閻魔
...覚悟は決まったものの、どうすればいいのー?

翌日の昼休み、私はあんぐりと
口を開けて空を見上げて呟いた。
練音
んー、急いでも答えなんて出ないもんねー

閻魔
うわっ!?いつの間にいたの!?

練音
え?閻魔ちゃんが屋上の扉を死んだような顔で開けて入ってきた所から?

閻魔
つまり、最初からじゃん!言ってよ、恥ずかしい!

練音
いいじゃん、思ったことは言葉にして吐き出した方がスッキリするよ?

閻魔
そりゃあ...まあ、そうだね...

練音
で、覚悟って...侵略者と戦う覚悟?

閻魔
いや、戦う...に近いけど、現実と向き合う覚悟的な?

練音
ほう!それは良いことだね!応援するよ!

閻魔
他人事過ぎるのムカつくわ...

侵略者
良き心掛けだ、素晴らしいぞ閻魔よ

閻魔
なっ!?いつからいたの!?

侵略者
この男が「閻魔ちゃん、多分屋上来そうだし扉の裏で待ち伏せしとこーっと♪」と話していた辺りからだ

練音
げっ!オレの登場も見られてたの!?

練音
あちゃー、侵略者に死角なんてないんだね

練音
じゃあ、殺すにも殺せないじゃん

練音
ねぇ、閻魔ちゃん

閻魔
は!?(何で私に振るの!?)

練音
〜♪

閻魔
いや、グッドじゃないから!ってかそんなこと思ってないから!!

侵略者
私を殺そうとするのは大いに結構だ

侵略者
人類の脅威である侵略者を止める手段の一つでもあるからな

侵略者
だが、そうなった場合はこちらも“正当防衛”を発動しなければならなくなるが...同意してくれるか?

閻魔
ち、違うって!勝手に言ったのは宇佐美君だから!

侵略者
ほう、この男は宇佐美という名前なのだな

練音
ちょっとー、閻魔ちゃん?オレの情報を安売りするのは嫌なんだけどー?

練音
まあ、でもバレちゃったなら仕方ないな

練音
宇佐美 練音だよ、よろしくね

侵略者
練音か、今後そう呼ばせてもらおう

侵略者
ところで、閻魔よ

侵略者
この民は閻魔にとって敵なのか?

閻魔
て、敵...って?

侵略者
簡単に言えば“害をなす者”か、ということだ

侵略者
それによって100日間の過ごし方が変わってくるが...どうなのだ?

練音
敵だよー!

閻魔
なっ、ちょ、宇佐美君!?

侵略者
そうか、ならば粛清せねばならんな

すると侵略者の右手から
緑色の渦巻く物質が生み出された。
閻魔
宇佐美君ッッ!!

と彼女の体全体に青く発光した
電流のようなものが走った。
閻魔
え...?

私は何が起きたのか
分からず、その場に
立ち尽くしていると聞き覚えの
ある声の主が現れた。
蠍
もう!殺そうとしたらダメでしょ!

侵略者
だが、練音は閻魔を殺そうと

蠍
してないでしょ、敵としか言ってないけど?

侵略者
そうか、それは私の早とちりだったか

侵略者
しかし、今後のことを考えた場合、敵は排除

蠍
しない!忘れたの?人類を殺める行為はしないって約束したでしょ?

侵略者
むっ、そうだったな

蠍
はぁ...で、あなたは宇佐美 練音君だね?あなたは本当に敵なの?

練音
えー?それは蠍先生がよく分かってるんじゃない?

蠍
私が質問してるんだけど?

練音
敵じゃないよー!あったり前じゃーん!

蠍
そう、分かってたわ

練音
ちぇー、つまんないのー

練音
あ、でも“蠍先生の組織”にとってオレのことは面倒くさいかもしれないねー!

蠍
...何のこと言ってるのか分からないんだけど?

練音
んー?オレもー!

閻魔
ちょ、ちょっと二人だけで話進めないでよ!

閻魔
さっきの電撃は何なの!?卜部先生はどうして急に現れたの!?

蠍
混乱するのは分かる、だから順番に答えるね

蠍
まず、あの電撃は“対侵略者用殺意抑制装置”が反応したからなの

閻魔
対侵略者さつ...何て?

蠍
簡単に言えば侵略者が殺意を持ったら、それを止めてくれるってことだよ

蠍
侵略者の体に装置が取り付けてあって、殺意に反応して電流を流すんだ

蠍
だから人類が殺されることはない

練音
100%?

蠍
ええ

練音
本当に?

蠍
何が言いたいの?

練音
別に?ただ、検査中に侵略者が能力を隠してるとか考えなかったのかなーって思ってさ

蠍
それはないよ、“検査結果の数値”は何も...ッ!!

練音
ん?“検査結果の数値”って?

蠍
あなた...誘導尋問とか得意って言われたりない?

練音
それって褒め言葉?光栄だなー

蠍
と、とにかくそういう装置だから安心してね!

蠍
で、次に私がどうしてここに駆けつけたのか

蠍
それは私が24時間体制で侵略者を監視しているからってHRで言ったよね

蠍
だから校内で侵略者に関する問題が起きたら、私が対処するってことになってるの

練音
逆に校外は?

蠍
それはもう一人の担当の管轄だから

練音
ああ、そういえば二人体制とか言ってたね

練音
侵略者を24時間体制で監視したり、凄い装置や検査ができるなんて...

練音
“大きな組織”なんだね!蠍先生って凄いなー!

練音
もしかして...国や世界が絡んでるとか?

蠍
さ、侵略者の件が終わったし、三人とも昼休み終わるから教室に戻ってね

練音
ああ、そういえば蠍先生って先生だったわ

蠍
ちょっと、どういうこと?

練音
ごめんごめん、嘘だよー

ケラケラとイタズラがバレた
子どものように笑いながら
彼らは屋上を去っていった、
侵略者と私を残して。
侵略者
行かないのか?

閻魔
え?いや、行くよ。でも...

私は宇佐美君が殺されそうな時
ただ叫ぶだけで何もできなかった
後悔に襲われていた。
あのまま、装置が作動しなかったら...
誰も来なかったら...
閻魔
人が死ぬ怖さが頭から離れないんだよ...

閻魔
侵略者との出会いの時に人が死ぬのを見て、あの恐怖に蓋をしてきたけど...

侵略者
今日の練音の件で思い出したということか

侵略者
それならば、私が恐怖を感じなくなるようにしてやろう

閻魔
そういうことじゃないッ!

閻魔
私は宇佐美君みたいに危険な行為をするのが許せない

閻魔
侵略者みたいに人間の命を軽く見てることも許せない

閻魔
でも何より、私が覚悟を決めたのに...こんな死の恐怖で震えてることが何よりも許せない...

閻魔
先に行って...私はもう少しここにいる

侵略者
そうか...人間とは難しい生き物なのだな

私は気持ちが落ち着くまで過ごし
授業開始のチャイムが鳴り響く中
静かに屋上を後にした。