけたんじゃなかったっけ。
………
…
え?どこへ?
今は朝早い。
時計の針は5時を指している。
こんな時間から一体どこへ行くのか。
……
…
そんな考えも
ドズルさんの叫び声でかき消された。
ずっと、ずっとずっと。
長い時間、声が続いていたような気がする。
あれ?
でも、一瞬だったような。
すぐ、終わった? ずっとずっと、続いてた?
すぐ…
終わって……
終わってよ…!!
ドズルさんが僕に掛けてくれた優しい言葉の意味は分からなかったけど。
悲痛な
空気をつんざく
叫び声は
嫌という程
僕の耳にこびりついた。
おらふくん
ぼんさん
おらふくん
ぼんさん
おらふくん
ぼんさん
おらふくん
ぼんさん
おらふくん
ぼんさん
おらふくん
ぼんさん
ー開放されたい
あれ
視界がぐにゃぁぁぁぁ
ぐにゃぐにゃ、ぐにゃぐにゃ
ぐるぐるぐるぐるぐるぐる
回って
回って
歪んで
曲がって
交わって
離れて
………
ブツンッ ていう音がして。
僕は
自分の精神が擦り切れる音を。
自分のーーーーが割れる音を。
聞いた気がする。
あはは。
あは、あは、あは
はははははははははは
楽しい。
苦しくない。
辛くない。
悲しむこともない。
もう、ひとりぼっちだって嘆くことも
メンバーに知られず寂しく泣くことも
メンバーにどう思われてるかとか
ファンからの僕のイメージはどうとか
学校での友達との接し方とか
…………
…あれ
そんな僕を
慰めてくれたのは誰なんだっけ?
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
おらふくん
ぼんside
開放されたい。
でも
僕は
”怖いんだ”
...…ナニが?
怖いことなどないだろう。
あぁ、そうか
そうだったね
俺が悩んでいる時も
アンチに苦しんでいた時も
何もかも
君はいつの間にか傍にいて。
それだけで心が落ち着いて。
君がいる。それだけでよかったんだ。
それなのに。
...
ごめん。おんりーチャン。
きっと、俺が会いたい。って
そう、言ったら。
怒るよね。悲しむよね。
でもさ、おんりーチャン。
俺は、君がいなくなることの方が
ずっと、怖くて。
ずっと、恐ろしくて。
ずっとずっと、
苦しい。悲しい。辛い。
ねぇ、おんりーチャン。
ぼんさん