リョウ
それから数十年経った時の事だった。
リョウ
その村に女の子が生まれた。
リョウ
名前は、
ケイ
レイラ?
リョウ
そう。レイラ。
リョウ
両親はレイラが産まれた時驚いた。
リョウ
自分たちの髪の色は黒で、瞳の色は緑だった。
リョウ
だが、レイラは金髪に紫の瞳だった。
ナギ
まさか浮気?www
リョウ
いいや。その村は他の村との交流はしてなくて、村人の中にもそんな人物はいなかったんだ。
リョウ
レイラはすくすくと育った。可愛らしく愛想もいいので、誰からも愛されるようになった。
リョウ
レイラが成人になる少し前、母親とレイラは御先祖様への成人になる前の儀式的なものをしに、村のはずれへ行った。
ナギ
絶対婆さんおるやつやん
ケイ
レイラとか言って死んでったからまじやべぇだろ
リョウ
そうなんだ。案の定やばかった。
リョウ
婆さんが埋められていることや婆さんの存在は村の記録でしか無くて、その村で覚えてるのは片手の指より少なかったらしい。
リョウ
ところが、婆さんが埋められている所に近づくにつれ、レイラは鼻歌を歌い出したと思ったら突然屈んで震え出したりした。
リョウ
母親は心配になり、どうしたのかとレイラに尋ねた。
リョウ
だが、レイラは声をかけても何も返さない上に目を閉じて酷く震えていた。
リョウ
と、思ったのは束の間。すくっと立ち上がったレイラはどこかを指さし、「あぁ、あそこだ。あの場所で間違いない。やっとだ。やっとだ。」と
リョウ
レイラからは出るはずのない低くしゃがれた声で言った。
リョウ
そして、指さした方向へ目にも止まらぬ早さで走っていった。そして、腰を抜かしていた母親はそれどころじゃなくなった。
リョウ
レイラは一心不乱に婆さんが埋められている所を手で掘り始めたと思ったら、何かに取り憑かれたように、「主が!主の目覚めの時だ!ここに眠る主よ!」と叫んだ。
リョウ
母親は怖くなった。自分の娘は何かおかしいと思っていたら、こんなことになってしまった。だが、自分が止めなければと、決死の覚悟をしてレイラに飛びかかった。
リョウ
「レイラ!レイラ!目を覚まして!」そう叫んだ。
リョウ
すると、レイラは動きを止めて立ちがりその場に倒れ込んだ。それからすぐに目を覚ましたが、自分が何をやっていたのか、何を言ったのかは覚えていなかった。
リョウ
その日は墓参りをやめにして家に帰り、レイラの手を見ると、土まみれで血だらけ。爪は全部剥がれていた。
ケイ
うげー痛そう…
ナギ
レイラちゃんは何事も無かったようにしてるけど痛くて死ぬくね?大丈夫?
リョウ
それがな、痛みを感じないんだそうだ。
リョウ
だが、レイラの手にギョッとした母親はレイラの手を包帯でぐるぐる巻きにした後、手を縛った。
リョウ
その翌朝。母親はいつもと同じようにレイラを起こしに行くと、手を縛っていた縄が床に散らばっていた。
リョウ
母親は寝ている時にちぎってしまったのだろうと拾い集めていると、レイラが起きた。
リョウ
すると、レイラの手に巻いていた包帯が土まみれになっていた。
リョウ
母親はひっ、と声を上げて後ろに倒れ込んだ。レイラは眠そうな声で、「お母さんどうしたの?」と言った。
リョウ
レイラは包帯についている土に関して、何も知らないようだった。
リョウ
それから毎晩、包帯を替えては朝には土が着いていた。母親は怖くなり、村のはずれへ行った。
リョウ
すると、深く深く穴が掘られていて、よく見るとその穴から這い上がったような手の跡がついていた。
ケイ
婆さん…か?
ナギ
婆さんだろ。埋められてたの婆さんなんだから。
リョウ
母親が穴を覗いた時には死体も骨も何も無かったそうだ。
リョウ
それから、レイラの包帯に土が着くことも無くなり、爪はまだ治らなかったが、手も治っていった。
リョウ
ただ、その頃から不可解なことが起こるようになった。レイラは時折人が違うように笑うになった。
リョウ
手を叩いて大笑いしたり、年老いた老人のようにヒッヒッヒと笑ったり、キャッキャと無邪気に笑ったりした。
リョウ
そして、成人になる日の朝だった。成人と認められるためには本人と村の村長と両親とで先祖の前に行き、神にお祈りを捧げて成人になる。
ケイ
レイラちゃん成人か。俺らもこの間なったばっかだから親近感だな。
ナギ
そーだな。酒解禁でタバコも解禁で最高だよなぁ〜
リョウ
確かに酒は飲みたいよなw
リョウ
そんでまぁ、レイラと歳の近い者はいたんだが、同じ年齢の者はいなかったからレイラ1人だけが儀式をとり行うことになった。
リョウ
レイラは成人衣装を着て、村長へ挨拶に行った。
リョウ
すると、村長は青ざめた。口をパクパクとさせ、怯えながら「お前は誰だ…なんだ、その髪と瞳の色は…」と言った。
リョウ
レイラは困りながらも、「村長初めまして。レイラと申します。この髪と瞳は生まれつきです。」と言った。
リョウ
村長はさらに血の気が引いたように、真っ青になった。「帰ってくれ!!」と叫んだかと思うと逃げるように家の中に入っていった。
リョウ
村長は、あの時婆さんを殺そうとした男たちの中の一人だった。
リョウ
村長が青ざめ逃げた理由は、レイラの髪と瞳の色が婆さんと同じだったからだった。